JTBスポーツ 二宮清純 ~スポーツジャーナリストの視点~

二宮清純プロフィール

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二宮 清純 プロフィール
スポーツジャーナリスト。株式会社スポーツコミュニケーションズ代表取締役。 1960年愛媛県生まれ。オリンピック、サッカーW杯、メジャーリーグなど国内外で幅広く取材活動を展開。地域密着の総合型スポーツクラブづくりにも取り組む。東北楽天ゴールデンイーグルス経営評議委員、日本サッカーミュージアムアドバイザリーボード委員なども務める。

第7回ユニバーサルデザインの重要性


 2020年東京オリンピック・パラリンピック開幕まで、あと2年5カ月です。それに伴い、「ユニバーサルデザイン」という言葉に注目が集まるようになってきました。皆さんも、一度は耳にしたことがあるでしょう。
 ユニバーサルデザインとは、障がいの有無や年齢、性別、人種などにかかわらず、たくさんの人々が利用しやすい施設や製品、システムのことを指します。

 国内施設として広島の本拠地マツダスタジアムがユニバーサルデザインのスタジアムとして高い評価を得ています。
 一例をあげれば収容人数3万3000人のうち車椅子席は142席。0.43%という数字はプロ野球12球団の本拠地の中で最高です。 加えて人工肛門や人工膀胱を造設した人のためのオストメイト対応型トイレも12カ所設けています。

マツダスタジアム

 同スタジアムの設計を手掛けた環境建築家の仙田満さんはこう語っていました。

私は眼鏡をかけています。眼鏡を掛けなければ字が読めない。つまり、ほとんど誰もが障がい者で、 またいつかは障がい者になり得るんです。だからユニバーサルデザインはこれからのスポーツ施設だけでなくて、集客性にもつながるので経済的な効果もあると考えています。 工事費からすれば、スロープよりもエレベーターの方が安い。でもそれ以上のお客さんを集める貢献度が考えられます

 エレベーターよりもスロープという視点は新鮮でした。仙田さんはその理由について、
「スロープなら障害者の車椅子を健常者が押したり、お年寄りと連れ立って歩くことでコミュニケーションが生まれ、多様性も確保できます」と語っていました。
 歩き、話し、支え合う――。これもスポーツ観戦の魅力のひとつと言っていいでしょう。

 オリンピック・パラリンピックに話を戻しましょう。国際パラリンピック委員会(IPC)のガイドラインによれば、車いす席はオリンピック会場の0.75%、パラリンピック会場の1~1.2%が望ましいとされていますが、 オリンピック会場について言えば、既存施設の8割が基準を満たしていないというデータもあります。このガイドラインについていえば、法的拘束力こそないものの、 開催都市の民度をはかる上で、重要な指標になっていることは言を俟ちません。

 JTBは「Tourism for All」を合い言葉に、ユニバーサルツーリズムを推進しています。 低床構造バスの運行や高齢者向け旅行の企画、バリアフリーの宿泊施設の提案など気配りの行き届いたサービスには“おもてなしの精神”が満ち溢れています。 と同時に“進化するユニバーサルツーリズム”にも熱い視線が注がれています。


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