[2024年版] 世界遺産シドニー・オペラハウスの歴史について ~建設に込められた想いとは~

JTBオーストラリア
こあらさん

ワトソンズベイ・サーキュラーキー間のフェリーから撮った一枚。

オーストラリア・シドニーにある20世紀の代表的建築物、オペラハウス。2007年に世界遺産に登録され、観光地として人気を博しています。「人間の創造的才能を表す傑作であること」という基準のみで登録されている文化遺産は、世界でたったの3つ。その1つであるオペラハウスの建設には、数えきれないほど多くの人が関わり、紆余曲折を経て今に至っています。今回はその歴史の一部と、込められた想いについて紹介します。


  • オプショナルツアー(現地発着)
    JPY12,735〜
    ※価格は予告無く変更になる場合がございます。
    期間: ~2025-03-31
    シドニー湾の絶景を楽しめるフェリーと市内を南北に走る路面電車ライトレールを利用しながら、シドニーを知り尽くした現地ガイドと過ごす 半日ツアーです。シドニーの魅力を歴史と文化を交えてじっくりとご案内致します。オーストラリアのコーヒー体験あり、オペラハウスの日本語館内観光もあり、と短時間でシドニーを知ることが出来る魅力たっぷりのツアーです。滞在中早めにご参加いただくことで、その後のシドニー観光がさらに充実すること間違いなし!

オペラハウスの成り立ち

シドニーに大規模なコンサートホールの必要性を訴えたのは、イギリス出身の指揮者・作曲家で、シドニー交響楽団の指揮やNSW州音楽学校校長を務めたユージン・グーセンスでした。実現の兆しが見えたのは、州首相が交代した1952年。政府がデザインを募集し、計28か国233件の応募から選ばれたのは、当時無名であったデンマークの建築家であるヨーン・ウツソンによるものでした。彼のデザインは抽象的で選考基準を満たしていなかったため一度は落選したものの、後にCBSビルなども手掛ける建築家が一目で気に入り、その構想の力強さが評価されました。
しかし実際に計画が始まると、まずヨーロッパで5年に渡り設計が練り直され、ウツソンが希望していたシェル構造内の金箔の施しを取りやめるなど、多くの変更を余儀なくされました。工事も悪天候や政治状況によって難航し、特に費用面で政府と対立したウツソンは、監督権限を失いました。その後は他の建築家に引き継がれ完成に至りましたが、1999年の改修では、彼のデザインを愛する多くの人々からの希望を受け、ウツソンは高齢ながらも自ら改築の手引書を作成し、息子に託しました。
彼はオーストラリアを去ったあと、同地に二度と足を踏み入れなかったため、直接自身の成果を見ることはありませんでしたが、再度その才能が評価され、彼が亡くなる1年前の2007年にオペラハウスは世界文化遺産となりました。

目前の世界遺産。圧倒的なオーラを纏っています。

オペラハウスはどこにある?

オペラハウスはベネロング・ポイントに建設されています。この場所はかつて小さな島であり、砂州の形成により本土と陸続きになりました。アーサー・フィリップが初めて上陸した際には、アボリジナルが捨て長い時間をかけて堆積した牡蠣の貝殻が広がっていたそうです。イギリスとアボリジナルの仲介役を務めたベネロングという人物の住居をフィリップ総監が建設したことから、その名がつけられたと言われています。
砦やトラムの車庫として使われたのち、この地にオペラハウスを構えることを選んだのは、建築の提唱者であるグーセンス。先住民族の1つであるガディガル(Gadigal)の人々がその地を海水と淡水の交わる場所と呼んでいたことから、その水のように人々が音楽を通して交流する場となるよう、願いが込められたといいます。ウツソンはデザイン構想時点で、ベネロング・ポイントどころかオーストラリアにすら行ったことがないにもかかわらず、地図を見て研究し、岬に建築するならば4面に加えて上から見られることを想定しなければならないと、5面でデザインを考えたそうです。
太陽の光を受けた美しい貝殻や船の帆をほうふつとさせる斬新なデザインにより、この地は時代を超えてもなお、青白の輝きを放っています。

8月の18時頃。ライトアップされ海に美しく反射しています。

技巧的な構造

オペラハウスの建築には様々な工夫が凝らされました。
設計時点で苦戦したシェル構造は、みかんから着想を得て、一つの球体が利用されました。エンジニアが苦労したのは、外の音を遮断することと観客の怪我を防ぐこと。結果的に、当時は珍しかった「合わせガラス」をフランスから取り寄せました。これは2枚のガラスの間にプラスチックを挟んでおり、防音性に優れ、たとえ割れたとしても破片の飛散を防ぐことができます。また建物内部から景色を最大限楽しめるよう、ガラスの反射の低減にもこだわったといいます。景観のため、室外機や雨どいはなく、水族館でも使用されるヒートポンプシステムを導入し、外の敷地は床に隙間ができるようにパネルを貼り付けたことで、雨どいの役割を果たしています。建物表面に矢じり模様に貼られた2種類のタイルは、スウェーデン産のセラミックタイルで、100万枚以上のタイルが太陽の光を海のさざ波のように反射するように計算されています。
建設期間に予定の3倍以上である14年を要し、費用には当初の14倍の一億ドル以上を費やしたのは、できる限りウツソンのデザインに沿い、訪れた人全ての記憶に残るようなものを造るという、建設者たちのプライドと惜しみない努力に比例したものだったのだと想像できます。

太陽の光を浴びたオペラハウス。神秘的なものを感じます。

内部見学ツアーに参加。先の窓からオットセイに出会えることも?

オペラハウスの現在

現在オペラハウスでは、オーケストラやオペラなどの講演に加え、内部のガイドツアーも実施されています。30分ほどの日本語ツアーもあり、細部までこだわり抜いた世界屈指のコンサートホールの内外で、満足感のある時間を過ごすことができます。また2020年の大改修により、コンサートホール内の音響をはじめとした様々な部分が更新され、以前よりも、ウツソンを代表とする完成に尽力した様々な人たちの理想に近づいたように思います。
新型コロナウイルスが収まりを見せ、海外への旅行にも目を向けられるようになった今、オーストラリアが世界に誇る美しい交流の場に足を運び、人と音楽が織りなす特別なひと時を楽しむのはいかがでしょうか。

植物園で散歩後、ミセス・マッコーリーの椅子近くで一休み。

反対岸からの風景。こちらも撮影スポットとして人気があります。

  • オプショナルツアー(現地発着)
    JPY3,387〜
    ※価格は予告なく変更になる場合がございます。
    期間: 2022-11-01~2025-03-31
    世界遺産オペラハウスの内部を見学するツアーです。30分のツアーは、必見の見所を網羅しています。知識の豊富なガイドが皆さんと一緒にオペラハウスの中を巡りながら、その波瀾万丈の歴史、天才的な建築家の功績、奇跡ともいえる設計と工学の秘密をご紹介いたします。シドニーハーバーが一望できるロビーから美しい風景を写真に収めたり、さらにはオペラハウス内の劇場のコンサートホールまたはオペラシアターの中に実際に足を踏み入れたりする機会も設けております。他では決して体験することのできないツアーです。

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