JTB交流創造賞

  • トップページ
  • 受賞作品
  • 第15回JTB交流創造賞選考委員

受賞地域のいま

受賞地域はいまどのような取り組みを進めているのか、観光経済新聞社さんにリポートいただきました。

この記事をプリントする

負の遺産を町の宝に!「尾道空き家再生プロジェクト」

外国人客も数多く宿泊するゲストハウス「あなごのねどこ」

瀬戸内らしい港町の尾道。坂の町の狭い路地に寄り添う家々が、懐かしさを覚える日本の原風景を醸し出してきたが、ここにも空き家・廃屋の増加という問題が進んでいた。その故郷の風景を守るため、スクラップ&ビルドをするのではなく、地域の人の手で再生し、外部の学生たちも一緒になって楽しみながら街並みの保全と空き家の新たな活用に2007年から取り組んでいる。
2009年からは尾道市と恊働で「空き家バンク」も開始した。民間のフットワークの軽さを生かして利用しやすい窓口へと進化させ、空き家が新たな担い手の手に渡っていった。
地域の理解も深まり、空き家の提供者は倍増した。尾道市も新しく空き家の補助制度を新設してくれるまでに至った。
また、ゲストハウス「あなごのねどこ」をオープンしたことで、尾道を訪れる若者や外国人観光客も増加している。

JTBとの連携は街全体で

改装中の第2ゲストハウス
改装中の第2ゲストハウス

NPO法人尾道空き家再生プロジェクト代表の豊田雅子氏は、JTBで海外旅行添乗を8年ほど経験。大阪から地元の尾道に戻り、今の活動を始めた。「ヨーロッパの国々を回り、向こうの街並みをいろいろ見てきた。街づくりや景観を大事にする姿勢や考え方は非常に勉強になった」と振り返る。日本の街づくりは遅れていると感じていた。「尾道ぐらいの規模ですごく素敵な街はたくさんある。尾道も地形や歴史、建物など良いものを持っているのに全然生かされていなかった。それはもったいないなと思った」と話す。

活動を始めた07年当時、中心市街地から約2キロメートル圏内に500軒ほどの空き家があったと言われている。尾道空き家再生プロジェクトの活動で、人が住んだり、店舗となったりして、これまで100軒近くの空き家が生き返った。

現在、居住希望者は30代を中心に数多く、状態の良い空き家があればすぐにでも住んでもらえるような状況。空き家再生活動は順調だ。家主と居住希望者をマッチングする、尾道市と共同展開の「空き家バンク」の実績も上がっている。

斜面に建つ尾道の家々斜面に建つ尾道の家々

同プロジェクトでは、空き家を再生して運営しているゲストハウス「あなごのねどこ」に続いて、来年2月をめどに二つ目のゲストハウスをオープンする予定だ。場所は有名な千光寺の真下で、観光客が多く通るルート上でもある。以前は旅館を営業していた建物で、借り手がなく10年以上空き家になっていたため、最終的に同プロジェクトが活用することにした。登録有形文化財として認めてもらい尾道市から補助を受けて、改修している最中だ。

今の課題は、これまで旅館や病院、蔵などに使われていた大きな空き家をどう再生していくか。住むだけでは広すぎるため、今後しっかり維持していける仕組みまでを考えないと本当に再生したことにはならない。広ければ工事費もかかるため利用者は限られる。

JTBとの取り組みとしては、交流文化賞を受賞した13年度の少し前から、団体・グループ向け「地恵のたび」のコースの一つとして商品化されている。空き家を活用した街づくりの現場を見学するという、学びの企画だ。

今後のJTBとの連携について豊田氏は「私たちの団体の活動は観光がメーンではない。ツアーを組んでも尾道の街は大きなキャパシティがなく、坂道も多いため集客は難しいかもしれない。だが、尾道は、日本遺産に選定されてもいて、魅力のある街。空き家の再生などで活気づいている。尾道全体の街づくりに取り組む形でのJTBとの連携はいろいろ考えられる」。

JTB交流文化賞は、地域に根ざした持続的な交流の創造と、各地域の魅力の創出、地域の活性化に寄与することを目的に創設された。「観光」ではなく、「交流」を切り口とする。これまでの受賞地域の中には、尾道の事例のようにJTBとの連携の接点作りが難しい団体・地域がいくつかあった。だが、JTBは、観光地づくりの団体・地域だけではなく、こういった街づくりを進める団体・地域に対しても、持続的な成長を後押しする取り組みを推進している。

NPO法人尾道空き家再生プロジェクト代表 豊田氏
NPO法人尾道空き家再生プロジェクト代表
豊田氏

交流文化賞受賞の声

活動を知ってもらえる

NPOなので資金集めが非常に大変。いろいろな補助金に申請を出している。そういう中でJTB交流文化賞の存在を知り、賞金がいただけることもあって応募してみた。賞金はすべて空き家再生活動に使わせていただいた。
実際に受賞してみて分かったのは、私たちのような地方の活動を多くの人々に知ってもらう大きなきっかけになるということ。地域活性化に取り組んでいる他の地域の人たちとの交流も生まれる。

※賞の名称・社名・肩書き等は取材当時のものです。

受賞作品

  • 受賞地域のいま
  • 受賞地域の取り組み
  • 交流創造賞 組織・団体部門
  • 交流創造賞 一般体験部門
  • 交流創造賞 ジュニア体験部門

JTBの地域交流事業