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交流創造賞 組織・団体部門

第11回 JTB交流創造賞 受賞作品

優秀賞

留学生スキーインストラクター
『おもてなしスノーレンジャー』 育成プロジェクト
〜北海道のスキー文化の発展とローカルスキー場の存続と活性化のために〜

NPO法人 おもてなしスノーレンジャー(北海道札幌市)

【プロジェクトの趣旨】

留学生スキーインストラクター『おもてなしスノーレンジャー』育成プロジェクトは、産学官の連携により、留学生にスキーの楽しさを広めるとともに、北海道スキー連盟が実施する「SAH認定スキー指導員」の資格を取得したインストラクターを育成することにより、外国人観光客の受入体制の充実、海外からのスキー需要の喚起、スキー場などの地域経済の活性化に寄与することを目的としたものである。また、今後予想される人口減少とスキー場施設の老朽化により、北海道のスキー文化を支えてきたローカルスキー場の廃止も懸念されているが、留学生スキーインストラクター『おもてなしスノーレンジャー』をローカルスキー場に派遣することで、アジアで増え続ける初心者スキーヤー(スキー教育旅行やウインターキャンプなど)を取り込むことで、交流人口を拡大させ、スキー場の存続と地域の活性化に繋げたい。

【プロジェクトの背景】
(1)北海道観光の現状

我が国は2013年に初めて年間の訪日外国人旅行者数が1,000万人超を達成した。北海道への2013年の外国人来道者数も前年比34%増の101万4,700人と、初めて100万人を超えた(北海道経済部観光局発表)。国・地域別では台湾、韓国、中国、香港、タイの順で、アジア圏からの来訪者が外国人全体の約9割を占めている。

一方で、外国人観光客の入り込みは夏季とさっぽろ雪祭りなどの時期に集中しており、旅行需要の平準化のためにはスノーアクティビティも重要なツールの一つである。

(2)留学生を受け入れている大学では

北海道には世界各国から約2,700名の留学生が来ており、日本と各国との友好関係を深める上で、極めて重要な存在である。

札幌大学の本田優子副学長は、留学生の就職にあたり日本語が出来るだけではなかなかマッチング出来ないので、資格取得などで就職率を上げる方策の必要性を話されている。

(3)スキー場の関係者からは

北海道では、世界が認める「パウダースノー」をキーワードに、官民一体の組織である「北海道スキープロモーション協議会」が主導して、スノーアクティビティの魅力を世界へ発信するプロモーションを展開しているところである。

スキー場関係者は、英語が出来るインストラクターは南半球のオーストラリアやニュージーランドから連れて来れるが、中国語や韓国語が出来るスキーインストラクターが全くいない状況で、海外からのスキー客は増えているが、レッスンを受けたいというニーズに応えられない状況を危惧している。

【プロジェクトの目標】

目標は、北海道を世界中からスキーヤーが訪れる『スキーの聖地』にすることと、北海道のスキー文化を支えてきたローカルスキー場の存続と地域の活性化である。そのためには中国語・韓国語などの対応が出来、母国に情報を発信出来るスキーインストラクターの育成が重要な課題であると考えている。

取り組み内容

【プロジェクトの経緯】
(1)始めるきっかけ

北海道のスノーリゾートには、世界中からパウダースノーを求めて多くのスキーヤーが訪れているが、外国人スキー客に対応出来るスキーインストラクターが不足しており、レッスンを受けたいというニーズに応えられない状況も発生していた。

この状況を踏まえ、問題解決のために日本人スキーインストラクターに中国語をマスターして貰おうと思っていたが、日本人に中国語を覚えて貰うより、外国人にスキーを覚えて貰う方が早いのではと考え、北海道に来ている留学生(中国系が6割)に着目し、外国人スキー客に対するレッスン受入体制の充実、母国への情報発信による海外からのスキー観光需要の喚起、ローカルスキー場の活性化を目的に、産学官の連携による留学生スキーインストラクター育成プロジェクトの立ち上げ準備が始まった。

