田井 七海(場所:東京都台東区)
学校からの帰り道、家の近くのゆうびん局の前で、外国人のお姉さんに会いました。大きなキャリーバックだなぁ、旅行かなぁ、と思いながら通りすぎようとしたら、目が合ったので、わたしは「ハロー」とあいさつしました。するとお姉さんも「ハロー」と返してくれて、こう言いました。
「ホエア イズ イリヤステイション?」
わたしの住んでいる東京都台東区は、上野、あさ草、谷中といった、かん光スポットがたくさんあります。外国からの旅行者もふえてきていて、道では毎日のように、大きなキャリーバックを引いて歩く、外国人の人びとをよく見かけます。
お姉さんの言った「ホエア イズ」の意味は、よくわかりませんでしたが、「イリヤステイション」は、地下鉄日び谷線入谷駅の事だとピンときました。なので、
「入谷駅は、この道をまっすぐ行って、二つ目のしん号で左に行くとすぐです」
と、入谷駅の方をゆびさして、教えました。するとお姉さんは、
「センキュー!」
と、にっこりしたので、わたしは、
「ユア ウェルカム!」
と、こたえました。
家に帰って、わたしはこの出来事をお母さんに話しました。お母さんは、
「えーそれはすごいね!」
と、びっくりして、
「そのお姉さんは、台東区が大すきになったねぇ、きっと」
と言いました。
「どういうこと?」
とわたしは言いました。「たすかったね」ではなくて、どうして「大すきになったね」なのかしら?
それは、お母さん自身のけいけんからでした。
お母さんはわかいころ、よく海外旅行に行ったそうです。英語がペラペラではなかったので、よく道にまよったり、わからない事があって、こまっていると、いつもげん地の人びとがたすけてくれました。とてもうれしくて、その国もその人たちも大すきになったそうです。
今回のわたしのように、お母さんもよく道を聞かれます。そのたびにていねいに教えてあげます。「親切へのお返し」だそうです。
台東区への旅行者は、これからもっともっとふえると思います。わたしは、外国から台東区へ旅行に来てこまっている人がいたら、また、道あん内してあげたいです。「いまここどこ?」とふ安になっている気持ちを安心させてあげたいです。そして、台東区での旅行を楽しんでもらいたいです。
そのためにも、わたしは英語が話せるようになりたいです。
2020東京オリンピックもあと二年です。
わたしはその時五年生です。たくさんの、外国からのお客さんが楽しくすごしてくれるように、台東区をすきになってもらうように、がんばりたいです。
学校の帰り道に出会った、道に迷った外国人のお姉さんへの道案内の体験を描いた作品。英語と日本語を交えながら勇気を出して行った道案内の経験、家に帰ってからの母と子の会話が描かれており、道案内という日常の誰にでも可能な行動が、その地域を好きになってもらえることを感じている。
・道案内をきっかけに、谷中を訪れた外国人旅行者とのコミュニケーションに心を弾ませる気持ちが素直に書かれている。
・自分の住むまちを誇りに思い、旅行者にも好きになってもらえるようにしたい、という交流創造の原点といえる気持ちの芽生えにつながっている点が良い。
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