自分を通じてパラリンピックを身近に感じてほしい。
★垣田斉明選手★(卓球/熊本県・旧下益城郡松橋町出身 八代市在住)
JTBグループでは、パラスポーツの発展とともに、地域を元気にするアスリートを応援していきます。
今回は、熊本県八代市職員と卓球選手の二足の草鞋を履いて活躍中の垣田斉明選手にアスリートとしての地域の環境と魅力を語っていただきました。
写真撮影:Norihiko Okimura
八代市からパラリンピック選手を!
僕は、生まれは熊本県下益城郡松橋町(現・宇城市松橋町)です。
今は八代市役所の職員なのですが、熊本県のパラリンピック強化指定選手にも選ばれています。
2020年には東京大会もあります。
やはり地元からパラリンピックの選手が出るのは、うれしいことだと思うんです。
ですから八代市の職員として、八代に残ってプレーをして、パラリンピックをみなさんに身近に感じてほしいと思っています。
東京大会が近づいて、メディアや県外のイベントに出る機会も増えてきています。
そうした活動を通じても、八代市にアスリートがいることを知ってもらえたらうれしいですね。
リオ大会で日本がメダルを取ってからだと思いますが、卓球自体がメディアに取り上げられる機会も増えて、習いに来る生徒が増えたのを感じます。
昔は卓球というと暗いイメージがありましたが、ラリーとかを見てかっこいいと思ってくれる子が増えたのかな(笑)。
垣田選手 競技イメージ
ちょっと生意気だけど本当に良いライバル
日本選手権でダブルスを組んでいる永下尚也選手が福井県の出身で、先日、福井の新聞に取り上げていただいたんです。
永下選手は、シングルでは何度も優勝を争っている相手でもあります。
彼は年下で性格もちょっと生意気なんですよ(笑)。
でも悪い意味じゃなくて。
彼のおかげで日本選手権に向けて気も引き締まるし、彼に勝てないと海外でも勝てないし。
本当に良いライバルですね。
日本選手権ではシングルの試合が先にあって、最近は僕と永下選手が交互に優勝している感じです。
ですから、シングルの決勝で自分が負けても、翌日のダブルスでは、前日の結果は忘れて一緒にちゃんと頑張ると(笑)。
シングルは取れなくても、ダブルスは優勝を取りにいこうと、それだけはお互いに言っています。
写真撮影:Norihiko Okimura
観光とスポーツで熊本を盛り上げ、復興を後押し
2016年の熊本地震では、八代市も確か震度6強くらいの揺れが2回あったんです。
発生直後に役所から呼び出しがあって、すぐに市役所に出向きました。
その後は、市の職員として避難所で交通整理のようなことをしたり、支援活動をしたり。
当然ですが、やはりとても練習はできない状態でしたね。
市役所の庁舎も使えなくなって、いまだに解体もできていない状態です。
今はプレハブの仮庁舎で業務を行っていますが、2020年ごろには新庁舎が完成する予定です。
熊本はやっぱり馬刺しがおいしいですし僕も大好きです。
あとは「一文字ぐるぐる」ですね。
ひともじ(わけぎ)をぐるぐる結んで、酢みそをつけて食べる熊本の郷土料理です。
家庭料理ですが、お店にもあると思いますので、ぜひ食べてみてください。
観光ではやっぱり阿蘇ですね。
大観峰からの景色は本当に素晴らしいなと思います。
それと、熊本城のふもとに城下町のような城彩苑というところがあるんです。
熊本の特産品などが売られていて、僕も時々買い物に立ち寄ります。
2019年には、ラグビーのワールドカップや女子ハンドボール世界選手権大会が熊本で開催されますから、海外からの観光客も増えると思います。
熊本がもっと盛り上がってくれるとうれしいですね。
写真撮影:Norihiko Okimura
海外遠征で驚かされた外国人選手の実力
僕が初めて行った国際大会はポーランドだったんですが、浜辺が近いところで、すごく時間の流れがゆっくりに感じていいなと思いましたね。
その時の穏やかな雰囲気はいまだに覚えていて、また行きたいなと思います。
海外遠征を始めて2年くらいは、ベスト8くらいまでしか行けなくて、メダルもなかなか取れない状態が続いて。
当時、国内の大会では8回くらい優勝していたこともあって、海外といっても大したことないだろうと思っていたんです(笑)。
そうしたら全然勝てないんですよ。
一番びっくりしたのはヨーロッパの選手でしたね。
まず体格が違うんです。
それで球の速さも強さも全然違う。
もう驚かされましたね。
ハンデがあるにも関わらず、こんな球を打てるんだと。
ですから、そういったところを見てほしいですね。
一方で、障がいが重い選手たちも、その体をいかに駆使して勝つかということを一生懸命考えながらプレーしています。
戦術だったり、球が複雑な回転になっていたり、卓球を全く知らない方が見ると難しいとは思いますが、そこもぜひ見てもらいたいですね。
パラ卓球は、車いすの選手に関してはサーブのルールに少し違いがありますが、基本的には健常者の卓球と全く一緒です。
サーブを出し始めて、ラリーが続いている間は、応援の声が耳に入ると集中が途切れてしまうこともありますが、一本決まった後の瞬間とかは、もうどんどん声を出して応援していただければと思います。
足りないものを見つけて超えた先に、パラリンピックがある
トップの選手はやっぱり攻守が揃っていますね。
サーブがまず良くて、守備力もあります。
卓球は打つイメージが強いと思いますが、上位の選手とやるとなかなか攻撃させてもらえなくなるんですよ。
打たれないような技術がうまくて、そこからの展開が強いですね。
こっちはドライブ(※)したいんだけど、短く返されたりしてドライブできない。
そうすると、どうしても後手に回ってしまうんですね。
パラリンピックの出場資格は、国際ランキング14位以内ですが、僕はいつも20位前後でさまよってるんですよ。
リオ大会の前も20位前後で終わってしまって。今は24~25位くらいです。
きっと何か足りないものがあるので、それをコーチと一緒に一生懸命模索しているところです。
でも、それが見つかって超えられれば、十分に14位以内に入れるんじゃないかなと思っています。
※ドライブ=前進回転をかける打ち方で、卓球の重要な技のひとつ。
写真撮影:Norihiko Okimura
PROFILE
垣田 斉明(かきた なりあき)
2006年熊本学園大学在学中に第7回日本障害者卓球選手権大会シングルスで優勝後、同大会(第10回から国際クラス別肢体不自由者卓球選手権大会に名称変更)を8連覇するという快挙を成し遂げた。
その後も輝かしい戦績で国内、海外を問わずトップクラスを維持し続けている。
2020年の東京パラリンピックには熊本県指定強化選手にも選ばれた。
垣田選手の障害名は“右上腕神経叢麻痺による右上肢機能の著しい障害”というもので、競技は障害区分のクラス10の選手同士で行われる。
2017年11月1日現在、クラス10で世界ランキング24位。
コカ・コーラウエスト社を退社後、2014年から八代市役所市民課の職員として勤め、2児の父親である。
取材協力=日本財団パラリンピックサポートセンター、一般社団法人日本肢体不自由者卓球協会
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