ふるさとかかし親の会(兵庫県姫路市)
〇「奥播磨かかしの里」のある関地区は住民14名の過疎の集落ですが一年を通して町からの見物客が訪れており、地元住民と見物客が言葉を交わす機会も増えています。
また、安富町内を始め、近隣地区の住民有志により町おこし活動団体「ふるさとかかし親の会」を結成し、かかしの製作と設置、イベントの開催運営を行っており、地域住民の町の活性化に向けた参画意識も高まっています。
〇「ふるさとかかしサミット」「野外カフェ」などのイベント開催により、県内外の町おこし活動団体などとの広域的な交流も活発化しています。
〇 全国の何処にでも同様の課題をかかえた過疎集落はありますが、「何の変哲もない過疎の集落でも地域の特性を活かし、新たな価値を創造すれば魅力のある村になる。」という自信と誇り、生きがいが地区住民に生まれています。
「かかしの里」の村おこしは、
●低コスト(基本的にかかしの製作費用のみ。運営に多額の出費もいらない。)
●低労力(地区住民のみで対応可。運営に多人数の労力、ボランティアの協力等も不要。)
●設備投資不要(集落内の空き家、倉庫などがそのまま展示施設として活用できる。)
以上のとおり、地域資源をそのまま活用でき、コスト、労力も多くは必要とせず、過疎地でも取り組み可能で持続性の面でも問題なく、地域活性化の取り組みとして最適と考えています。
かかしの里の取り組みは、代表の岡上正人がH21年秋に自らが製作したかかしを郷里の集落に設置し「奥播磨かかしの里」としての村おこしを企画し、取り組みを開始したことに始まります。
その後、「かかしの里」が注目されるに従い住民の中から「自分たちもかかしの製作を行い、町おこしに関わりたい。」という機運が広まり、地元有志により「ふるさとかかし親の会」を発足しました。
「かかしの里」は取り組み開始後9年が経過しますが、その間の主だった動きは次のとおりです。
〇H21年秋…集落へのかかしの設置を開始
〇H23年5月…第1回「ふるさとかかしサミット」を開催。(今秋開催で第9回目。)
〇H24年4月…「ふるさとかかし親の会」を結成。
〇H25年5月…空き家古民家を活用した「ふるさとかかしギャラリー」を開設。
〇H26年2月…「かかしの里のひなまつり」イベントを開催。(今春開催で第5回目。)
〇H27年6月…かかしの保管倉庫を兼ねた「かかしの教室」を開設。
〇H29年9月…「野外カフェ」を開催。(春・秋開催で継続中。)
かかしの製作・設置、かかしの里の維持・管理、季節イベントの運営は「ふるさとかかし親の会」のメンバーを中心に行っています。
集落内の住民は80歳代後半の方が多く、かかしの製作・維持管理などに加わるのは体力的にも難しい面がありますが、自分たちの畑にかかしを置いたり、村の施設をかかしの展示や保管場所として提供いただいている他、「かかしサミット」などのイベント開催に当たっては場所や設営道具を提供いただくなど協力いただいています。
また、かかしに着せる古着の提供なども受けています。
〇かかしの製作材料代については、安富町域の自治会の文化伝承活動として、姫路市から一部補助を受けています。
〇かかしの里の施設の営繕、草刈りなどの維持・保全費用、かかしの衣服の更新費用などは、有料で製作依頼を受けたかかしの製作代金を財源に充てています。
〇「ふるさとかかしサミット」のイベント実施費用については兵庫県の地域活性化対策の助成金制度に応募し、ここ数年はほぼ申請額どおりの採択を受けています。
〇最近では「奥播磨かかしの里」の情報を耳にし、自分たちの地域でもかかしによる町おこしをしたいとの相談を受け、いくつかの地域で製作指導を行っています。
これらの地域・団体とは「ふるさとかかしネットワーク」として組織化し、「ふるさとかかしサミット」に参画するなどして情報交換・PR対策を行っており、今後更に参加地域を増やしていきたいと考えています。
更に将来的にはそれぞれの地域に、地域の特性に合った「かかしの里」「かかしの街」を展開し、各地域の情報をネットワーク化し魅力をPR、「かかしの里めぐりツアー」が企画できるまでになればと考えています。
〇この「ふるさとかかし(商標登録済)」を地域ブランドとして商品化し、各地の店舗・ 施設のディスプレー、各種イベント・見本市の展示などに活用することを考えています。
既に、福井県坂井市の丸岡城周辺、兵庫県神戸市の国営明石海峡公園(神戸地区)あいな里山公園などで30〜40体規模の設置が行われており、活用のニーズはあるものと思っています。地域ブランドとして確立することにより、地元住民の郷土への誇りに繋がり、かかし製作に携わることで住民の生きがいづくりにつながればと考えています。
兵庫県姫路市安富町の、住民14名の関地区の取り組み。80代後半の方が多くを占める集落で、2009年から開始して以降、現在では住民よりもはるかに多い130体の「かかし」が通年で設置され、多くの来訪者も訪れるようになった。近年では空き家・古民家を活用した「ふるさとかかしギャラリー」「かかしの教室」「野外カフェ」等の取り組みや、「ふるさとかかし(商標登録)」を地域ブランドとした取り組みも行われるなど、その取り組みは県内、県外へと広がっている。
・過疎化が進む中山間地域で、山里の景観や民家・農機具を活用しながら、柔和な表情のかかしで、日本の原風景をストーリー性高く再現し、多くの人を誘客するコンテンツを創り出した。
・「住民が暮らす普通の集落であることが重要」との明快なビジョンが成功要因となっている。
・過疎化の問題を同様に抱える他地域においても展示が広がっており、今後の展開に可能性を感じさせる点も良いと評価した。
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