NPO法人 おもてなしスノーレンジャー(北海道札幌市)
認定指導員に合格した留学生は、早速2014年3月にテイネスキー場で実施した春休みジュニアスキースクールにおいてアシスタントインストラクターとして指導員デビューを果たした。
2014シーズンは、認定指導員を取得した3名が上海のテレビ局が主催した「ウインターキャンプ」など、母国から訪れるスキーヤーにインストラクターとしてスキー指導を行った。
本プロジェクトは全国でも初めての取組であったことから、プレスリリースの結果、新聞、雑誌はもちろん、 テレビニュースに8回も取り上げられ、うち2回は10分間の特集で放送された。NHKニュースでは、最初は北海道内だけの放送だったが、全国放送の「おはよう日本」でも放送され、さらにNHKワールドで世界中に配信された。これらの報道を受け、次年度の実施に関する問い合わせも多数あり、前年度は資格取得出来なかった留学生からも再チャレンジの申し出があったり、彼らの友人からも参加希望が寄せられた。
また、講習期間中にレッスン風景やスキー場の様子などをスタッフが写真撮影を行い、その写真を毎回留学生へ送付し、留学生の言葉で色々なSNSへの発信を行った。実はこれが大変な作業である。毎回200枚程度の写真を撮影するが、その日の夜に参加した留学生全員に彼らが写っている写真とスキー場や風景の写真を送信するのに、顔と名前が一致するまでは4時間位の時間がかかった。この作業を3ヶ月間毎回続けた。
その結果、中国に会社としてはプロモーションしていなかったテイネスキー場に、レッスン希望のスキーヤーが激増した。
さらに、留学生が発信したSNSをみた上海のテレビ局から、小中学生にスキーを教えるプロジェクトに協力して貰えないかとの要請があり、2月に上海のインターナショナルスクールに通う10歳から15歳の12名が、10泊11日の日程で「ウインターキャンプ」に訪れた。
この要請に対しても、関係者が協力し合いJTB北海道にランドオペレーターを依頼し、ビザ免除になる教育旅行という組み立てにして大成功を収め、次年度は300名の受入要請を受けている。
また、道内企業から資格を取った留学生を職員として採用したいとの要請も多数寄せられており、すでに1名はスキーインストラクターとして就職し、富良野市で活躍している。
このプロジェクトは、2013年5月から着手し、同年10月から募集を開始、初年度は2014年3月に終了した。2年目にあたる2014年も7月から開始し、10月から募集を開始、2015年3月に終了した。
3年目にあたる2015年は、事業を継続して実施していくために、8月に新たに「NPO法人 おもてなしスノーレンジャー」を立ち上げるところからスタートしている。
この事業は、人材育成が主目的なので、今後は「NPO法人 おもてなしスノーレンジャー」が主体となり、長期間に渡り継続して実施する予定である。
『おもてなしスノーレンジャー』育成チーム
・NPO法人 おもてなしスノーレンジャー
・公益財団法人 北海道スキー連盟教育本部
・公益財団法人 札幌スキー連盟教育本部
・北海道スキー学校協会
・札幌市
・国土交通省北海道運輸局観光部
・学校法人 札幌大学
・国立大学法人 北海道大学観光学高等研究センター
・加森観光(株)
・(株)スポートピア
・北海道索道協会
・北海道スキープロモーション協議会
・(公社)北海道観光振興機構
・北海道
1年目については、スキー指導に係る指導員の費用については、北海道スキー連盟が負担し、リフト券についてはシーズンチケットを加森観光(株)から提供いただき、留学生のスキー用具については(株)スポートピアから提供していただいた。
参加した留学生からも参加費14千円を徴収し、スキー連盟の加盟費、傷害保険料、バッチテストの受験料に充てた。
2年目は、前年同様の支援に加え、太陽財団から支援をいただいた。留学生の参加費は2万円に増額。
3年目の今年度は、我々のプロジェクトに賛同してくれた札幌市が活動費の一部を負担していただけることになった。加森観光(株)と(株)スポートピアについては引き続き支援いただける。
※現在3期生を募集中だが、25名の定員に対しすでに40名以上の応募が来ている。
雪に憧れ北海道へ来る観光客は多いが、雪に触れ写真を撮って帰るだけでは、経済効果も小さく、リピーターにも繋がりづらい。しかし、スキーを体験して貰うことが出来ると滞在時間が伸び、経済効果も生まれる。また、指導を受けて滑られるようになれば、リピーターとして北海道を訪問する確率も格段に高くなる。
今後アジアでは、2017年に冬期アジア札幌大会、2018年に韓国ピョンチャン冬期五輪、2022年の中国北京冬季五輪が開催され、ウインタースポーツの注目度が益々増加していくと思われる。
2022年冬季オリンピック開催地選定の最終プレゼンテーションで中国政府は、今後3億人以上の中国国民をウインタースポーツに導くと世界に発信しており、すでに小中学校でスキー授業を奨励していく方針を示している。
世界一のスキー環境を持つ北海道はその需要を取り込み、地域の活性化へと繋げて、北海道を『スキーの聖地』にすることを目指すべきである。
我々は、今後予想される人口減少と、スキー場施設の老朽化によるローカルスキー場の廃止を、留学生スキーインストラクター『おもてなしスノーレンジャー』を派遣することで、アジアで増え続ける初心者スキーヤー(スキー教育旅行やウインターキャンプなど)を取り込むことにより、スキー場を存続させ、地域を活性化させていきたい。そのためには中国語・韓国語などの対応が出来、母国に情報を発信出来るスキーインストラクターの人材育成が重要な課題であると考えている。
外国人スキーヤーのお陰で、減り続けていたスキー客がやっと増加に転じているが、ローカルスキー場にはその恩恵はまだ届いていない。海外からのスキーヤーは、ほとんどが富裕層で、中国ではスキーが滑れることはステイタスであり、富裕層の親達は自分の子供にスキーを覚えさせることに非常に熱心である。初めてスキーをする初心者に安全で楽しいスキーを教えることは、大規模なリゾートスキー場でなくとも可能であり、北海道のローカルスキー場で受入が出来れば、地域の活性化にも貢献出来ると確信している。
今シーズンは阿寒や東川町のローカルスキー場から『おもてなしスノーレンジャー』の派遣要請がすでに来ております!
外国人スキー客受入体制充実、海外からのスキー需要喚起を目的に、北海道スキー連盟やスキー場などの協力を得て留学生をインストラクターとして育成するプロジェクト。留学生によるSNSでの情報発信の効果もあり、アジアの初心者スキーヤーを取り込んでいる。
●語学の出来るインストラクターが不足しているから、留学生にスキーを教えるという発想の転換が素晴らしい。きっかけが、大学の先生の「留学生の就職支援のために、語学だけではなく、資格もとらせたい」という一言だったことにも共感できる。
●中小規模のスキー場を今後救うための素晴らしいアイディアだった。
●今後は、民間が主体となって取り組みを広げていってほしい。
※会社名・団体名は各社・各団体の商標または登録商標です。
※賞の名称・社名・肩書き等は取材当時のものです。