日本有数の温泉地として知られる大分県の由布院温泉。「豊後富士」とも呼ばれる標高1584mの由布岳をはじめとする1000mほどの山々に囲まれた由布院盆地にある温泉地です。少し南に位置する湯平温泉とともに「湯布院温泉」として国民保養温泉地にも指定されており、観光に、保養に、と訪れる人々が絶えません。
由布院温泉の起点となるJR由布院駅から駅前通り、さらにその先に続く、洒落たショップやレストランが軒を連ねる湯の坪街道をのんびり歩いて25分ほど。由布岳の麓にある「金鱗湖[きんりんこ]」に辿り着きます。秋冬の早朝には、湖面から立ち昇る霧の幻想的な光景が見られるこの湖の程近く、緑の中で静かな佇まいを見せるのが「旅亭田乃倉」です。
最初に出迎えてくれるのは、馬踏み型に敷かれた石畳の先にひっそりと立つ趣のある木戸門。その静けさに満ちた風情ある眺めが、これから一夜を過ごす宿への期待感を高めてくれます。
控えめな造りの玄関を入ると、どこか懐かしい、寛ぎ感のあるフロント・ロビー、庭を眺めるクラシカルな雰囲気のラウンジと対面。心を和ませてくれる活け花や、出迎えてくれるスタッフの温かい笑顔で、お部屋に入る前から旅の疲れがほ~っと抜けて行くようです。
「浩然三昧」。極上の温泉と繊細で味わい深い旬の料理、出迎えから見送りまで、ここ旅亭田乃倉は、心遣いのある日本の宿のよさにたっぷり浸れるお宿です。
それぞれ趣の違う客室で、日本の風情と由布院の緑を楽しむ
1階の広々とした和室二間タイプの露天風呂付客室「芳泉」の一室
由布院の木々に包まれたお宿の客室は2階建ての本館に、わずか11室。渡り廊下の先の別館「なな川」にメゾネットタイプの露天風呂付客室が5室あります。
中庭に臨む本館の客室は数寄屋造の落ち着いた和室がメイン。間取りやお部屋からの眺めはそれぞれに違っています。おすすめは1階に5室ある内湯と露天風呂の付いたお部屋。「珠林」や「祥雲」などの名が付いた、専用のお庭を望む広縁付きの落ち着いたお部屋です。10畳和室に内湯・露天風呂が付いた一間タイプの「明寿」や、10畳和室とツインベッドルームに内湯・露天風呂が付いた和洋室タイプの離れ「雄心」などがあり、いずれも内湯・露天風呂には自家源泉の温泉が引かれています。しっとりとした風情のお庭を眺めながら、お宿が醸し出す心地よい静けさの中で露天風呂の大きな湯舟に身体を浸せば、このお宿に泊まってよかったな、としみじみ思います。
「飛鳥」や「香林」などの名が付いた2階の客室は6室。由布岳を眺める「喜峰」など、1階と同じくそれぞれ間取りや眺望が違っています。10畳和室一間タイプや、8畳と6畳の和室二間タイプのほか、角部屋の8畳和室とツインベッドの和洋室などがあり、いずれも温泉が楽しめる内湯付きです。なかでも内湯に檜造りの大きな湯船が備えられ、畳敷きのツインベッドルームと6畳和室、リビングダイニングが付いた和洋室のツインデラックスルーム「木綿[ゆふ]」は、ゆったり広々で寛げます。
別館なな川の客室は、本館から回廊でつながる全室露天風呂付メゾネットタイプの和モダンな和洋室です。「いちょう」、「にれのき」、「さくら」など、お部屋の名前に優しさが感じられますね。お部屋の造りは、1階にリビングと内湯、テラスに大きな露天風呂、2階にベッドルームの洋室を設けていて、グループや家族旅行にも格好。もちろんお風呂は温泉です。
料理人が腕を振るう「天然旬菜」の懐石料理で至福を味わう
おおいた和牛を堪能できる季節の本格懐石料理(イメージ)
身体が喜ぶヘルシーでおいしい朝食が好評(イメージ)
本館の宿泊では、夕食も朝食もお部屋で食事が楽しめます。別館なな川は食事処で。「由布の料理宿」というだけに、お料理は新鮮な山海の旬の素材を、匠の技で活かした月替わりの本格懐石料理です。大分県のブランド牛のおおいた和牛、豊後水道の海の幸など、大分県産の食材をはじめ、吟味された九州産などの旬の食材もふんだんに使用。素材本来のうま味を引き出し、四季を感じさせる器に盛り付けたお料理は、どれも美しく繊細な味わいで、五感を刺激する逸品ばかりです。
食前酒から先付、前菜、吸い物、向付けと続くお料理は、最後のデザートの水物まで10品以上。その日のお品書きで食材や調理法などを見ながら、ひとつひとつの料理を味わうのも楽しみですね。なかでも強肴のしゃぶしゃぶやステーキで出て来るおおいた和牛は、そのうま味と柔らかさに感激です。お宿のグループ会社の一つに「ゆふいん牧場」があり、県内有数の食肉卸業を営んでいるだけに、安心・安全、お肉の質も最高品質です。特選料理では、4等級以上の上質なおおいた和牛を陶板焼きなどで味わうこともできます。お肉の焼ける香りとそのとろけるような味わい、まさに至福の瞬間です。
朝は、身体に優しい和定食をご用意。温泉玉子や手作り豆腐、新鮮野菜のサラダなど、元気がでるボリュームたっぷりの朝食です。ご飯はおかゆと白ご飯のどちらでも。
食事の進み具合を見て、食べるタイミングにあわせてお料理を出すのが旅亭田乃倉の信条。できたてのお料理を、急がされることなく、待たされることなく、ゆっくりと自分のペースで味わえる。おもてなしの心がそんなところにも感じられます。
由布院の自然の恵み、自家源泉の澄んだ湯をとっぷりと堪能
木々の緑と爽やかな風を感じる「源流の湯」の露天風呂
木の温もりと溢れる温泉が心地よい「金鱗の湯」の内湯
旅亭田乃倉の温泉は、敷地内から湧き出る豊富な湯量の澄んだ温泉です。泉質は単純温泉。お部屋のお風呂にもこの温泉が引かれています。大浴場は「金鱗(きんりん)の湯」と「源流の湯」の2カ所。どちらも源泉掛け流しのお風呂で、露天風呂を備えており、四季折々の自然の移り変わりを感じて湯浴みが楽しめます。金鱗の湯の内湯には、温度の違う2つの湯船。「源流の湯」の露天風呂では、晴れていれば目の前の由布岳がビッグに臨め、開放感満点。朝5時には男女入れ替えとなるので、趣の違う大浴場を両方とも楽しめます。
さらに渡り廊下で繋がった姉妹館「山灯館」の「妃泉の湯」と「狭霧の湯」も利用できます。2つのお宿を合わせれば4つの大浴場で湯浴みができて、なんとも豪勢な温泉三昧が楽しめます。