自分の活躍を通じて人々に希望を与えたい!
成田 緑夢 選手(スノーボード/大阪府出身 東京都在住)
JTBグループでは、パラスポーツの発展とともに、地域を元気にするアスリートを応援していきます。
今回は、平昌パラリンピックでの活躍が期待される、スノーボードの成田 緑夢選手にアスリートとしての目標や競技の魅力を語っていただきました。
写真撮影:Norihiko Okimura
ぶつかり合いもある激しい競技
スノーボードのバンクドスラロームは、1人で滑ってタイムを競うもので、スノーボードクロスは、2人で滑って速い方が勝ち上がるトーナメントです。
健常者は5人で滑るところを、僕たちは安全面を考えて2人で滑りますが、それ以外はほぼ同じですね。
1㎞ぐらいのコースの中に、ジャンプ台やカーブなど、いろんな障害物があるんです。
一番速く滑れるラインを奪い合うことになるので、ぶつかることもあってかなり激しいですね。
夏のスポーツは体を使うものが多いと思いますが、冬のスポーツは道具を使って滑るものが多いので、スピードが格段に上がります。
最近は選手が頭にカメラを着けていて、臨場感のある映像も見られますが、やっぱりテレビでは伝えきれないと思うんです。
ぜひ、会場に行ってスピードを体感してほしいですね。
アスリートの立場から言うと、もうちょっと日本人がスポーツに矢印を向けるような環境が整えばうれしいなと思います。
日本ではスポーツ選手か遊びかっていうイメージで、ライフ(生活)とスポーツが一体化してない感じがあるので、もう少し海外のように自分の生活にスポーツがリンクしてくれたら、もっと面白くなると思うし、うれしいですね。
それが成し遂げられた時、環境も自然と整ってくるんじゃないかなと思います。
写真撮影:Norihiko Okimura
海外の人々の情報の仕入れ方を勉強して
個人的に好きな地域は、競技とは関係ないけどサンディエゴ(笑)。
町自体はすごく小さて、空港からタクシーで5分くらい走ったら、もうヨットが並んでいて。
海沿いに町が広がっていて、すごくきれいなんです。
のどかで人がやさしくて。暖かくて気候もいいですね。
サンフランシスコとか東京は、仕事に矢印が向いている気がするんですよ。
でもサンディエゴはライフに矢印が向いている。
みんなが自分たちの人生を、人生に向けている感じ。
ゆっくり、かつオシャレみたいな(笑)。
最初は、海外の人たちの情報の仕入れ方を勉強しに行こうと思ったんです。
それでノープランで2週間ぐらい、現地の人のように生活してみたんです。
アメリカでは、あまりテレビの影響力がないのかなと思いましたね。
1000チャンネルかある中で、好きなものを見る。
日本はテレビからどーんと情報が流されて、「あなたはどう思いますか?いいと思いますか?ダメと思いますか?」っていう2つの意見しかない(笑)。
それに大概、「この意見についてどう思う?」って10人に投げたら、日本では6人ぐらい同じ意見になることが多いですが、アメリカでは意見が分かれ8個ぐらい違う意見が出てくるんですよ。
情報を見た上で、自分の意見を加えるという思考の作り方なのかなと。
そういう意味では、アメリカはいろんな角度の意見があって、答えもいろんなところに着地点が置かれている感じです。
なのでテレビを見ていれば、それで情報収集はOKという訳ではないんですよね。
写真撮影:Norihiko Okimura
子どもは自分で考えると成長速度が速い
僕はトランポリン教室をやっていますが、子どものやる気を引き出すコツは、目の前の一歩を明確にしてあげることです。
資料を渡して「ゲームだよ。レベル0です。これができたらレベル1です」と。
それだけです。
これを繰り返してレベルを上げていくんです。
子どもたちは、目の前のレベルをひとつ上げることに一生懸命になっているだけなんですね。
だからすごく上手くなっているけど、めちゃめちゃ練習しているっていう気持ちは、多分一切なくて、遊びに来ていると思うんです。
でも、どこよりも効率のいい練習をしていると思います。
トランポリンに上がれる回数が決まっているので、それを練習に使うかテストに使うかは、子どもが自分で決めます。
ルールだけ決めて、どう練習するかは子どもたちの自由なんです。
だから黙々と一人で練習している子もいるし、わからないから教えてと聞きにくる子もいる。
いろんな子がいるけど、それは個々の性格なので、結果的にこの着地点に来ればいいということです。
僕たちは学ぶじゃないですか。
失敗や辛い思いをすると、そのデータをもとに次の一歩を踏み出すけど、教えてしまうと子どもたちはそれをしなくなってしまいます。
だから子どもたちが自分で考える空間を作っているんです。
すると成長の速度が速いんですよ。
写真撮影:堀切 功
パラリンピックは夢への第一歩
僕の人生の最終目標は、障がいがある人、ケガをして引退を迫られている人、一般の人に、夢や感動、希望、勇気を与えたいということです。
ケガをした後に、健常者のウェイクボードの大会に出たら優勝できて、その時、SNSで「僕も同じ障がいがあるけど、緑夢君を見て、もう一度がんばってみようと思った」とか、「勇気をありがとう」といったメッセージをもらったんです。
僕がスポーツをすることで、こんなふうに人に影響を与えられるんだと知って、この目標を持ちました。
それで目標にアプローチするのに、いろんな分野がある中で、僕が一番アドバンテージを持っているのはスポーツだと思ったんです。
じゃあスポーツで一番影響力のあることは何かと考えたら、パラリンピック、オリンピックだと気づいた。
この夢を掲げて数年やって来て、今、夢への第一歩のパラリンピックが近づいてきたところです。
だから平昌に向けての率直な気持ちは「ワクワク」です(笑)。やっとここまで来たなという感じですね。
パラリンピックの先にオリンピック出場も見据えている成田選手
写真撮影:Norihiko Okimura
PROFILE
成田 緑夢(なりた ぐりむ)
1994年2月1日 大阪府生まれ
2013年3月フリースタイルスキーのハーフパイプで世界ジュニア選手権を優勝するが、その翌日トランポリンの練習中の事故により腓骨神経左膝麻痺の障害を負う。
その後、パラスポーツアスリートとして、2016年よりスノーボードと陸上競技の走り高跳びに挑戦。
日本パラ陸上選手権において走り高跳びと走り幅跳びの2種目で2位の成績を収め、さらにスノーボード競技では、2016年全国障害者スノーボード選手権大会と、韓国およびアメリカで開催された障害者スノーボードのワールドカップで優勝を果たす。
今後もより大きな世界の舞台で活躍が期待されている。
取材協力=日本本財団パラリンピックサポートセンター
JTBスポーツブログでは、今後もパラスポーツ情報、アスリート情報をお伝えしていきます。次回もお楽しみに♪
INFORMATION
成田 緑夢選手の記事はJTB旅カード ゴールド会員誌「トラベル&ライフ」にも掲載されています。
創刊60周年を記念して、旬な旅情報や取材のこぼれ話などの旅にまつわるコラムをオリジナルWebマガジンで配信中!ぜひ、ご覧ください。
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