マリン・ツーリズム山田(岩手県下閉伊郡山田町)
「マリン・ツーリズム山田」は、牡蠣やホタテの養殖で有名な岩手県山田町・山田湾の7〜8人の漁師たちが、子供たちに養殖漁業を体験してもらいたいと、2005年ごろに結成した、会員制の漁師のグループ名です。当初は、ボランティア活動的に、県内・町内の子供たちの体験を年間200名ほど受け入れていました。
2011年の東日本大震災の大津波によって、山田町も甚大な被害を受け、すべての養殖施設が流され、多くの漁師が船も家も失いました。
「マリン・ツーリズム山田」の漁師たちも、自宅だけでなく仕事場や船も失くし、生活の基盤をマイナスから立て直すため、この活動も消滅していました。
2015年、養殖漁業のハード面での復興が少しずつ進んだとき、「また活動したい」という会長の要望を受け、体験観光コーディネーター、山田町観光協会、山田町役場水産商工課が協力し、復活するための体制づくり、実施するためのさまざまな障害、新規会員の募集など問題をひとつずつクリアしました。「営業」をするための手続き等で時間がかかりましたが、2016年夏に、新生マリン・ツーリズム山田が活動を開始しました。同時に若手漁師が1名入会してくれ会員漁師5名での出発でした。
再開するにあたり、ボランティア活動では継続に無理がでる恐れがあるため、町外、県外からの観光客を対象とし、漁師の収入になる体験料金を設定。お客様の問い合わせ・申し込みに対応できない漁師のために、体験観光の企画運営をする「やまだワンダフル体験ビューロー」が窓口・企画・PRを担当し、山田町観光協会が運営事務局機能を担うことになりました。
2016年度は、8月から開始したのでまだお客様は少なく、よい練習になりました(受入人数294名)。
2017年度は、本格的にお客様を受けさらに5名の会員漁師が増え、会員数は9名に(受入人数642名)。
2018年度は、受入れ人数773名。口コミや営業で徐々に「山田町といえば漁業体験」といわれるほど認知度が上がってきたのを実感しました。
そして、2019年は9月時点ですでに1000名を超え、精力的に観光客を受け入れています。
体験のお客様を受け入れた収入は、本業の漁業の収入と比較したら、ほんのわずかです。
それでも、会員漁師たちがこの活動を続けていくのは、観光客との交流から生まれる、山田町の海産物のPRとブランド化です。すぐに効果が出るわけではないですが、長期的に山田町の漁業の発展を考えているからです。
また、漁師はいままで生産した牡蠣やホタテを市場に卸すだけだったため、消費者とのつながりがなく、お客様の反応を見たことがありませんでした。「美味しい」「参加してよかった」という反応は、漁師の仕事に刺激とやりがいをもつ一番の活性剤になっています。
●漁業の現場やそれを育む山田湾の自然・島を知ってもらう
●生産者と消費者の交流によって、山田湾の貝を広く認知してもらう
●漁師のいきがい、やりがいにつなげる
を目的に、以下の体験プログラムを実施しています。
漁師が漁船で自分の養殖いかだを案内。牡蠣やホタテをどのように出荷まで育てているのかを実際にロープをあげて解説する。
山田湾に浮かぶリゾートのような無人島へ漁船で往復。無人島で過ごされるお客様が安全に滞在できるよう、見守りもする。
漁師が実際に行なっている作業を漁師と一緒に体験。教育旅行などで人気があります。
@〜Bの組み合わせ、オプション等あり。
オプション@ 船上ホタテの試食(海から上げたてのホタテをその場で提供)
オプションA クルーズのあと、漁師の番屋(作業場)で刺身や蒸し焼きにした牡蠣・ホタテ・地元ならではの雑貝を試食。牡蠣剥き体験などもできる。より詳しく養殖の話を聞きたい方にもおすすめ。
オプションB 養殖いかだに吊るしている海中熟成ワイン(山田湾熟ワイン)の引き上げと試飲。これは海外からのお客様に人気です。
※山田湾熟ワインとは、スペインのワイン農家と山田町の人々の交流によって生まれたもの。
これらのプログラムで観光客を呼び入れることで、町の海産物のPR、交流人口の拡大、漁業の活性化に貢献しています。2019年現在、会員漁師8名、全員が出航できれば、約60名が一度に出航できます。
また、年に1回先進地域へ視察研修・漁師との交流を行っています(1回目青森県平内町、2回目田野畑村さっぱ船アドベンチャー)。
※会社名・団体名等は、各団体の商標または登録商標です。
※賞の名称・社名・肩書き等は取材当時のものです。