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ラグビーワールドカップ2019™日本大会
オーストラリアvジョージア観戦記
『たかがラグビー、されどラグビー。』

僕の高校の校技はラグビーでした。
田舎の公立の男子高だったのですが、3年間、毎年冬の体育の授業はすべてラグビー。 生徒は全員マイラガーシャツを持っていました。

僕はラグビー部ではありませんでしたが、同級生は花園にも出ていて、前年優勝の天理高校に2回戦で敗れたものの、高校代表にも3人が選ばれていたくらいです。
(ちなみにラグビーワールドカップ2019の日本誘致委員長だった真下昇さんは、僕の高校のOBで、国体で優勝しています)

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そんなわけで、ラグビーのルールはだいたいわかるし、柔道部の友達に地面にたたきつけられたり、サッカー部のアタリのキツさにグラウンドの上で何度もうめいた記憶もありますが、相手のタックルを鮮やかにかわしてトライを決めたときの、雄たけびを上げたくなるような高揚感も知っています(まあ、年に何回もありませんでしたが)。

けれども高校を卒業すると、ラグビーはいつの間にか僕のまわりから姿を消し、遠く離れた存在になっていたのでした。

そんななかやってきたのがRWC2019(ラグビーワールドカップ2019™日本大会)
「4年に一度じゃない。一生に一度だ。」というキャッチコピーを従えて、世界最高峰の20チームと多くのファンが日本中を駆け巡る44日間。
観戦チケットも人気で容易には手に入らない中、ラグビーのことを忘れかけてた僕のところに、幸運にもそのレポート取材の機会が訪れたのでした。

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10月11日金曜日、静岡エコパスタジアムでのオーストラリアvsジョージア戦。
翌日から東海・関東地方に史上最強クラスの台風19号「ハギビス」が訪れようとしている中、僕は新幹線で掛川に向かったのでした。

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掛川で新幹線から東海道線に乗り換え、スタジアムの最寄りの愛野駅で下車します。

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JR愛野駅

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駅前にはおもなしエリアがあり、地元静岡のグルメ屋台やステージ、キッズラグビー体験コーナーや日本文化体験などがあり、観戦前の人たちで賑わっています。

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オーストラリア代表、ワラビーズシャツのおにーちゃんたち。
「一番」「日本」「合格」・・・

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富士山のフォトスポットの前には着物姿のおねーさん(ベビーカーがあるので、おかーさんですね)。

日本文化体験コーナーで着付けてもらったのでしょう。
彼らはワールドカップはもちろんのこと、日本そのものも満喫しているんですね。

 ― RWCが来たら、世界中からファンがやって来て、チームと一緒に日本中を周遊するよ。

そんなことを聞いても、開幕前は本当かな、と半信半疑でいたのですが、本当でしたね、想像以上です。

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スタジアムに入る瞬間の高揚感。

母校が甲子園に出場して、初めてアルプススタンドに足を踏み入れた時のことを思い出します。

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スタンドにはたくさんの制服姿。

みんなすごく楽しそう。
いいなあ、こんな体験、なかなかできないよね。

ラグビーワールドカップが素晴らしいと思ったのは、出場国の選手やサポーターと、日本のホストタウン(公認キャンプ地)や開催都市の人々との草の根交流がとても自然に行われているところ。
こうした国際交流は、もちろんサッカーでもオリンピックでもあるのですが、ラグビーが一番深くて厚いと思うのは気のせいでしょうか。

小笠山総合運動公園エコパスタジアムは、つい先日、日本がアイルランドを下し、熱狂に包まれた場所。

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台風が迫り、ときおり横なぐりの雨も吹きつける中、この日も3万9802人の観客で埋まりました。

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雨が降りしきるエコパスタジアム

そしていよいよ両チームの選手が入場、国歌の斉唱です。

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最初にジョージア国歌、続いてオーストラリア国歌。
不覚にも試合が始まる前からウルッときてしまいました。

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なんだろう、このグッとくる感じ。
僕のまわりにワラビーズサポーターが多かったからなのかもしれませんが、横から、うしろから、そして前からもオーストラリア国歌「Advance Australia Fair(進め、美しきオーストラリア)」 の斉唱が聞こえてきます。
日本戦のスタジアムで、君が代を唄いながら涙を流している人たちの気持ち、今はすごくよくわかります。

