JTB交流創造賞

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交流創造賞 組織・団体部門

第10回 JTB交流創造賞 受賞作品

最優秀賞

集落人口2人!!限界集落の挑戦

小原ECOプロジェクト(福井県勝山市)

福井県勝山市小原集落は、恐竜渓谷ふくい勝山ジオパークと白山国立公園のエリアに属し、地形・地質遺産、豊かな自然環境に恵まれた山村である。かつては、林業や炭焼き等の生業が盛んに行われていた豊かな自然に囲まれた限界集落である。

小原集落は、明治24年には93戸の家屋(535人が居住)が存在していたが、山間の豪雪地帯のため近年急速に過疎化が進み、現在は15戸の家屋が残り、現住は2戸のみでその他は空き家状態となり、集落や森林経営の崩壊の危機に瀕している。

山村生活体験の拠点として古民家を修復し、農家民宿として活用することにより都市住民との交流の促進による地域の活性化を図り、小原集落の文化や生活様式を後世に伝え、自然資源は的確なルールのもとに保全・保護、活用し未来への財産として残すことを目的に小原ECOプロジェクトは設立された。

地元大学との連携や各種交付金等を活用し、古民家再生や山村景観の維持を目指しており、小原集落を含む北谷町一帯の自然遺産、歴史遺産、産業遺産等とリンクしながら、農家民宿を核としたエコツーリズムやジオツーリズムの提供の場所として、交流人口年間1,200人を目標に掲げ毎年活動を行っている。

人口減少、少子化、超高齢化社会の中で限界集落の存続は非常に厳しく淘汰されるものと考える。その中で住民=0人、廃村、消滅に至る結果、その後の地域・集落の文化や自然環境の継承や保全・管理の主体はどこに置かれるのか、国土の空白地帯の増加を招く可能性は否定できない。近い将来に住民が存在しなくても交流コミュニケーションを通じての地域マネジメント、活動の展開で地域文化や自然環境を未来資源として残すことを目指したい。

取り組み内容

小原ECOプロジェクトは、地域資源の有効活用を図り、多様なエコツアーにより地域や都市、海外等の様々な人たちとの交流を通じて、観光振興、地域振興、環境保全に取り組んでいる。

■活用資源

①人の営み(歴史・文化、産業) - Socio -
・白山麓に共通する地域文化
(古民家〈大壁造〉、民具、生活様式)
・越前禅定道、しし垣、集落景観 等

②生態系 - Bio -
・ブナ群生林、動植物、林産資源 等

③地形や地質 - Geo -
・大長山、赤兎山、清流・渓谷、鉱山跡、化石 等

■具体的な内容

①古民家再生による交流人口増加のための拠点づくり(平成18年〜)

小原集落には、滝波川が浸食した傾斜地に明治時代に建築された古民家が残されている。それらは、現在使われなくなり、老朽化が進み保存することすら困難な状況にあった。地元の福井工業大学の吉田純一教授(建築学)が当集落を訪ねたのを契機に、研究の対象として古民家の再生・修復作業がはじめられた。これまでに学生の手により、古民家6棟、休憩所1棟が再生されている。これらの古民家再生は、福井工業大学の交流に留まらず、それらの古民家を拠点としたエコツアーが活発に行われている。農林業体験、山菜採り、豪雪体験ツアー、沢登り等が1年を通してコンスタントに再生古民家を活用しながら行われている。

②地域環境保護協力金の導入による登山旅行者の意識と利便性の向上(平成19年〜)

小原集落は、1,000m超えの加越山地(赤兎山、大長山等)の登山道入口としての役割を担っている。近年の山ガール・ボーイを中心とした登山ブームも重なり、登山者も大幅に増加している。一方で、それらの現象は、林道や登山道の荒廃や自然資源の盗採、不法投棄等の問題をこの地域にもたらすこととなった。これらの問題を解消するために導入されたのが、地域環境保護協力金である。協力金は、小原集落の豊かな自然と独自の文化の保全・保護するために徴収され、登山道の整備費や維持管理費、自然保護活動のために使用されており、登山者のマナー等の意識の向上と登山者の利便性向上に役立っている。

③希少種ミチノクフクジュソウの保全活動を通した交流(平成20年〜)

小原集落のある標高500m前後の田畑の畦畔部やスギの伐採跡地等には、ミチノクフクジュソウ(キンポウゲ科に属する春植物)が生育している。福井県では、この地域のみ自生が確認されており、とても貴重な植物であると言える。かつての人々による農耕(焼畑農業)活動が、結果的にミチノクフクジュソウにとって好適な環境(土壌)を維持してきたものと考えられる。

しかし、高齢化による田畑の耕作放棄や盗採により一旦はその数が激減した。この一帯のミチノクフクジュソウが絶えてしまう危機にさらされたが、現在は地元のNPOや小学生が草払いや採取禁止の看板設置等の保全・保護活動が行われ、再生・増大して大切に守られている。この群生地は、こどもたち向けの自然観察、環境教育の場として提供、活用されている。

④地域自然をフルに活用したエコツアーによる交流人口の増加のための取り組み(平成17年〜)

前述の修復した古民家を拠点として、小原集落に点在するジオ資源、バイオ資源、独自の歴史文化資源等をフルに活用して、一年を通じて、地域に責任を持ったエコツアーを行っている。

・集落を囲む森林を活用しての植林や間伐作業等の林業体験
・山菜採りやキノコ菌打ち体験、炭焼き等の独自の山村文化が体験できる生業体験
・有数の豪雪地帯で行う雪かき、和かんじきトレッキング等の豪雪体験
・山菜、地元食材、シシ鍋等の郷土料理の提供
・古道や山道を再生した地域のジオ資源や自然資源、歴史文化的資源を巡るガイドツアー
・国内外のNPOと連携による、外国人を対象とした日本の山村、文化を学ぶためのボランティアツアー等を行っている。

※賞の名称・社名・肩書き等は取材当時のものです。

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