高浜 未来
私は、毎年夏になると、母の実家がある神津島へ行きます。伊豆諸島の一つである神津島は、東京から約百八十八キロメートル、面積約十九平方キロメートル、人口約千八百人の小さな島です。調布飛行場から約四十五分、高速ジェット船で竹芝桟橋から約四時間、熱海から約二時間で行くことができます。
私は、乗り物酔いをするので行き帰りがとても大変です。飛行機の方がより苦手なので、毎年高速ジェット船で行きます。前日は、波で揺れないか、船酔いしないで行けるかどうか、不安でいっぱいです。当日は酔い止めを飲み、朝早いこともあって、船に乗っていることが多いです。神津島へ行く途中に、大島、利島で乗船客の乗り降りがあり、大島でひときわ大きく揺れるため、いつもそこで目が覚めてしまいます。その時から、私の心はウキウキ、ワクワクとした気持ちの反面、船酔いとの戦いが始まります。利島を過ぎると、残りの乗客はみんな神津島へ向かう人達です。船の中で祖母の話をしていると、近くに座っていたおじいさんから、
「どこん子だ?」
と話しかけられました。名前を言うと、すぐに分かってもらえます。やっとの思いで港に着くと、祖母や祖母の友達、近所の人達が
「おかえり。」
と笑顔で出迎えてくれて、気持ちが悪くなっていたことが嘘のように消えます。
神津島へ着くと、潮の匂いを感じ、きれいな海を見て、今すぐに泳ぎたいという気持ちになります。祖母の家に着くと、早速水着に着がえて、海へ向かいました。いつも海水浴をしているのは、多幸湾という場所です。一年振りに海へ来た私は、着いたとたんに走って海に飛び込みました。ところが、飛び込んだ先で見た海は、茶色く濁っていました。顔を出して辺りをよく見ると、ゴミや海藻で溢れていました。私は驚きながら浜辺に出て、こんな海に入りたくない、と思いました。去年までは、透き通り、潜ることをしなくても、魚が泳いでいる姿が分かるほどのきれいな海でした。ところが今年は、浜辺に捨てたままのゴミや、台風などで流れついた海藻が湾に溜まったものの影響で、茶色く濁ってしまいました。その時、なかなかちゅうちょして海へ入れずにいた私は、何かを拾いカゴに入れている人を見かけました。私は、何をしているのかと眺めていると、
「漁港の人達が海藻を拾いに来ているね。」
と祖母が言いました。その日の夜、もっと詳しく話を聞くと、神津島で一番賑わいのある前浜では、毎朝、島のおじいさんとおばあさんが、清掃活動をしていると聞きました。その話を聞いて私は、島の人達の行動に感動すると同時に、ただ眺めていた自分が情けないなと思いました。そして次の日海へ行ったときに、私は島の人達と一緒になってゴミを拾いました。
私は、小さい頃から毎年神津島へ行っているけれど、今年初めて気がついたことが二つあります。一つ目は、いつも海がきれいだということが、当たり前ではないということです。誰かに頼まれたわけではないけれど、自ら海をきれいにしようという気持ちを持って行動してくれる人達がいるお陰で、きれいな海が保たれているということが分かりました。二つ目は、島の人達がアットホームで優しい心を持っているということです。島の人達はみんな、会うとあいさつだけでなく、
「大きくなったね。」
などと声をかけてくれます。また、祖母が
「島の中で知らない人はいないよ。みんな家族みたいなものだから。」
と言っていました。私の住む地域では、あいさつはするけれど、家族のような気持ちで接するということはなかったので、とても素敵なことだと思いました。また、一つ目に書いたような行動が自然とできるということは、本当に素晴らしいなと思いました。これからは、ゴミを捨てないようにすることはもちろん、島の人達を見習って、自ら行動し、神津島のきれいな海を守っていきたいです。また、神津島で学んだことを生かし、社会にも奉仕していけたら良いなと思います。
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