JTB交流創造賞

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交流創造賞 組織・団体部門

第9回 JTB交流創造賞 受賞作品

優秀賞

八女の町家で暮らそっか?
−町並みの輝きを再び取り戻す人々の挑戦

八女文化遺産保存・活用ネットワーク(福岡県八女市)

取り組みによる効果

○空き家への移住者等の受入れはこれまで33軒で、形態は店舗、店舗兼住宅、工房兼住宅、工房兼店舗、住宅専用など様々である。とくに、経営のため2階に住まって1階が店舗や工房のケースが結構多い。20代後半〜40代までの年齢層が多く、ほとんどが市外からの移住者である。空き家が埋まり、魅力的な活用が増えたことで、来訪者も徐々に増え、また、人口減少の歯止めになりつつある。さらに、移住者の家族が地域の行事へ参画することにより、住民との良好なコミュニティの継承に貢献する形となっている。

○伝統構法を駆使した町家等の修理事業の継続的実施により、良好な町並み景観が徐々に蘇っている。また、職人などの技能者の後継者も少しずつ増えてきている。町並みの歴史的建築物は、約200棟あり1995年の保存整備事業導入から現在まで、約100棟の事業の実績を上げている。また、市町村合併により黒木町の重伝建地区でも八女福島の活動が伝授され、事業の推進に貢献している。

○大規模な歴史的建築物である旧八女郡役所の再生・活用は、これから本格的に官民協働で取り組まなければならないが、これまでの広報活動により、市民の関心も高まってきている。そして、映画「まちや紳士録」にも旧八女郡役所の課題が盛り込まれており、完成上映によりさらに多くの方々の関心が高まってきた。

○若者がまちづくりに参画することが重要で、白壁ギャラリーの企画実施により、地元の老舗の青年と移住者の若者の交流が活発になり、特に店舗経営などについて、情報交換ができるようになっていて、新しい展開につながろうとしている。

これまでの取組期間、継続期間について

1.町家再生応援団は、2003年(平成15)に発足し、空き家の斡旋、移住者の受入れについては、発足から今日まで日常的に活動を続けている。

2.町並みデザイン研究会は、2000年(平成12)に発足し、歴史的建造物などの修理事業の相談業務、設計及び施工業務は、発足から今日まで持続的に活動を続けている。

3.文化振興機構は、2003年(平成15)に発足し、2007年頃から大規模な歴史的建築物である旧八女郡役所等の再生・活用にむけて、継続的な活動を続けている。

4.白壁ギャラリー企画室は、2009年(平成21)に発足し、白壁ギャラリーの企画イベントを発足から毎年秋に継続的に続けている。

取組体制・組織、財源について
1.町家の再生・活用

町家再生応援団は、14名の会員で活動しており、八女福島町並み保存会(=住民組織)及び行政と連携を強化して、空き家の調査把握、ホームページでの情報発信をしている。活動はほとんどがボランティアであるが、仕組みの充実を図るための財政の確保は、行政と協働を追求することで、支援を得ることがある。

2.町家の修理等の技術の継承

町並みデザイン研究会は、市内の建築士、工務店、大工等の職人53名の会員で活動しており、住民組織及び行政と連携を強化して、町家等の修理事業の相談業務をボランティア活動として行い、設計・施工業務は公益的仕事として従事しながら生業の一部として定着している。活動資金は、会員からの寄附を受入れている。

3.大規模な歴史的建築物の保存再生

文化振興機構は、15名の会員で活動しており、住民組織及び行政と連携を強化して、保存が困難な大型の歴史的建築物(旧八女郡役所、旧寺崎家)に特化して保存・再生の計画づくりを進めている。活動はほとんどがボランティアであるが、具体的な修理事業を実施する場合は、市の補助事業への要請及び自己資金確保のための市民募金活動を模索している。

4.八女福島の情報発信するイベントの仕掛け

白壁ギャラリー企画室は、20名の老舗を引き継ぐ青年達や移住してきた若者が会員となり活動しており、伝統や歴史を大切にしつつ、その中から新しいものを見つけていく企画を練って町並みを歩いて楽しめるイベントを企画実施している。活動資金は、主に会費等でまかなっている。

今後の展望について
1.町家の再生・活用

町家の再生、活用は全国的な課題で、全国町並みゼミ(NPO法人全国町並み保存連盟)や全国町家再生交流会(京町家ネット)で、他団体との情報交換などを強化する。そして、空き家の所有者による修理、活用が困難なケースが増えるのに対応すべく、所有者に代わり修理、活用を推進する仕組みの充実を模索している。最終的には、修理、活用に持続的に回せる資金として、市民ファンド創設を目標としている。

2.移住者の受入によるコミュニティの担い手づくり

八女福島のまちを好きになった移住者を積極的に受入れ、町家の新しい住まい手として継続的なサポートを行い、地域のコミュニティの担い手を多く育てることが重要と考えて取り組んでいる。

3.大規模な歴史的建築物の再生・活用

地域の誇れる歴史、大切な記憶である旧八女郡役所等の歴史的建築物を来訪者と住民の交流の拠点として、再生・活用を行うことが目標である。

4.町家の修理などの技術の継承

伝統構法の技術を次代に継承する仕組みづくりや職人の育成が急務で、重伝建地区にとどまらず、地域に存在する多くの歴史的建築物の保存再生をも考慮した活動も展開したいと考えている。これらは全国的に深刻な問題で、「作事組全国協議会」(伝統構法の技術・技能者の集団としての全国組織、2009年設立、京都の京町家作事組が事務局)を中心に、全国的な連携を推進しつつ、歴史的建築物の修理・利活用の推進のため、建築基準法をはじめとした法制度の改正の運動を持続的に強化する。また、技術・技能者の仕事を確保するため、伝統技術と共に地場産材を使った一般住宅の普及を官民協働で推進する。

5.八女福島の情報発信するイベントの仕掛け

八女福島白壁ギャラリーを、さらに老舗や移住者及び市外の応援団の若者を集め、来訪者が参加・体験型の八女を代表するイベントに充実させていく。

評価のポイント

八女市はかつて福島城の城下町であり、交通の要衝として、また様々な商工業の中心地として発展し、かつては重厚な商家が軒を連ねていた。それが御多分に漏れず近代化と共に改築、取り壊しの流れとなってきた。その動きに対し20年近く前から街並みの保存運動が始まり、保存だけでなく、新たな活用に向けた取り組みに実績を積んできた。それは形の保存だけでなく「まちや紳士録」という映画を自主制作し、地域の心意気を保存し伝えようとする素晴らしい活動である。

※賞の名称・社名・肩書き等は取材当時のものです。

受賞作品

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