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大きな心で臨めた海外遠征
東海林 大 選手(パラ水泳/山形県山形市出身・在住 )

JTBグループでは、パラスポーツの発展とともに、地域を元気にするアスリートを応援していきます。 今回は、パラ水泳界をけん引する若きスイマー東海林大選手にアスリートとしての地域の環境と魅力を語っていただきました。

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写真撮影:Norihiko Okimura

庄内で海水浴、羽黒山で登山、蔵王でスキー
 私は山形県山形市の出身で、生まれてからずっと今まで20年住んでいます。 今私が所属しているスイミングクラブでは、山形の選手たちと一緒に練習していますし、山形の人とは常に関わっています。 以前出場した大会で、スタート台に上がるタイミングがわからずにいたら、市水連(山形市水泳連盟)会長が何度も指導してくれました。 その方が障がい者水泳の指導に長く携わってきたことを、パラ転向後に知りました。 以来ずっと変わらずに、市や県の水泳連盟の方が温かく見守ってくれています。
 山形県内で大好きなのが庄内。 母の実家が庄内なので、毎年夏になると海水浴に行きました。 あと羽黒山の山登り。 蔵王でのスキーも樹氷を見られて、みんなで滑って楽しかったです。
 食べ物だと芋煮。 お米だったら、最近は新しい品種で「雪若丸」というのがあります。 あと夏は「だし」ですね。 キュウリとかナス、ミョウガを刻んで薬味を入れて和えた山形の郷土料理でおいしいです。

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写真撮影:Norihiko Okimura

海外遠征では日本とは違う食事が楽しみ
 国内の大会は、知ってる選手がたくさんいたり、応援してくれる人も知っている方々が多いんですけど、海外は環境もがらりと変わって非日常。 初めての海外遠征では、自分がまるで別人になったかのような気持ちになって。 大きな心でレースもいけそうな感じがして、これまでにない気楽さでした。
 最初の遠征はエクアドルで、ほかにはイギリス、オーストラリア、ドバイ。 印象に残っているところは、ひとつだけは選べないですが、ドバイはお金持ちの国で、世界一高いビルとか、世界一がいっぱい詰まっている国でした。 イギリスは、朝食もおしゃれだったし、街中もおしゃれ。 オーストラリアも、特にケアンズは街全体がリゾートで、食事もおいしかった。 日本では普段はお米を食べてますが、オーストラリアだとパンケーキだったりして。 日本とは違う楽しい食事ができるのが、海外の楽しみ。 観光地も、行くこと自体がすごい楽しみです。

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写真撮影:Norihiko Okimura

まだまだ行きたい国や乗りたい飛行機がたくさんある
 小さいときから飛行機に乗っていろいろな世界に行ってみたいなとか、スペースシャトルにも興味があって、宇宙にも行ってみたいなと思っていて。 子どもの頃の夢は、宇宙飛行士だったんです。 まだまだやりたいことや楽しみたいことがたくさんあります。 行ったことがない国もあるし、乗ったことがない飛行機もあるので。今一番乗りたいのはANAのウミガメの!ホノルル行きの2階建ての! あとビジネスクラスとかファーストクラスにも乗ってみたいし、世界のディズニーランドにも行ってみたい。
 水泳もそうですけど、やっぱり何でも楽しむことが大事なんじゃないかなと思います。 最近はあまり取れませんが、自分の自由時間も大事にしています。 家でゴロゴロ寝たり、ネットとかスマホをやったり、絵を描いたり。 何を描いているかは秘密です(笑)。

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写真撮影:Norihiko Okimura

無心になることが水泳の一番の魅力
 4歳で水泳を始めました。 始まりは単純に水遊びが楽しかったんです。 今、水泳の楽しさは何かって言われると難しいですけど、何も考えないで泳ぐっていうところ。 楽しい時も、きつい時も、それが共通点だと思います。
 もとは自由形の短距離をやっていて、今も自由形は好きだな、欠かせない種目だなと思っています。 最近はすべての種目を練習していますが、特に背泳ぎを中心に個人メドレーを強化しています。
 正直に言って強みは出したくないんですが(笑)、毎日やっている体幹。 バランスボールの上に足を乗せて、姿勢をキープしたり、ゆっくりなんだけど動作を入れて体幹に刺激を与えると、水中でも常にまっすぐに泳げるようになります。 体がぶれないように泳げると、水の抵抗を最小限に減らせます。 体がぶれない、抵抗のない泳ぎを目指しています。

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写真撮影:Norihiko Okimura

「できたことノート」で楽しく泳げるように
 前に父に勧められて「できたことノート」を書き始めたんです。 もともと気になったことをメモしていたんですが、反省点を書くことが多かったので、前向きなことを書いてみようと。 最近はあまり書けていませんが、水泳でこれができたとかそういうことだけじゃなくて、大好きなファストフードに行けてよかったとか(笑)。 日常生活のことでも、うれしかったこと、楽しかったことを書いています。 前向きなことを書くようになって、気持ちが楽になって、楽しく泳げるようになりました。
 以前は目標に向かって頑張ろうと力が入ったり、レース中にほかの選手に抜かれてしまうと動揺してしまったことがあったんです。 でもコーチから「明るく笑顔で楽しんで」と言われて、今は楽しむことをメインにして、プレッシャーは感じるけども、あまり気にしないようになったんです。 目標も最低限、体調管理に気をつけるとか、ケガをしないとか、一日一日の生活を基本に考えています。

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写真撮影:Norihiko Okimura

2020年まで、何も考えずいつも通りに
 同い年の中島啓智選手やリオ大会に出場した選手たちを、最初はライバルだと思っていました。 でも昨年のパンパシ(2018パンパシフィックパラ水泳選手権大会)では、世界の強豪たちと戦っていくうえで、パラリンピック経験者は心強い味方だと思ったんです。 二人三脚で一緒に戦っているような感じです。 今年になってから、イギリス勢とかオーストラリア勢が、ますます強くなっています。 多少は他の日本代表選手をライバルとは思っているんですけど、でも仲間だということは忘れません。 ともに世界と戦う心強い仲間がいるだけでも安心できるし、仲間がいれば自信満々で戦える。 そういう存在です。
 2020年のパラリンピックに向けては、とにかく何も考えない。考えすぎない。 パラリンピックに出場するためにとか、いい結果を出すためにとか、そういうことは特別に考えずに、ただただいつも通りのことをやっています。 国を背負っている自分よりも、ひとりの自分として、世界を楽しむ。 ありのままの自分で。

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写真撮影:Norihiko Okimura

PROFILE
東海林 大(とうかいりん だい)
1999年3月9日 山形県山形市生まれ 山形市在住
水遊びが大好きで4歳の夏から地元スイミングスクール「山形ドルフィンクラブ」に通う。 その年の秋に、自閉スペクトラム症(軽度の知的障害を伴う)と診断される。 小・中学校(特別支援学級に在籍)では健常者の水泳大会に参加していたが、高等養護学校に入学した2014年にパラ水泳へ転向。 卒業後は山形市内の「株式会社アイエス 介護付有料老人ホーム ベル宮町」で清掃業務に携わりながら、16年間通い続けるスイミングクラブで東京パラリンピックを目指し、日々練習に励んでいる。 三菱商事(株)所属

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