JTB交流創造賞

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交流創造賞 組織・団体部門

第13回 JTB交流創造賞 受賞作品

優秀賞

大洗サンビーチ≒ユニバーサルビーチの取組

大洗ユニバーサルビーチクラブ(茨城県東茨城郡)

大洗サンビーチでの海岸監視「だれもが安全に楽しめる海」を目指す実験ビーチ

1992年大洗サーフ・ライフ・セービングクラブは、夏季大洗サンビーチでの海水浴場監視(大洗町からの受託)を開始した。ある時、代表のジーコ足立は、海岸近くの駐車場で車椅子に子どもを乗せて海を眺めている親子と出会う。「見ていないで波打際に行ってみてはいかがですか」と、声をかけた。「この車椅子では浜に行けないんです」愕然とした…確かに通常の車椅子では砂地は走行不可能…防波堤も超えられない。

教育エリアを設け、実験ビーチとして地元の子どもたちの海離れを防ぐためにジュニアライフセービング教室、紙芝居で海辺の安全にかかる啓発活動、ライフセービング講習など「人」育てを実践。「だれもが安全に楽しめる海」を目指していたはずだったが、障がいを持った方たちへの配慮がなかったことに気づく。

1995年日本初のバリアフリービーチとして「だれもが楽しめる安全な海水浴場にしよう!!」と、地元の大工さんの協力を得て、材木を駆使し砂の状況を読みながら、木製のスロープを整備し車椅子が走行しやすい環境を整備。同時に、タイヤが大きく砂地でも走行できる水陸両用車椅子を調達。1996年からは利用登録のうえ、無料で貸し出している。水陸両用車椅子を少しずつ増やし、障がい者の方が利用できる更衣室等の環境を整備してきた。2017年8月現在利用登録者は1300人を超えた。

障がい者と健常者とが互いに思いやり、自然の大切さを学ぶ取り組みを「人が支えるバリアフリービーチ」と評価され、2003年『水辺のユニバーサルデザイン大賞2003』特定非営利活動法人ユニバーサル社会工学研究会を受賞。

大洗発ユニバーサルへ

2007年バリアフリーという建築用語から脱して、障がいの有無に関わらず、老若男女が集い楽しめるユニバーサルビーチを目指す。(2007年『平成19年度バリアフリー化推進功労者』内閣府特命担当大臣表彰奨励賞受賞)

2020年を目前に変化の兆しはあるものの、日本の障がい者を取り巻く環境は世界水準からかけ離れており、生活の質の向上は未だ希求されるところである。茨城県の大洗サンビーチから「だれもが楽しむ」をキーワードにした大洗発ユニバーサル社会の実現へのメッセージを発信することになる。それは抗うことができない、だれもが等しく年を重ね「障がい」を受け入れていかなければならない超高齢社会に向き合うことでもある。そして、「まちの宝」を次世代に引き継ぐためのメッセージの共有は大切な使命となった。

同じ頃、「夏季のみでなく通年でユニバーサルビーチを活用できないか?」という利用者の声を聞き、模索を開始。有志が集いジャランジャランの会を立ち上げた。寒風の砂浜で車椅子アスリートとの茶話会や、初春のフライングディスク大会などの取組も始めた。さらに通年で大洗発「ユニバーサル」をより多くの人と共有し、それぞれが「人」としてどう向き合っていくかをハンディピープルと共に学ぶ勉強会を持つようになっていく。

震災を乗り越える

2011年3月11日東日本大震災の際には、大洗も4メートルを超える津波に見舞われた。幸い大洗で亡くなった方はなかったが、町役場や海岸線にある施設、海岸監視に必要な備品倉庫などを海は飲み込んでいった。その後の原発事故の風評被害も含め、海水浴客は著しく減少。観光産業も大打撃を受けた。

「がんばっぺ大洗」を合言葉に、復旧を超えた復興のために、大洗町も津波防災対策の築堤や一時避難所となるビーチセンターの建設など、大規模な防災対策が行われることとなった。これを契機に大洗発ユニバーサルをより積極的に発信しようという機運も生まれた。この時の気概は、「転んでもただでは起きない。愚直にできることを実行するのみ」だった。

2013年これまで不定期に勉強会を開催していたが、より積極的な学びの機会を設けるために、ユニバーサルビーチクラブを設立。毎月定例のユニバーサルサロン(勉強会)を開催。障がい当事者、大学生、地域住民、大洗町職員、茨城県職員、東京や周辺地域からの支援者、茨城大学教職員など参加者は各回40名に達する。加えて政策提言が可能な体制を整え、不定期に研究会も開催。茨城大学を始めとする学識経験者も関わり、2014年には提言書をまとめ大洗町に提出した。▽ユニバーサルビーチを存続するために、堤防=壁ではなく、バリアフリー規準をクリアした築山の建設▽障がい者の一時避難所となるビーチセンターの建設などを盛り込んだものだ。その後、2017年竣工された津波防災対策堤防およびユニバーサルビーチセンターは、この提案を核にとりまとめられている。

より活用される「まちの宝」サンビーチ×築山×ユニバーサルビーチセンターへ

2015年2月ユニバーサルシンポジウムvol.1を開催。観光庁の後援もあり、ユニバーサルツーリズムを考える契機を設けた。

2016年2月ユニバーサルシンポジウムvol.2開催に加え、学生の実行委員会を中心に「だれもが楽しめるユニバーサルスポーツ」体験イベント「ユニスポWAVE2106」を企画、実施。

2017年6月には築山、ビーチセンター建設を町民への周知を図りユニバーサルシンポジウムvol.3を開催。7月には「だれもが一緒に楽しめるユニバーサルスポーツ」体験イベント「ユニスポWAVE2107」を開催。実行委員には障がい当事者の大学生も加え、高校生ボランティアの参加もあった。これらは学生と地域、行政の協働の実績でもあり、大洗発ユニバーサルを発信し続けている証でもある。

さらに、新設されたユニバーサルビーチセンターの活用を通じて、防災意識を高めるとともに、ユニバーサルビーチでの活動を継続発展させ、老若男女だれもが一緒に楽しめる理想のアミューズメントビーチを目標に活動している。

取組内容
「まちの宝」ユニバーサルビーチの活用(地域資源の活用)

・ジュニアライフセービング教室、海辺の安全啓発活動、ライフセービング講習会

・シンポジウムの開催、ユニバーサルの周知、大洗発ユニバーサルの発信

・ユニバーサルスポーツ・リクレーションイベントの開催

・大洗発水陸両用車椅子の開発

・ユニバーサルビーチとしての震災復興に向けた政策提言

ユニバーサルサロン、ユニバーサルスポーツイベントの開催(観光や交流の促進)

・幅広い参加者:大学生、地域住民、大洗町職員、茨城県職員、東京や周辺地域の支援者、茨城大学教職員など

・サロンでのミニシンポジウムでは県外のサンビーチ利用者の参加

・ユニスポWAVEでは県内外から車椅子バスケット、ハンドバイク、ブラインドサッカー、セグウエイ試乗、福祉車両展示など

学生の地域参画(地域の活性化や事業化)

・若者の参画で地域が元気になる

・学生によるイベントの企画運営を通じて、学びの契機となり、人育ての浜の広がり

・協力団体との連携

※文中に登場する会社名・団体名・作品名等は、各団体の商標または登録商標です。

※賞の名称・社名・肩書き等は取材当時のものです。

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