アルハンブラ宮殿最古の建築へ
アルハンブラ宮殿が完成したのは14世紀のこと。イベリア半島最後のイスラム王朝、ナスル王朝(グラナダ王国)の大宮殿で、イスラム建築の最高傑作と言われています。1万4000㎡もの広大な敷地を誇る大宮殿の内部は、装飾が美しい宮殿群や堅牢な要塞など、とにかく見どころが満載です。
木組みの天井の細かい模様も、メスアールの間の見どころのひとつ
アルハンブラ宮殿のハイライトとなるのは、歴代の王が暮らした「ナスル朝宮殿」。内部はさらに3つのエリアに分かれていて、最初に入るのは「メスアール宮」と呼ばれる、14世紀初頭に建てられたアルハンブラ宮殿でも最古とされる建物です。真っ先に見えてくるのは「メスアールの間」。行政や裁判が行われていた場所で、罪人がこの場所で裁かれていたともいわれています。
そこを抜けると、「メスアールの中庭」に続きます。中央に噴水があるだけのシンプルな庭ですが、壁一面に植物などをモチーフとしたアラベスク模様が精緻に彫刻されています。当時は鮮やかに彩色されていたというファサードを眺めながら思いを馳せましょう。
王と人々の交流の場 コマレス宮
「人々を驚嘆させるような美しい装飾を作るように」と、時の為政者ユスリフ1世の命によって建築されたのが、次にご紹介する「コマレス宮」です。ナスル宮殿の中でも中心的な建物で、外国大使との謁見や貴賓を迎える場所として利用されていました。
7つのアーチと周辺の緑を左右対称に映すのが撮影のポイント
見どころは「アラヤネスの中庭」。アラヤネスとは「天人花」を意味し、左右にある四角く刈り込んだ生垣のことを指します。長さ34m、幅7mの長方形の池のフォルムが印象的で、宮殿の7つのアーチや周囲の緑を水面に美しく映し出します。
大使の間の高い天井はまるで満天の星空のようにも見える
王がアッラーの祝福を祈ったとされる部屋「バルカの間」を見学したら、「大使の間」へ向かいます。ここは宮殿内で最も広いサロンであり、別名「玉座の間」ともいいます。王に謁見するためにやってきた大使が通されたとされる大使の間は、天井から床まで壁一面にびっしりとアラベスク模様が敷き詰められており、圧巻です。
イスラム建築の傑作 ライオン宮へ
コマレス宮を観覧したら、「ライオン宮」へ足を運びます。メスアール宮、コマレス宮は公的な場所でしたが、ここは王が私生活の場とした空間です。
14世紀につくられたライオン宮では、まずは「ライオンの中庭」をじっくりと堪能しましょう。12頭のライオン像が背中で支えるのは、水時計でもあった円形の水盤。ライオン像はかつて金色に塗られていたそうで、当時の王朝の繁栄ぶりが伺えます。この庭を囲む一帯は王以外の男性が入ることは許されないハーレムだったそう。
お次はライオンの中庭に面する「アベンセラヘスの間」へ。政界の最大勢力であったアベンセラヘス一族が、王に対して謀反の企てを疑われて惨殺されたのがこの場所です。噴水の染みはその際に飛び散った血ともいわれているのだとか。その伝説とは対照的に、大変美しい空間となっており、星をイメージした鍾乳石飾りの天井は別名「蜂の巣天井」とも呼ばれ、立体的で複雑な造りに目を奪われます。
左右に全く同じ造りの大理石の敷石があることからその名前がついた「二姉妹の間」。王朝最後の王・ボアブディルの母とその子供たちが使用していました。八角の鍾乳石造りの天井に配された二連装の窓から差し込む光は緻密に計算されていて、絶妙な調光具合になっています。二姉妹の間の奥にあるリンダラハの望楼も要チェック。現存する貴重なステンドグラスで装飾された鮮やかな天井が見られます。
そのほか、作家ワシントン・アーヴィングが『アルハンブラ物語』を執筆した部屋や、眼下に広がるアルバイシン地区の絶景を見ることのできる回廊、王専用の浴室など、アルハンブラ宮殿には見どころだらけ。時間の許す限り、この壮大な世界遺産を味わい尽くしましょう。
la Alhambraの情報
住所:Real de la Alhambra s/n
営業時間:昼の部:8時30分~20時(冬季は~18時)、、夜の部:火~土曜の22時~23時30分(冬期は金・土曜の20時~21時30分)
定休日:なし
料金:昼の部:€14(ナスル朝宮殿、アルカサバ、ヘネラリフェ3か所共通)
夜の部:ナスル朝宮殿€8、ヘネラリフェと庭園€5
URL:http://www.alhambra-patronato.es
一度は泊まってみたい! パラドール
最後に、グラナダ屈指の宿泊施設をご紹介。修道院や城などを改装した、スペイン全土に100近く展開する国営ホテルのことを「パラドール」といい、星の数によってランク付けがされています。
世界遺産のなかにあるホテルで、非日常なひとときを体験
なんと、アルハンブラ宮殿の敷地内にホテルがあるのです! 「パラドール・デ・グラナダ」は、15世紀に建てられたサンフランシスコ修道院をホテル用に改装したもの。修道院の回廊をそのまま生かした廊下や、噴水のある中庭など、ところどころに建物の歴史と壮麗さを感じられ、ほかでは味わえない特別なひとときを過ごすことができます。非常に人気が高いため、早めの予約が必須。
Parador de Granadaの情報
住所:C. Real de la Alhambra s/n
客室数:40
※2023年5月時点の情報です。営業内容などの詳細はホームページなどでご確認ください。
※本記事は「Patronato de la Alhambra y Generalife(アルハンブラ・ヘネラリフェ財団 」の協力を受けて作成しています。