JTB交流創造賞

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交流創造賞 ジュニア体験部門

第15回 JTB交流創造賞 受賞・入選作品

中学生の部

入選

「そこどこ?」から始まる家族旅行

鈴木 佑(場所:アジア)

「そこってどこ?」我が家の旅行先を伝えるとだいたいの友人にそうたずねられます。普段休みを取ることが困難な両親は、1年に1度家族で旅行を企画します。

大体5月になると母から「この国に行こうと思うんだけどどう?」と家族会議を持ちかけられます。僕達もそこどこ?と思うような場所がほとんどで、壁に貼ってある世界地図で場所を確認するところから家族旅行はスタートします。まず、自分達で旅先の情報収集を始めます。旅行雑誌や旅行記を見たり、社会科の教科書、地図や図書館に行って写真集を見たりすると、もうすぐ旅行に行くと言う実感がわいてきます。

そうして家族旅行にワクワクしていて盛り上がっている時、同級生から予想外の質問にモヤモヤした事がありました。「どうしてアジアみたいなゴミが落ちてて汚くて貧しくてごちゃごちゃしているところなんか行くのかわからないよ。ハワイは綺麗で、ご飯が美味しくて安全な場所だよ」と言われました。僕はハワイに行った事がなくて比べる事ができず、なんと言って良いかわかりませんでした。モヤモヤしながら、両親に話す事ができずとうとう旅行に出発しました。

現地に到着し、ホテルに移動する車の中でモヤモヤの原因である同級生との会話の話しをしました。すると母は「ハワイはとても良い場所。だけど、日本人にとってはとても重い歴史のある場所なの。帰ったら勉強して、同級生にも教えてあげて。」と言われました。何故いつもアジアなのかと言う問いかけに対しては、「綺麗で美しい所は大人になって友達や大切な人と行ってみて。家族で旅行ができる間は家族でないと行けない場所に行きたいの。こんな旅を友達としたら喧嘩しちゃうでしょ。」と答えました。

その会話はプノンペンから車で4時間、英語も日本語も通じないドライバーと水牛や鶏・野犬しかいない真っ暗な未舗装の道を車でガタガタと進んでいて、いつまで続くのかと不安な状況でしているので、母の言う事を心から実感しました。

僕ら家族の旅行はいつもこんな感じで、飛行機の座席が自然にリクライニングがしてしまい怖がる姉を笑ってみたり、上流にある川の中の遺跡に行ったりと、とても記憶に残る旅をしています。

アジアの旅では、目を背けたくなる光景も広がっています。プノンペンで見たビニール袋のゴミ溜めに座りこむ子供達、ラオスで見た自分より小さな子供達が働く姿、フィリピンでは海の中に投げられたお金を我先にと拾う子供達の姿も見ました。そんな子供達を救おうとする大人の姿も知る事ができました。

ラオス・カンボジアはストリートチルドレンの就労、教育を目的にしたレストランに行って食事をしたり、そのNGOのスタッフさんにフェアトレード商品を旅先で買う「良識のある旅行者」であることの重要性を教えてもらいました。そして、カンボジアでは、日本の医師がカンボジアの施設で働き、カンボジアの医療水準の向上の手助けをしている事を知りました。

これらの事は、現地のガイドさんから教えてもらいました。自分の国のことを僕達に知ってもらいたいと僕達の質問に一生けん命答えてくれました。今までの体験や教えてもらった事から、今までは想像でしかなかった事柄がしっかりと僕の中に根付いたと思います。

今年の渡航先のラオスにあるアンパパーンでは不発弾処理プロジェクトビジターズセンターを見学し、ベトナムやカンボジア以外にも戦争の悲劇があった事を知りました。ガイドさんからラオスの負の歴史を教えてもらい、実際に訪れたことでより深く理解できました。

僕にとっての旅の思い出は、知識として知った事柄に、実際に体験したことを色付けした旅行記です。

今年一番は現地のガイドさんに教えてもらった名前のない食堂で「ここがNo1レストラン」と言った父の言葉に、真っ赤な顔で大喜びでありがとうと言った食堂のおばさんの笑顔です。

※文中に登場する会社名・団体名・作品名等は、各団体の商標または登録商標です。
※本文は作品原稿をそのまま掲載しています。
※賞の名称・社名・肩書き等は取材当時のものです。

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