JTB交流創造賞

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交流創造賞 組織・団体部門

第10回 JTB交流創造賞 受賞作品

優秀賞

自転車旅行を支えるおもてなしのしくみ「サイクルオアシス」

特定非営利活動法人シクロツーリズムしまなみ(愛媛県今治市)

2005(平成17)年に12市町村大合併を遂げた今治市。造船・タオルの地場産業に加え、1999(平成11)年に開通した「西瀬戸自動車道(瀬戸内しまなみ海道)」沿線エリアを中心とした観光振興が目指される。本エリアは、開通時200万人と言われた入込観光客数が右肩下がりで減少、かつ、観光施設の見学や農漁業体験メニューの提供はあるものの、通過型観光地である課題を抱えていた。合併を機に、点在する島々の観光資源をつなぎ、島を周遊できる観光行動促進を念頭に、自転車旅行の振興を提唱した。「しまなみ海道」は生活道としての利用側面から、本州と四国を結ぶ橋の中で唯一、自転車歩行者道が設置されている。この独自性を地域ブランドとして育て上げる住民主体の活動の始まりである。自転車旅行の大きな目的である、五感を刺激する移動中の風景の移り変わり、地元住民との交流を資源にサイクリングモデルコースという形で、対外的にアピールする事業を展開。日本では一部のマニアの領域との認識だったサイクリングが、健康にいい、環境に優しいという二大効用に後押しされる自転車ブームもあり、2012(平成24)年の通行量調査では、年間17万5千人のサイクリストが国内外から訪れるエリアに成長した。サイクリング環境の整備として、主要サイクリングロードへの案内看板や道路図像「ブルーライン」の設置といった行政施策の充実も大きい。レンタサイクルで手軽なサイクリングを楽しむ家族連れ、マイ自転車で長距離サイクリングを楽しむ愛好者など、幅広いターゲットに訴求する観光資源として育ちつつある。引き続き、立ち寄り資源の付加価値向上、受入体制整備を官民協働で進め、自転車先進都市である欧州などのインバウンド受け入れも含め、滞在型の自転車旅行産業を形成し、地域活性化につなぐことを目指す。

取り組み内容

2005(平成17)年度から3ヵ年にわたり手づくりした「サイクリングモデルコース」をベースに、自転車旅行のマーケティングを実施した。日本のお勧めサイクリングロードNo.1への選定(日本経済新聞)、スポーツタイプ自転車需要の倍増など、可能性を感じる現象と連動する自転車旅行マーケットの分析結果があがった。2009(平成21)年、マーケットと地域をつなぐ組織として当会を設立、自転車旅行地としてのブランド強化事業を進めている。まず、ニーズが高かった「自転車専用の“しまなみ島走マップ”作製」、橋までの二次交通対策となる「自転車をそのまま積載できる“サイクルトレイン”運行」などに取り組んだ。

活動開始当初は、レンタサイクル利用者が主流で、1〜2時間のミニ体験でのサイクリングが多く、滞在性が低い傾向が指摘されたが、ここ数年、自己保有の自転車(マイ自転車)での来訪者数がレンタサイクル利用者を上回った(2012〈平成24〉年通行量調査)。マイ自転車でのレジャーサイクリング愛好者は、自由なペースで地域を巡り、地域の人との交流を楽しんでおり、サイクリスト往来が日常の風景となっている。

レジャーサイクリング愛好者に好評な取り組みの一つが、地域住民が軒先を休憩所として提供する「自転車休憩所“サイクルオアシス”」である。自動車の旅と違い、ルート(道)を楽しむ自転車旅行者にとっては、地元情報を得られ、休憩しながら交流歓談できる空間として定着した。このしくみは、マーケットから寄せられた「トラブル対応(バックアップ機能)」への対応策から生まれた。過疎高齢化が進む島しょ部には、自転車専門ショップがなく、トラブルの代表格・パンク修理を担う業者がいない。試行錯誤の中、2011(平成23)年、「できることからはじめよう」と、雨天時のバックアップ、情報提供からはじめたものだ。給水、空気入れの貸し出し、トイレの提供はビギナーサイクリストに支持され、やりがいをもって担う住民が増えた。パンクなどのトラブルにも対応できればと、パンク修理講習会を実施し、スキルを取得したり、島内の自動車修理会社の参画を得たりして、サポート機能強化面も日々、進化している。2012(平成24)年には島しょ部の取り組みを今治市臨海部にも拡充。2014(平成26)年には、隣接市・松山市につながる国道196号線にもさらに追加整備した。現在、95軒のオアシスが点在しており、オアシスを巡りながら、地域とのつながりを体感するスタイルも見られるようになった。

前述の通り、「できることからはじめよう」との善意からはじまった取り組みで、住民の有志の自発的精神で運営が成り立っている。自らの専門性をいかしたサービスを実施するなど、工夫も生まれる一方で、一次産業従事者、サービス業、定年退職者など、担い手は多様であり、意識統一やモチベーション維持が課題として浮上している。また、一般市民には無関心層も多く、増加するサイクリストの走行マナーなどへのマイナス感情が見られる側面もあった。そこで、多様なオアシスの担い手の思いを一般市民に啓発すると共に、個々の発意を共通サービス化するなど、共同運営への体制変更を目指している。

取り組み①各オアシス見学会の実施

一般市民の希望者も交え、地域情報の把握などの学習を進めている。
サイクリストを交えてのニーズ把握、展望共有の機会となっている。

取り組み②オアシス新聞の作成

オアシスの担い手の思いを分かりやすく伝える広報誌を作成、配布。
サイクリストの立ち寄り、新たな担い手参画に努めている。

※賞の名称・社名・肩書き等は取材当時のものです。

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