JTB交流創造賞

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交流創造賞 ジュニア体験部門

第12回 JTB交流創造賞 受賞・入選作品

中学生の部

入選

僕にできる小さな支援

山田 恭輔

この夏休みに家族で熊本旅行に出かけた。九州復興割の制度を知り家族で計画を立てた旅行だった。実は、今年の春休みにも熊本を訪れたばかりだった。あの地震が起こるほんの一か月前のことである。

僕は中学受験を無事に終え、久々に心から寛いだ旅行だった。美しい庭園の水前寺公園、威厳のある熊本城、壮大な阿蘇の山々。どの風景も素晴らしく、どこも観光客でいっぱいで活気にあふれていた。それがあの地震で事態は一変した。あの熊本城の城壁が崩れているニュースを見たときはショックだった。

夏休みに入るころ、九州復興割の制度を知った。風評被害により観光客が激減しているという話も聞いた。僕は旅行客が増えるぐらいで復興支援につながるのかと少し疑問に感じながらも、この旅が始まった。

まず最初に水前寺公園を訪れた。前に来た時と同じく美しい庭園だった。地震の被害などどこにも感じなかった。きっと多くの人たちの努力で改修されたのだろう。しかし、とても行き届いた庭園であるのに春に来た時より人出が少なく、閉じられているお店もいくつかあった。これが震災の影響なのかとさびしく感じた。そんな時、売店の所でお店の方に話しかけられた。僕たちが広島から来たと話すと、

「遠いところからようこそ!」

と喜んでくださった。とても楽しい方で、熊本出身のカープの選手の話や今年のカープの成績の話で盛り上がった。そのおかげで僕たちは楽しく庭園を散策することができた。

その後、僕たちは宿泊予定の南阿蘇に移動した。その時熊本城のそばを通ることになった。実際に見た熊本城の姿は想像以上に衝撃的だった。僕は城の被害の大きさに言葉を失った。数百年もの間美しい曲線を描いた銃壁が地震により崩れてしまっていたからだ。

阿蘇に向かう途中も山々が崩れてしまっているところをいくつも見かけた。こんなに多くの場所に被害が出ていたことに驚き、自然のエネルギーの大きさに恐怖を感じた。

僕は今まで、人間はうまく自然を利用し発展してきたと軽く考えていた。もしかしたら文明の力を過信しすぎていたのかも知れない。改めて人間の力ではかなわないものがあるという当たり前のことを思い知らされたのだ。

宿泊した宿では、施設の一部が地震で壊れてしまったそうだ。まだ工事中であったが僕たちはとても快適に過ごさせてもらった。

ここでも人が少なく感じたが、僕たちはゆっくりと温泉を楽しんだ。

今回の旅行ではあの地震の影響を見て、災害の怖さと自然の力の大きさを感じさせられた。しかし、それと同時に人間の強さも感じることができた。熊本を訪れて、とても明るく前向きなイメージを持った。きっとまだまだ時間がかかるだろうが、着実に町が復興してきていることを感じた。でもそれを進めるには人の力が必要だ。人が集まり、町がにぎやかにならなければならないと思う。そうすればどんどん復興も進んでいくと思う。

観光客が増えるとその経済効果でそこが豊かになると聞いたことがある。でも実際はそれだけではないのではないか。人が集まれば、きっとそこにはパワーが生まれる。

僕にもできる復興の支援は、実際にその土地に行き、その土地に思いをはせること。僕の中でしっくりとその考えにつながった。僕は今まで何の役にも立っていないと思っていたが、この熊本旅行で少しでも力になれたのならとてもうれしい。

またいつかますます活気に満ちた熊本を訪れたい。

※会社名・団体名等は、各団体の商標または登録商標です。

※賞の名称・社名・肩書き等は取材当時のものです。

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