JTB交流創造賞

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交流創造賞 ジュニア体験部門

第15回 JTB交流創造賞 受賞・入選作品

中学生の部

入選

夏休みの出来事

後藤 景(場所:東京)

フランスで知り合った友人が日本に来ると連絡があったのは、夏休みの二ヶ月ほど前のことでした。父親の転勤で滞在していたフランスのインターナショナルスクールで知り合ったイタリア人の友人です。彼は、同じ学校に通っていた兄と親しかったことから、お互いの家に泊まりに行ったり来たりするような関係で、いつの間にか話す機会が多くなり、僕よりも年上なのに友人になりました。彼が日本に訪れるのは初めてだと聞いたので、外国にはない、日本らしい場所や物を見せたいと思いました。お寺や神社、エッフェル塔のような東京タワーや世界で二番目の高さがある東京スカイツリー、自分が通っている日本の学校や美術館、近所のスーパーマーケット、日本の郷土品の店などを見せたいと思いました。僕が両親にこれらのアイディアを伝えると、一緒になって計画をたててくれました。それは、両親も彼の家族と親しかったからです。両親からはお台場や秋葉原といった現代的な場所が提案されました。

再会する当日、家族そろって待ち合わせの場所に向かいました。僕が彼と最後に会ったのは、フランスから帰国する直前だったので、会うのはおよそ一年半ぶりです。到着すると、すぐに彼の懐かしい笑顔が、僕の目に飛び込んできました。強い握手をしながら「景、元気だった。」と優しくたずねてきました。以前より身長は高くなっていたものの、優しい笑顔は昔と変わらないと感じました。

僕らは地下鉄に乗って浅草を訪ねることにしました。フランスに比べて、とても清潔で、ゴミが落ちてないことに驚いていました。また、地下鉄の車両が木で作られたようなデザインだったことから、日本の文化は素晴らしいと感激していました。浅草に到着し、雷門を抜けて、正面に浅草寺が見えてくると、「アンコワイヤブル」(信じられない。凄い。)と写真を撮っていました。境内の中心にある線香を焚いているところで、たくさんの人が手で煙を仰いでいる姿を見て「何をしているのか。」と僕に尋ねてきました。煙を体の悪いところに当てると良くなることを説明すると、彼と彼の家族みんなが煙を腕や頭にかけていました。外国の人が、日本人と同じようにしている姿を見て、これまで以上に親しくなったように感じて嬉しくなりました。

滞在中、彼が一番驚いていた場所は、日光東照宮でした。僕は、建物や「見ざる、言わざる、聞かざるの猿の彫刻」、建物に彫られている模様の特長や色などに驚くと思っていましたが、彼が関心を示したのは違うものでした。参拝する人が、建物に入る前に、靴を脱いで靴箱に揃えて入れていたことです。フランスでは、家の中に入っても靴を脱がずに生活する人がほとんどです。靴を脱いだ上に、靴を揃える日本人の礼儀正しさに感心していました。一方で、イタリア人の家族が怒り出した場面がありました。境内を走り回り、大声で話しているイタリア人を見たときでした。神聖な場所で、マナーを守らない人がいること。それが自分と同じイタリア人の観光客であることを恥ずかしいと思っていたからでした。その言葉を聞いて、自分も外国で、日本人から同じように見られないようにマナーを守り、その国の文化を傷つけないようにしようと思いました。

イタリア人の友人家族と一緒に旅した数日間は、発見の毎日でした。いつも生活している時と同じものを見ているのに、まるで違う街を旅しているような気持ちになりました。外国人の友達と一緒にいることで、いつもとは違う視点で自分の国を見たことができたからです。旅は人を成長させるといいますが、僕はこれまで旅とは一人で行くものだと思っていました。友人家族との旅を通して、人と一緒に旅をすると自分だけでは発見できないことを見つけることができると思いました。僕と友人が大人になったら、二人だけで旅をして、また新しい発見をしたいと思います。

※文中に登場する会社名・団体名・作品名等は、各団体の商標または登録商標です。
※本文は作品原稿をそのまま掲載しています。
※賞の名称・社名・肩書き等は取材当時のものです。

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