JTB交流創造賞

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交流創造賞 ジュニア体験部門

第14回 JTB交流創造賞 受賞・入選作品

中学生の部

優秀賞

よさこい祭りでつかめ夢を

福岡 真優(場所:高知県高知市)

「よっちょれよ〜よっちょれよ〜」

この土佐弁を聞くと夏が来た、とうずうずする。「よっちょれ」は、「寄ってこいよ」と「どいてろ」という意味があるそうだ。「よっちょれよ〜」と鳴子を持って踊るのは、高知よさこい祭りから全国に広まったと聞いた。僕は、讃岐生まれの讃岐育ちの香川県民だ。初めて聞いた時、「よっちょれ」の言葉は全くわからなかった。今では土佐弁で大声をはり上げながら唄える。

僕は、学校でダンス部に所属している。中高一貫校の為、僕たち中学生は高校生と共に活動している。このダンス部に入らなければ僕は高知よさこいに出ることはなかっただろう。縁があってこの部に入部し、高知よさこいへの旅を経験した。もしかしたら、僕の人生を変える旅・祭りかもしれないと思っている。僕たちダンス部は、地元での夏祭りには毎年出場している。しかし県外となると、顧問の先生や生徒だけではできないこともある。そこで、ダンス部卒業生たちが尽力し、高知よさこい祭りにいつか出たいという夢を持って、先輩たちが九年前にプロジェクトチームを立ち上げたそうだ。全国規模の祭りに出場するには、クリアしないといけない条件や壁がたくさんあって、何度も挫折しながら大学生が社会人になり九年もかかってここまでたどりついたと聞いている。何年もかかって夢を達成させた先輩方への尊敬をもって、僕たち現役生はその夢に便乗させてもらい、ともに旅をさせてもらった。高校球児の憧れが甲子園ならば、よさこい踊りをしている人たちの憧れは本場高知よさこいなのだ。中学生にして、なんの苦労もなく便乗させてもらった憧れの場に、僕は興奮し、高知本場の空気感に圧倒された。一連一連の熱いよさこい愛を感じ、よさこい祭りに酔い、踊り子すべてと観客の皆さんが一体になるということを味わうことができた。あまりに楽しすぎて夢の叶った先輩方は、感極まって笑顔で号泣していた。そんな祭りを振り返ってみると、沿道のお客さんがうちわであおいでくれたり、順番待ちをしている時に、たまたま出会った高知大学連とお互いを応援しあったり、早稲田大学のよさこいチーム東京花火の人と関わる機会がありお話をさせてもらったり、祭りの中でたくさんの出会いがあった。また、各演舞場には地元スタッフの応援や審査をしてくれる人、熱中症対策で水分を配布してくれるスタッフなど、祭りの成功には常にたくさんの裏方の支えがあるということをプロジェクトチームの先輩と関わることで知ることができた。この二日間は、自分が踊り子として感じ得たものばかりである。

三日目は、僕は旅行客として高知を満喫した。桂浜に宿泊していたので、朝風呂で桂浜の景色を堪能した。瀬戸内海の島々の美しさと違い、太平洋の壮大な海にどこまでも続く地平線と波の強さが圧巻でそれを見ながら、高知でできた思い出に浸り、長風呂をした。坂本龍馬もその昔、ここから世界を相手にしようと同じ海を眺めたのだろうか。そんなことも考えながら、坂本龍馬記念館で、江戸時代から明治時代への移り変わりとともに龍馬の行ってきたことを書物や武器などを通して学ぶことができた。龍馬は時代を変えた偉大な人物であることは知っていたが、改めてこの桂浜の地にたつとこの地がこの人を育てたのだとしみじみした。高知ならではを体験しながら、ひろめ広場でかつおのたたきやうつぼのたたきを食べ、グルメでも高知を満喫することができた。午後からは、帯屋町でよさこい祭りの全国大会に観客として参加した。全国大会に出場しているチームは、一糸乱れぬという言葉がぴったりの演舞でただただ驚かされた。これだけの踊り子がこうなるまでの練習を思うと感動しかなかった。

僕の三日間の旅は、あっという間に終わってしまった。プロジェクトチームの先輩が言っていた「祭りの終わりはゴールではなくてスタートだ。それぞれが何かを感じ、得たものを生かすスタートにしてほしい。」と、現役生に言葉を残してくれた。僕の旅もゴールではなくスタートだと思うことにした。もうすぐ、高校生になる。将来何をやりたいのかの一つが見えてきた。将来、高知の大学に行って、地域の活性化の勉強をしてみたい。現地のよさこいスタッフとしていつか自分のチームに恩返しができる人になりたいと考えるようになった。寄ってこいよの「よっちょれよ〜」と現地から言いたい。そんな一つの目標が生まれた旅であり、新たな長い旅が始まったのだと自分に言い聞かせた。

あらましと評価のポイント
【あらまし】

中高一貫の中学校ダンス部が参加した、高知でのよさこい祭りでの経験を描く。初めてのよさこい祭りに参加した興奮、全ての踊り子・会場との一体感など、よさこいの本場である高知の空気に圧倒される。「祭りの経験を活かし、得たものを活かすスタートにしてほしい」という旅の終わりでの先輩の言葉に、地域の活性化という将来の想いが生まれた。

【評価のポイント】

・よさこい祭りを体験したダンスの好きな中学生が、将来は高知の大学に進学して、現地の祭りスタッフになり、地域の文化を伝えたいと進路を見出す過程をしっかりと書いている。
・よさこい祭り参加を苦労して実現させた先輩たち、沿道から応援してくれる地元の人々、祭りの運営スタッフに感謝する思いが書かれている。

※文中に登場する会社名・団体名・作品名等は、各団体の商標または登録商標です。
※本文は作品原稿をそのまま掲載しています。
※賞の名称・社名・肩書き等は取材当時のものです。

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