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北海道からも世界へ。僕のプレーで希望を与えたい!
(池崎 大輔選手/ウィルチェアーラグビー/北海道函館市出身 札幌市在住)

JTBグループでは、パラスポーツの発展とともに、地域を元気にするアスリートを応援していきます。
今回は、リオパラリンピックで銅メダルに輝いた、ウィルチェアーラグビーの池崎大輔選手にアスリートとしての地域の環境と魅力を語っていただきました。

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写真撮影:Norihiko Okimura

僕は、高校2年から14~15年、車いすバスケットボールをしてきましたが、その時はアスリートとして生きていこうという考えはまったくなくて、仲間と楽しみながらやっていたという感じです。
やっぱり自分と同じ、四肢に障がいがある人たちを対象としたウィルチェアーラグビーだったから、これで生きていこうと思えましたね。 自分がどこまでやれるか試してみたかったし、アスリートとしての人生を歩んでいきたいと思ったし、そう思わせる競技でもありました。
競技を始めて以降、ずっと札幌を拠点にしていますが、やっぱり地方なのでデメリットが多いんです。 遠征の費用とか時間とか。東京周辺の方がチームも多いし競技レベルも高いですしね。 それでも僕が北海道にいる理由は、北海道でパラスポーツをしている人たちに、ここからでも世界に行けるんだぞ! 頑張ればできるし環境も整うんだと希望を与えたいから。 僕自身、パラリンピックなどで結果を出したことで、競技の知名度が上がり、競技に専念できる環境を手にできたと思います。

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©JWRF/ 阿部謙一郎

ウィルチェアーラグビーは「障がい者=弱者」というイメージを覆す競技です。 倒れても起き上がって、また向かっていく。 昔は、障がい者は人の手を借りないと生きていけないようなイメージがあったと思うんです。 でもこの競技は逆に、何かあったら言えよ、助けてやるよ、みたいな(笑)強いメッセージが込められている。 スピード感があってタックルの激しさがあって、人を魅了する要素もたくさん詰まっている。 四肢に障がいがあってもこれだけ激しい競技ができるし、自分たちは強く生きている。 そういうメッセージ性の強い競技でもあると思うんですよ。

例えば事故などで障がいを負って、これからどうしようと思った時に、まずは自立するための自分自身の心の整理が必要になる。 その手段のひとつとして、パラスポーツがあると思うんです。 なぜかというと、そこには障がいを負った経緯は違うとしても、自分と同じ“当事者”がたくさんいる。 そのなかでスポーツに出会って、スポーツをする喜びを知って、自立に向けて進んでいく。 そういう面では、やっぱりスポーツってすごく一歩を踏み出しやすいと思うんです。 そういう人たちのためにも、感動を与えられるような結果とか、競技のすばらしさとか魅力を、どんどん伝えていくのが自分たちの使命でもあると思っています。

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©JWRF/ 阿部謙一郎

今は海外に行かない理由がない
今、アメリカ・アリゾナのワイルドキャッツというチームに武者修行に行っています。 練習拠点のアリゾナ大学がパラスポーツにとても理解があって、体育館は空いていればいつでも使え、ジムもすごく立派なものがあります。 ラグ車(競技用車いす)の修理をする専門のスタッフもいるんですよ。
海外で一番に得たのは、生きていく強さだと思います。 最初は言葉や食べ物やいろいろな理由でメンタルが持たなくて。 でも今はアスリートとして、競技力を上げることが最優先です。 不安要素なんて何とかなる。 パフォーマンスを上げて経験を積むことがそこでできるなら、行かない理由はないんです。
今年もアリゾナに行く予定ですが、周りにはグランドキャニオンとパワースポットで有名なセドナがあるので行きたいですね。 池崎パワーみなぎってるな!って言われるくらい、パワーをもらってきたいですね(笑)。 もちろん練習が優先ですけど、その地域のものにふれるっていうのも必要ではあると思う。 選手としての成長と、人としての成長にもつながっていくんじゃないかなと思います。

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写真撮影:Norihiko Okimura

北海道ならではの体験といえば、やっぱり「食」
合宿などで北海道にラグビー仲間が来た時は、必ず市場に連れて行くんですよ。 さっきのアリゾナの話じゃないですが、せっかく北海道まで来たら、やっぱり北海道ならではのことはした方がいいと思うんです。 それで北海道と言えば、やっぱり食ですよね。 札幌の近くには、小樽やいろいろ観光名所もあるけど、食はみんな素直に喜んでくれます。 なので、観光じゃなく(笑)市場に連れて行きます。
季節によっておいしいものが違うので、自分たちで食べるだけじゃなくて、家族やお世話になっている人にお土産を買って。 送った選手も送られた方も喜んでくれますね。 定番のウニとかイクラも、春夏秋冬で味が違うんですよ。 ウニで言えば5月、イクラは秋。 5月に上がってくるトキシラズっていう鮭も、ほかの季節のものとは全然違いますね。

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写真撮影:Norihiko Okimura

2020年に向けて日本代表に必要なのは、海外経験
ウィルチェアーラグビーは、バスケットボール、バレーボール、アイスホッケーといろいろな競技の要素を取り入れているんです。 ですが、バスケットボールのコートサイズのなかで、ボールをもってゴールをすれば1点という、それだけの競技です。 そのなかで、車いす同士のタックルがあったり、選手交代(※)があったり。 また障がいの程度に応じて、選手には0.5~3.5点まで持ち点があって、1チーム4人の合計が8点以内でないといけないんです。 障がいが重い人も軽い人も、同じコートに立って自分の役割を果たして1点を取りに行くっていう、誰もが活躍できる競技でもあります。

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写真撮影:Norihiko Okimura

パラリンピックでしか味わえない感動
2020年に向けて、日本代表に必要なのは経験だと思います。 海外の強豪チームとの試合や練習をどんどん増やしていけば、もっともっと強くなる。 もちろん個人のパフォーマンスを上げて、チームプレーを磨くのは最低限必要なこと。 その上で、やっぱり海外の経験は大事ですね。 自分の弱点とか、いろいろなことを気づかせてくれる。 そこから、それを克服するにはどうすればいいのかを常に考えて、一歩一歩確実に成長していく必要があると感じています。
※ウィルチェアーラグビーは、選手交代の回数に制限がなく、戦略に合わせた選手の入れ替えも見どころ。

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写真撮影:Norihiko Okimura

PROFILE
池崎 大輔
(いけざき だいすけ)
1978年1月23日 北海道函館市生まれ 札幌市在住
6歳の時に手足の筋力が徐々に低下する難病シャルコー・マリー・トゥース病と診断される。 岩見沢高等養護学校在学中の1995年(17歳)から車いすバスケットボールを始めたが、やがて病のため腕の筋力が低下し、2008年(29歳)からウィルチェアーラグビーに転向。 2010年ウィルチェアーラグビー日本代表強化選手に選出され、2012年ロンドン・パラリンピック出場(日本チーム4位)。 2015年三菱商事IWRFアジア・オセアニアチャンピオンシップ出場(優勝)、3.0クラスのベストプレーヤー賞及びMVP受賞。 2016年リオパラリンピックで銅メダルを獲得。 現在、三菱商事株式会社所属。ウィルチェアーラグビー日本代表(クラス3.0)。

取材協力=日本財団パラリンピックサポートセンター、一般社団法人 日本ウィルチェアーラグビー連盟

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