これがホンモノの国際大会、ってやつなんでしょうね。

さて、ゲームはD組のオーストラリア(世界ランク6位)対ジョージア(同13位)。

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すでに1次リーグ突破を決め1位通過を狙うオーストラリアと、勝てば同組3位となり次回W杯の出場権を手に入れられるジョージア。

下馬評では圧倒的に優位とされるオーストラリアが開始早々から相手陣内で怒涛のように攻めますが、ジョージアも堅守で応戦、膠着状態が続き、前半は10-3、オーストラリアのリードで折り返します。

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スタジアムはワラビーズサポーターの黄色が目立ち、オーストラリアがゴール前に攻め込んでは阻まれ、攻め込んでは阻まれるたびにあちこちから歓声やらため息やらが上がります。

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しかし彼らが素晴らしいのは、ジョージアのプレイにも惜しみなく拍手を送ること。

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高校時代、ラグビー部の監督でもあった体育の先生(母校OBで真下さんとともに国体優勝したフィフティーンの一員)が、

「ラグビーは紳士のスポーツだ」

と常々話していたのが、RWC2019がやってきて、初めて本質的に理解できたような気がします。

試合が終わったらノーサイド。 敵味方を分けていたサイドはなくなり、お互いの健闘をたたえ合う。 それは理解していたつもりでした。
けれどもその根底には、ノーサイドの前から選手もファンも、相手への深いリスペクトがあるからこそのノーサイドだったのだ、と。

さて、RWC2019ではすっかりおなじみになったハーフタイムのカラオケタイム。

この日はBon Joviの「Livin’On A Prayer」ですよ!

これはうれしかったなー。
1986年リリースのBillboard全米No.1ソング。
リアルタイムで聴いてた世代だから(笑)

そのほか、インジュアリータイム(プレーヤーのケガの治療などで試合を止めている時間)にはブライアンアダムスの「Summer Of‘69」。 この選曲のセンス、素晴らしい!

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ウェーブ、はじまってますやんか!(笑)

試合はジョージアが後半1トライをあげるも、地力に勝るオーストラリアが終盤突き放し、27-8で勝利。

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オーストラリアは勝ち点16でD組の暫定1位、ジョージアは4位以下が決定し、残念ながら次回大会の出場権を手に入れることはできませんでした。

本当はこのあとのノーサイドの光景を楽しみにしていたのですが、残念ながら台風の影響で予定より早めに会場を後にすることになりました。

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でもそれはもう、見なくてもわかります。
ノーサイドの笛と同時に両軍が歩み寄り、肩をたたき合い、敗者は勝者を称え、勝者も敗者を心からリスペクトする。
そしてファン同士もハイタッチをかわし、街に繰り出してハイネケンで夜中まで語り合う。

僕がこんなところでわざわざ書かなくても、もう日本のファンはそんなシーンを何度も目にしているはずです。
RWC2019がやってきて、僕たちはラグビーというスポーツ、そして文化の素晴らしさを初めて本質的に知ったのかもしれません。

「たかがラグビー、されどラグビー」
母校のラグビー部の横断幕には、そんな言葉が書かれています。

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これはラグビーの日仏交流を追ったドキュメンタリーとして、1984年に放映されたテレビ番組のタイトルだと言われています。
その後、京都の伏見工業を全国屈指の強豪に育てた山口良治先生(ドラマ『スクール☆ウォーズ』のモデルとしても有名)の著書などにも使われ、ラグビーの世界では有名な言葉として知られていますが、実は僕の記憶の片隅にもずっと残っていた言葉でした。

1984年といえば僕の高校時代。
もしかすると、当時ラグビーを指導してくれた先生が、その言葉の本当の意味と一緒に、どこかで教えてくれていたのかもしれませんね。

「たかがラグビー、されどラグビー」。

このRWC2019をきっかけに、ラグビーから遠く離れていた僕が感じたように、日本中のみんなが、ラグビーの素晴らしさを感じてくれるといいな、と思いました。


<2019年10月11日観戦>

文:風祭哲哉

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