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実は高齢者にやさしい街・神戸
(マクドナルド山本恵理選手/パラ・パワーリフティング/兵庫県神戸市出身 東京都在住)

JTBグループでは、パラスポーツの発展とともに、地域を元気にするアスリートを応援していきます。 今回は、パラ・パワーリフティングで世界を目指すマクドナルド山本恵理選手にアスリートとしての地域の環境と魅力を語っていただきました。

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写真撮影:Norihiko Okimura

日々の練習を3秒にかけるロマン
パワーリフティングって3秒で終わってしまう競技ですが、私は3秒で終わっちゃう!と思ったことは一度もなくて。 クサイかもしれないけどロマンだと思っていて(笑)。 たった3秒のためにずっと練習してきて、一か八かを賭けられるスポーツって、なかなかないと思うんです。
一方で、まず2分をどう使うかという課題があります。 名前が呼ばれてベンチ台に上るまでに2分、ベンチ台に上ってバーを取るまでに2分与えられていて。 そこまでに選手としてキャラクターをどれくらい出せるかと、どうモチベーションを高めていけるかが、毎試合の課題です。 気持ちよく上がった時は、その時間が本当に私らしくいられたなと。 以前ある選手に、パワーリフティングは2分間を自分でどう使うかを考えるスポーツだよって言われたことがあったんですが、競技を通じて自分のキャラクターを作っていくという意味が、最近分かってきました。

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写真撮影:Norihiko Okimura

私は上げる前に、手を組んで前に伸ばすポーズをしますが、今フォームを改善しているところなので、そのポーズをどこに入れるかとか、こうやった方が面白いかなとか、考えながら練習しています。 「面白い」と「理にかなっている」のせめぎ合いなんですけど。 ほかの選手がいるところでやるのは恥ずかしいので、ひとりの時にこうやったらかっこいいかなとか考えています(笑)。 それもこの競技の楽しさかな。

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撮影 鳥飼祥恵

心技体が揃うと、軽く上がる!
やっぱり強い選手は上げる姿がきれいです。 バーを下ろす動作、胸で止める動作、最後の上げる動作、この3つのフェーズがキビキビしている選手は、本当にきれいです。 一般の方も、1日試合会場にいたらグッドリフトかノーリフトか分かってくると思います。
ランナーズハイってあるじゃないですか。 私リフターズハイもあると思っていて、上がる時は、本当に何を上げているんだろうって思うくらい軽く上がります。 本当に心技体が揃った状態ですよね。 それが試合に出ると最高なんですけど。 でもきっと一番は、楽しいと思っていることだと思うんです。 この重さ来た!って。 重いのが楽しいって大抵の方は理解できないですよね(笑)。 私も最初は理解できなかったです。 でも、やってみたら分かります。

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撮影 鳥飼祥恵

どんな人も受け入れるカナダが、自信を与えてくれた
好きな町は、やっぱり留学したカナダのエドモントンですね。 今でも行くとすごくホッとする町ですし、何よりも私に自信を与えてくれた町なんです。 ホッケーとビールしか楽しみがないみたいな超田舎町ですけど(笑)、人がとってもいいんですよ。 最初はまったく英語ができなくて、それでもコミュニティに入れてもらえて、最後にはたくさんの人に囲まれていたなって。
カナダはダイバーシティがすごく進んでいる国で、顔が日本人であろうと、車いすであろうと受け入れる社会があって。 もう我慢しなくていいんだなと思ったことがあったんです。 私は今まで頑張って障がい者として、置かれた状況に合わせようとしていたんだと気づいて。 だけど、自分がやりたいことはやりたいって言っていいし、やってみたいことはやってみたらいいし。 トライしたいことは一度やってみて、失敗だったらそれはそれで、できなかったことが分かればいいしって。 そのトライしていこうっていう気持ちが生まれたから、パワーリフティングにも挑戦できたんだと思います。

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写真撮影:Norihiko Okimura

健常者も障がい者も一緒にプレーするカナダのアイススレッジホッケー
エドモントンは本当に何もないんですけど、素朴でいいです。 夏は景色がすごくきれいですよ。 山の中にあるからこそ感じられる自然に、ほっとする町です。
それと、前は世界一大きいと言われたウエスト・エドモントン・モールがあります。 ドバイのモールに抜かれちゃったんですけど(笑)。 アイスリンクも水族館も遊園地も映画館もあって。 田舎なのにそんなに大きいモールあるの!?って感じです。
あとはアイススレッジホッケーですね。 健常者も交じって一緒にやるんですよ。 子どもがホッケーをやっているお父さんお母さんが、一緒にやったらハマっちゃってチームに入るってことになって、みたいなこともあって。 もうパラスポーツではなくひとつの競技として、健常者も障がい者も一緒に練習して、ビールを飲んで帰る。 パブは本当に毎回行ってましたね(笑)。

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写真撮影:Norihiko Okimura

バリアフリーな神戸でそばめしを
実家は神戸ですが、東京に来てから神戸愛が強くなりましたね。 遊びに来られたら、どれだけバリアフリーが進んでいるか見てほしいです。 あんなに坂ばかりの街なのに、私は暮らしづらいと思ったことは一度もなくて。 今も公共交通機関で難なく地元の駅まで帰れるんです。 神戸は坂が多いから、おばあちゃんを連れて行くのはやめようとか、思われるかもしれないですが、循環バスもありますし、高齢者にも優しい街だと思います。

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写真撮影:Norihiko Okimura

神戸は昔、フェスピックという障がい者のためのスポーツ大会を開催したことから、パラスポーツがすごく根付いているんです。 車いすで行けるプールも、市内に2~3ケ所あるわけですよ。 今各地でパラスポーツを盛り上げようと頑張っていますけど、神戸はもともと根付いていたから、それずっとあったよねっていう雰囲気なのかなとすごく思っていて。 だから「今」っていうよりも、「ずっとやってきたよね」っていうのを端々に感じます。 ぜひ神戸に行って、その感覚を確かめてほしいなと思います。
食べてほしいのは、そばめし! 神戸発祥らしくて、高架下で食べるそばめしが大好きです。 ソースの下に沈殿したどろっとしたのでできた、どろソースというのがあるので、ぜひそのどろソースをかけて食べてください!

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写真撮影:Norihiko Okimura

PROFILE
マクドナルド 山本 恵理
(まくどなるど やまもと えり)
1983年5月17日 兵庫県神戸市生まれ 東京都在住
先天性二分脊椎症で生まれ、生後1カ月目に手術を受ける。 9歳から一番苦手だった水のスポーツ、水泳を親の勧めで始め、初めてパラリンピックという世界があることを知る。 パラリンピック出場を目指して水泳部で練習中に怪我をし、夢を諦めたがパラリンピックを支える仕事があることを知らされ、2008年北京パラリンピックにはメンタルトレーナーとして水泳チームに帯同。 その後、カナダに留学、留学中に出会ったパラアイスホッケーにてカナダ女子代表に選ばれる。 日本に帰国後、仕事の体験会で出会ったパラパワーリフティングを始め、小さい頃から夢見ていたパラリンピック出場の夢を叶えるために日々練習に励んでいる。

取材協力=日本財団パラリンピックサポートセンター

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