JTB交流創造賞

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交流創造賞 組織・団体部門

第11回 JTB交流創造賞 受賞作品

優秀賞

漁師が帰りたくなる港へ
―気仙沼つばき会による女性目線の観光・まちづくり

気仙沼つばき会 (宮城県気仙沼市)

取り組みによる効果

・「漁師」の存在感の高まり

港町と言えど、関係者でなければ漁師さんとは触れ合う機会があまりないのが実情です。その中において、出船送りや漁師カレンダーなど、特に「漁師」に焦点をあてた活動が続けられてきたことで、港町文化にそこまで馴染みがなかった気仙沼市民にも、改めて「港町」としての自負・自覚、「漁師」に対する親しみや感謝といった情を感じてもらうことができました。

また、漁師さん自身にも、自分たちが「見られる存在」であるという意識や、「漁師」という仕事に対する誇りを再認識いただく機会にもなり、観光や教育などの本業以外の分野でも、講演や漁のデモンストレーションなどで協力いただける機会が増えてきていると感じています。

・「漁師」「魚市場」をコンテンツとした
観光商品の増加

出船送りなどの活動の成果もあり、2014年に策定された気仙沼市の観光コンセプトの中には、「漁師を誇る。」という言葉が盛り込まれました。これにより、「漁師体験(小舟で海に出て漁⇒自宅で漁師めし)」や、漁具や造船、船舶仕込みなど、港町の産業・文化に焦点を当てた観光客向けの体験プログラムの造成などが進んでいます。また、魚市場見学なども、従来の見学デッキから見るだけではない、講話や水産加工場見学などを盛り込んだ新しい内容のものが続々と生まれており、港町文化の発信強化につながっています。

・基盤となる水産業への好影響

観光だけでなく、本業の水産業にとっても、好影響が現れ始めています。「出船送り」で10隻以上の船を一斉に送り出すサンマ漁は、シーズン開始直後(出船送り直後)の漁場は北海道沖のことが多く、本来であれば、北海道で水揚げしたほうが近く、経費もかからずに行えます。しかし、1,000人以上の人が見送られたことから、わざわざ遠くの漁場から、気仙沼港を目指して帰ってきてくれる船もあります。このように、少しずつでも「気仙沼に水揚げしたい」という漁師さんたちが増えていくことで、街のにぎわいの継続にもつながることが期待できます。

これまでの取組期間、継続期間について
2008年 4月 会結成に向けたランチ会の開始
2009年 4月 気仙沼つばき会発足
2009年 11月 試験的に「出船送り」をはじめる
2010年 5月 本格的に「出船送り」に出動。
300人を動員
2010年 8月 サンマ船の出航を「出船送り」の イベントとして開催
2011年 3月 東日本大震災
2011年 8月 第2回サンマ船「出船送り」
2011年 8月 避難所である気仙沼小学校の校庭にて 「大漁旗まつり」を開催
現在使用しているミニ大漁旗を制作
2011年 11月 JTBなどのツアーを受け入れ開始
2012年 8月 第3回サンマ船「出船送り」
2013年 8月 第4回サンマ船「出船送り」
2013年 9月 第1回「市場で朝めし。」実行委員会を 立ち上げて開催。8,000人を動員
2013年 10月 「漁師カレンダー」の発売
2014年 2月 「漁師カレンダー」が第65回全国カレンダー賞経済産業大臣賞を受賞
2014年 8月 第5回サンマ船「出船送り」
2014年 10月 第2回「市場で朝めし。」を気仙沼市産業まつりと合同開催
2015年 5月 第1回「みなとでマルシェ。」単独開催
2015年 8月 第6回サンマ船「出船送り」
【出船送り】

2009年〜継続(開催は随時)

【サンマ船出船送り】

2010年〜継続(2015年で6回目)

【市場で朝めし。】

2013年〜継続(2015年で3回目)

【漁師カレンダー】

2013年〜継続(2015年で2回目)

取組体制・組織、財源について

気仙沼つばき会は、気仙沼市内の「女将」を中心として結成された、「気仙沼盛り上げ隊」です(現在参加しているメンバーには、「女将」だけでなく会社経営者や会社勤めをしている人もいます)。

ここが企画を中心的に練り上げ、プロジェクトごとに市内のあらゆる機関を巻き込んで実行・実現します。

財源については、その事業収入のほか、気仙沼市が新しい観光の魅力創造のために出している補助金や企業からの寄付金などを利用しています。

●実施体制の例:「出船送り」実施体制

企画:気仙沼つばき会
協力:気仙沼漁業協同組合、気仙沼市観光課、気仙沼観光コンベンション協会 (その他、メンバーである女将が所属している市内ホテルや水産関連会社も協力に入ります)、気仙沼を母港とするサンマ船の船長、船頭

●「市場で朝めし。」実施体制

主催:市場で朝めし。実行委員会
会長=商工会議所会頭
実行委員長=つばき会会長
副実行委員長=気仙沼市議会議長、気楽会(まちづくり団体)会長
顧問=気仙沼漁業協同組合組合長、目黒のさんま祭気仙沼実行委員会委員長
その他実行委員=気仙沼市観光課・商工課、気仙沼商工会議所、気仙沼観光コンベンション協会、
気仙沼市物産振興協会、気仙沼地域開発、気仙沼つばき会、さかなの駅、ほぼ日刊イトイ新聞、
気仙沼市立病院附属看護専門学校など

今後の展望について
・取り組みの事業化

それぞれの取り組みについて、実施体制などは固まってきており、毎年開催が安定してできるようにはなってきた。一方で、事業で得た収益で次回の開催を担保するという仕組み作りにはまだまだ課題が多いのが現状です。今後は、補助金などがなくても自主開催できるような事業収入を得られる仕組み作りや、実働部隊・事務局体制の整備が必要です。また、気仙沼にしかないコンテンツであるものを、どのように魅力的に見せ、集客につなげるかのブランディング、マーケティング、新しいコンテンツの開発などにも、力を入れていきたいと考えています。

・裾野の拡大

魚市場や漁師関連のコンテンツ(開発)が、市内のさまざまな組織・団体によって双発的につくられていくことを目指しています。ただ、漁業・水産業の業界は、独特のルールや習慣・関係性などもあるため、なかなか新しい人が入って商品開発をするのが困難であるのも事実です。その課題を打破するため、今年の漁師カレンダーの作成事業においては、震災後に気仙沼にIターンで移住し、地域のまちづくり活動を行っている若者団体にも一部事業を担っていただき、人脈やノウハウを伝達していくことにも、尽力しています。

概要と評価のポイント
【概要】

遠洋漁業の基地としての賑いを取り戻そうと、漁師の家族で行う「出船送り」に、一般市民・観光客も含め参加できる仕組みを女性有志で作り上げた。オリジナル大漁旗や漁師カレンダーの販売、魚市場での朝めしイベントなどを通し、観光客増や気仙沼港の水揚げ向上にも寄与。

【評価のポイント】

・大勢の市民が参加しており、そのことが観光客の参加意欲の喚起につながっている。
・見送りの風景を想像すると行ってみたくなる。
・漁師のなり手を見つけるのが難しい中、市民と観光客の両方で明るく漁業を盛り上げており、漁船の方も応えて汽笛を鳴らすなど、民間主体の取り組みとして素晴らしい。

※会社名・団体名は各社・各団体の商標または登録商標です。

※賞の名称・社名・肩書き等は取材当時のものです。

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