(2)関係者への協力依頼

まずは、有志一同がプロジェクト準備チームを立ち上げ、骨子案の作成と予算をどう確保するかを検討したが、そう簡単にお金が工面出来るほど世間は甘くなく「予算がなければ、汗をかけ!」との方針で、スキー関係者を中心に本プロジェクトの意義や効果について説明に回った。

しかし、必要性は理解していただけるものの、「スキーをなめてるのか」「全くの初心者が1シーズンで2級を取得出来るわけないだろ」「留学生が、受講料、レンタル費用、リフト代などの費用を負担出来るのか」「公的な支援はあるのか」等々厳しい質問や意見が出され、ほとんど相手にされず、挫折の一歩手前であった。

そんなときに出会ったのが、北海道スキー連盟教育副本部長の三品氏だった。三品氏は71歳とは思えないバイタリティーで北海道のスキーの発展に人生を捧げて来た方で、北海道観光の現状と海外からのスキー客誘致の必要性をお話しし、このプロジェクトが、北海道にも、スキー連盟にも、スキー場にも、留学生にも全てプラスになるプロジェクトであること。そして、北海道のスキー文化を世界に発信する絶好の機会であることを説明したところ、ご理解をいただき、全面協力していただけることになった。

ひとつ壁を突破すると、次はスキー場の協力も得ることが出来た。加森観光(株)のテイネスキー場が会場の提供とリフト券の無償提供を約束してくれた。後は、スキーレンタル用品だが、北海道内の複数のスキー場でレンタル部門を手がけているスポートピア(株)が、留学生には帽子と手袋だけ用意して貰い、スキー用品、ウエア、ゴーグルまで全て無償で提供していただけることとなり、関係者の理解も進み、やっと産学官連携による育成チームが結成される運びとなった。

(3)受講生の募集から検定まで

スキー連盟と相談し育成プログラムと参加費(14千円)も決まりいよいよ参加者募集となった。

はじめの目標は参加者5名、認定指導員には1人でも合格出来ればいいくらいの感じであった。

札幌市内の大学の留学生担当や、留学生関連団体などを通じ参加者を募集したところ、なんと28名もの応募があった。3ヶ月間に渡る長期のプログラムであり、自身のスキー技術習得だけでなく、指導者としてのスキルも身につける必要があるため、かなり厳しい参加条件にしたところチャレンジャーは18名(中国13、台湾4、韓国1)に決定。6時間の理論講習を2回、週2回の実技講習を15回受講し、目標は認定指導員の資格取得である。

留学生へのスキー指導者として、北海道スキー連盟がインストラクターに『技術員』という最高レベルの人達を揃えてくれた。『技術員』の先生達は通常1日2万円以上のレッスンフィーを取れる方だが、我々の取組に賛同し交通費程度の日当で、心のこもったハイレベルの熱い指導を毎回していただいた。

小中学校でのスキー授業が減っており、北海道のスキー文化の衰退を現場で一番感じていた先生達だったので、我々の思いと、この取組の可能性をいち早く理解し協力してくれた。

もちろん留学生にもその熱い思いは伝わった。日に日に上達していくのが感じられると、雪まみれになりながらも、昼のレッスンの時はナイター終了まで、ナイター講習の時には朝から練習しに来て、講習が始まる時には既に膝が笑うくらい努力を重ねた。また、一生懸命練習している姿を見ていたテイネスキー場が、いつ来ても練習が出来るようにと、シーズンチケットを提供してくれた。それにより留学生の練習は益々熱心になり、トータルで40回も練習に通った者もいた。

その結果、2013年度はSAJバッチテスト2級に11名が合格、認定指導員にも6名が合格することが出来た。留学生だけでなく指導した先生達まで、涙涙の合格発表であった。

2014年度もこのプロジェクトを継続した。前年度協力いただいた熱い技術員の先生達、団体、企業の協力も継続していただいた。2014年度は新規24名と継続5名の留学生など29名(中国22、台湾4、香港1、シンガポール1、英国1)がチャレンジし、6時間の理論講習を2回、週2回の実技講習を17回受講し、SAJバッチテスト2級に9名が合格、認定指導員にも11名が合格することが出来た。(前年2級取得済み2名含む)

※会社名・団体名は各社・各団体の商標または登録商標です。

※賞の名称・社名・肩書き等は取材当時のものです。

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