ドイツでは車いす選手が町のヒーロー!
香西宏昭選手(車いすバスケットボール千葉県千葉市出身 ドイツチーム所属)
JTBグループでは、パラスポーツの発展とともに、地域を元気にするアスリートを応援していきます。
今回は、ドイツの車いすバスケットボールリーグ・ブンデスリーガで活躍する香西 宏昭選手にアスリートとしての地域の環境と魅力を語っていただきました。
ディビジョン制によって競技が発展
ドイツの車いすバスケットボールリーグは全部で5部、地域によっては6部まであります。
僕が所属するブンデスリーガは1部リーグに当たり、毎年1部の下位チームと2部の上位チームが入れ替わるディビジョン制です。
この制度の良いところは、競技を始めたばかりの子が、いきなり大人やレベルの高いチームに入る必要がなく、自分のレベルに合ったチームでプレーでき、また試合に出る経験も積める点です。
反対に、第一線を退いた選手が、体力や生活環境に合わせて下部チームでプレーを続けることもできます。
ドイツで車いすバスケットボールが盛んな理由のひとつは、このディビジョン制にあると思います。
写真提供:小曽根マネージメントプロ
地元クラブの存在がスポーツを身近に
僕は今年、RSVラン・ディルというチームに移籍したんです。
ヨーロッパクラブ選手権で常に優勝を狙う強豪で、ポジション争いが厳しくなると思うので、身体の強化を進めています。
このチームの選手たちは、地元のヒーローのような存在なんです。
ほぼ毎週末に試合があり、会場ではビールやソーセージを売っていて、日本の野球観戦のように太鼓を叩きながら応援してくれます。
自分たちの町の選手、チームという意識が強いんですね。
というのも、地域総合型スポーツクラブという、地域に根差したスポーツ団体が各地で盛んに活動をしています。
なかには病院と提携しているクラブもあって、例えばケガなどで車いす生活になった人が、リハビリとして病院で始めた競技を、退院後もクラブで続けられる環境が整っています。
誰もがスポーツを楽しめる環境があるんですよね。
写真撮影:Norihiko Okimura
日本で“ずば抜けた存在”になるために
2020年に向けて今一番に思っているのは、リオで感じた悔しさをもう二度と感じたくない、ということです。
リオでは副キャプテンとして、もし試合の流れが悪くなって、周りが焦ったり不安になったりしても、自分は常にチームのやるべきことを実行できる選手であろうと思ったんです。
じゃあ、実際にどうだったかと言うと、できなかったんですね。
それでこのままではいけない、自分を成長させようと、専門家のもとで個人的にメンタルトレーニングとフィジカルトレーニングを始めました。
特に現段階では、日本代表の選考会の途中なので、とにかく自分は日本国内で“ずば抜けた存在”になるんだという思いで、トレーニングに取り組んでいます。
写真提供:小曽根マネージメントプロ
選手の持ち点を絡めたチーム戦略が面白い!
車いすバスケットボールの魅力は、やはり特徴である持ち点制度に絡んだチームワークですね。
障がいの程度によって1.0~4.5点まで選手ごとに持ち点があって、一番重い人は1.0点、一番軽い人は4.5点です。
持ち点は1チーム合計14点以内に収めないといけなくて、それがチームの戦略につながっていくところが一番の面白さです。
ですから、一度見ただけでは分からないかもしれませんが、それこそが大きな魅力です。
見れば見るほど、楽しさが増していくと思います。
国内においては、おかげさまで日本選手権は観客数が増えていますが、日常的に観戦してくださる方は、まだまだ少ないです。
2020年の東京では多くの方に足を運んでいただけるように、選手として良いプレーをお見せすることに力を注ぎたいと思います。
ドイツ屈指の強豪チームでの活躍が期待される香西選手
写真撮影:Norihiko Okimura
PROFILE
香西 宏昭(こうざい ひろあき)
1988年7月14日 千葉県生まれ
先天性両下肢欠損(膝上)。
小学6年(12歳)で車いすバスケットボールを始め、高校1年で、U23の日本代表選手に選出され、銀メダルを獲得。
2006年にはシニアで世界選手権初出場。
07年にアメリカ留学後、10年イリノイ大学に編入。
12年・13年、全米大学リーグにて2年連続シーズンMVPを獲得。
13年、大学卒業後、ドイツ・ブンデスリーガ「BG Baskets Hamburg」にプロ契約選手として4年間在籍。
17年、同リーグ1位でヨーロッパを代表する強豪チーム「RSV Lahn-Dill」に移籍が決定。
パラリンピックは、北京・ロンドン・リオデジャネイロと3大会連続出場。
20年の東京大会を視野に、チーム香西を結成し日々トレーニングを重ねている。
取材協力=一般社団法人 日本車いすバスケットボール連盟、株式会社 小曽根マネージメントプロ、日本財団パラリンピックサポートセンター
JTBスポーツブログでは、今後もパラスポーツ情報、アスリート情報をお伝えしていきます。次回もお楽しみに♪
INFORMATION
香西 宏昭選手の記事はJTB旅カード ゴールド会員誌「トラベル&ライフ」にも掲載されています。
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