JTB交流創造賞

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受賞地域のいま

受賞地域はいまどのような取り組みを進めているのか、観光経済新聞社さんにリポートいただきました。

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コウノトリも暮らすまちへ 豊岡の挑戦

「コウノトリの郷公園」で飼育されているコウノトリ

豊岡市で1955年から官民一体となったコウノトリ保護運動が始まる。71年に国内の野生のコウノトリが絶滅。1989年、ロシアから受贈したコウノトリによる人工飼育で待望のヒナが誕生し、以後、毎年ヒナが誕生する。100羽を超え、野生復帰に向けて2005年に初の放鳥が行われた。
2002年、市はコウノトリをシンボルとしたまちづくりを推進するため、コウノトリ共生推進課(現コウノトリ共生課)を設置。コウノトリも住める自然再生とセットで農村の美しい景観づくりを推進し、電柱の地中化、農道への植花運動も展開していった。
選考では「コウノトリを単に復活させただけでなく、農業、食、地域のあり方など、地域全体を蘇らせた示唆に富んだ取り組みである。地域住民が一体となり自然環境を守っていく、未来志向型の交流文化の取り組み」と高く評価された。

観光が地元の連携強化

ガイドとともに自然観察
ガイドとともに自然観察

豊岡市内では、飼育されたコウノトリを「コウノトリの郷公園」で観察できるほか、田んぼで羽休めをする野外のコウノトリも目にすることができる。コウノトリの郷公園の来場者は昨年30万人を数えた。野外で暮らすコウノトリは83羽(8月21日現在)で、その行動範囲は広く、これまでに北は青森県から南は鹿児島県まで37府県で飛来が確認されている。

JTB交流文化賞を受賞した05年は、初めての放鳥が話題となった年でもあり、これを機にコウノトリを目当てに豊岡市に訪れる人が増加した。市ではその当時、コウノトリを地域づくりに生かすとともに、「豊岡市環境経済戦略」を策定し、コウノトリを観光に結びつける方向性を示していた。受賞の翌年からJTBと一体となったプログラム作りが始まる。この取り組みを通して、豊岡市がいわば「コウノトリツーリズム」を推進するうえでの大きな土台が築かれていった。

最初に出来上がったJTBの旅行商品は、閑散期である4〜10月にコウノトリを見て、城崎温泉に入ってもらう団体ツアー。コウノトリの餌場ともなる水田環境を創るために生きものとお米を同時に育む「コウノトリ育む農法」で栽培したお米をツアーの中で食べてもらおうという企画内容だった。豊岡市企画部コウノトリ共生課主査の宮垣均氏は「観光客が来てくれることによって、地域をもっと良くする仕組みができないかと考えて作った」と振り返る。この考えは旅行商品やプログラムのすべての根底に置かれている。

2年間のガイド養成講座を行った後、08年からは本格的にコウノトリのガイドを開始。「JTBの企画担当者と『見て分かる自然と伝えて分かる自然とがある』とよく話をしていた。その発想から単なる観光ガイドではなく、そこにあるものを説明するインタープリター的なガイドにしたかった」と宮垣氏は打ち明ける。

戸島湿地での環境保全作業戸島湿地での環境保全作業

旅行プログラムに戸島湿地での生物多様性保全貢献作業を加えたのは10年から。コウノトリが生息するために、餌となる数多くの生き物が棲む湿地に整備する。「最初の頃は、お金を払い、わざわざ泥だらけになって汗をかきに来る人はいないのでは、と思ったが、さすがJTBは参加者を見つけてきた」(宮垣氏)。人数はそれほど多くはなかったが、ボランティア目的での来訪者があるという事実は環境保全活動に携わる人たちの大きな自信になった。今では、NPO団体がツアーの募集ができるまでに戸島湿地でのボランティア数は増えている。

こうしたJTBとの一連の旅行商品作りの取り組みは、地元の旅館組合、観光協会、JAといった市内の各種団体が連携するきっかけにもなった。

環境学習プログラムに関して豊岡市では、さらにアカデミックな要素を強め、大学の研究者やゼミの団体、さらに小中高の修学旅行も含めた学校関係の集客を増やしたい考え。研究者、ゼミが持っている多彩な知恵が豊岡のまちづくりや自然環境再生に生かされるのが理想だ。12年7月には「円山川下流域・周辺水田」がラムサール条約湿地に登録。これを生かしたツアーも検討されている。

宮垣氏は「自然環境を守るために地域貢献につながる作業はずっと続ける。だが、毎年同じことをしていると地域全体の士気が下がるので、常に新しいスパイスを付け足しながらやっていきたい。我々だけではできないところもあるので、今後もJTBの協力に期待している」と語る。

豊岡市企画部コウノトリ 共生課主査 宮垣氏
豊岡市企画部コウノトリ
共生課主査 宮垣氏

交流文化賞受賞の声

”宝探し”あきらめない

視察しに来た人から「コウノトリがいるからいいね」とよく言われる。豊岡は地域にある宝がたまたまコウノトリだっただけ。どこの地域にも歴史や昔からの生活、文化など地域独自の宝があるはず。
豊岡は初の放鳥で話題になった05年以前の30数年はほとんど知られていない。地域の宝を見つけ出してうまく磨いていく。それをあきらめないでずっと続けていけるかどうかが一番大切なことだと思う。

※賞の名称・社名・肩書き等は取材当時のものです。

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