西幹 彩乃
今年の夏、私はカナダに二週間の短期留学に行った。目的地である学校の寮につくまでの間、たくさんの人に会った。そのほとんどの人が目があった瞬間、ニコッとほほえみ、
「Hi!」
とあいさつをする。日本ではあまり見かけないことだったため、私はあいまいに笑い返してごまかすことしかできなかった。寮につき、これからはじまる生活への不安と日本国外の友達ができる、という期待とが入り混じってうずをまいているなか、寮での最初の食事にいった。食堂に入った瞬間、一人の女の子がほほえみながら、
「Hi! What‘s your name?」
と話しかけてきてくれた。しかし私は驚きと緊張から、かろうじて自分の名前を言えただけだった。相手に申し訳ないな、と思っていたが、相手の子は英語で
「私はリサ。よろしくね。」
と言ってくれた。このことをきっかけに、私はこれからは積極的に笑顔で話しかけていこう、と思った。
しかし、現実はそうあまくはなかった。なぜなら、日本人にはない勢いに圧倒されたからだ。その結果、最初の三日間は話しかけられるのを待ってから、友達になる、というような流れでしかできなかったため、全然友達がいなかった。しかし、そのことから学んだこともあった。友達になるためにすることはあまり多くない、ということだ。それは、笑顔であいさつをし、喋ること。それぐらいならできるかも、と思い、翌日から頑張ってみることにした。
最初は名前がききとれなかったことで怖気づいてしまい、ききかえすことすらできなかった。しかし相手が笑顔で話しかけてくれたため、そのあともなんとか喋ることができた。だから、友達になることもできた。回数を重ねていくにつれて友達が増えたことにより、自信ができ、自分からもっと喋りかけることができるようになった。
あっという間に二週間がすぎ、ついに帰る日になった。友達にお別れを言い、空港に向かって出発した。
途中のフェリーで女の人にあいさつをされた。あいさつをかえすと、
「これから何をするの?」
ときかれたので、
「日本に帰る。」
と答えることができた。
「私も日本に行ってみたい。」
と言われたときには、
「ぜひきてください」
といい、私のおすすめの京都の話をした。
笑顔で一言言うだけで、きっとその人とはつながることができると思う。それのくり返しで、世界はもっともっと笑顔が増えるのではないだろうか。だから私はこれが小さなことだとしても、これを続けていきたいと思う。
後日、友達と約束していた花火大会に出かけた。電車ののりかえの時、一人の外国人の男性に会った。彼は目が合うと、笑顔であいさつをしてくれた。私も笑顔であいさつをした。その時、カナダからの帰り道話しかけてくれた女の人を思い出し、私も勇気を出して
「どこにいくんですか。」
ときいてみた。すると、
「雷門にいきたいが、よくわからない。」
という答えがかえってきた。口頭で説明してもよかったのだが、花火大会に行くための通り道だったので、
「一緒にいきましょうか。」
と言った。すると、
「ぜひ。」
という答えがかえってきたので、二人で笑顔で話しながら、目的地に向かった。
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