石原 由貴
「ふじ山の上にいったら、くもにさわれるのかな」。ことしの二月とまったりょかんから、くもがかかっているふじ山を見て、わたしはそうおもいました。
わたしはなつ休みに、おとうさんとおかあさんとスイスにいきました。そこで、はじめてじょう気きかん車にのりました。山の上までぐんぐんのぼっていくじょう気きかん車です。
じょう気きかん車は、シャッシャッと音をならして、ゆっくりうごきはじめました。わたしはよく、手をうごかしながら、シュッポシュッポといって、き車のまねをします。でも、ほんとうはシャッシャッでした。きてきの音はあそびのポッポーとおなじでした。
き車からうしさんが見えました。小やに入っていないうしさんを見たのははじめてです。うしさんがせんろをよこぎって、き車がとまりました。いろいろなところで草をたべていて、じゆうでしあわせだなとおもいました。
だんだんと上にのぼるにつれて、さむくなってきました。しゅっぱつしたときは、はんそでのシャツでいるぐらいあつかったのに、パーカーをきて、フードをかぶらないとさむくてたまりませんでした。手もかちんこちんです。わたしは、山の下のおんどと上のおんどはぜんぜんちがうなとおもいました。そして、うしろを見ると、さっきいたところからだいぶはなれていて、まえを見ると、くもがとってもちかくにありました。ふじ山にのぼらないとくもにちかづけないとおもっていたから、おどろきました。
しゅうてんのえきについたとき、目のまえがまっしろで、おとうさんとおかあさんがよく見えませんでした。おかあさんが「ゆきはいまくもの中にいるんだよ」とおしえてくれました。そのときはじめてじぶんがくもの中にいることがわかりました。ずっとさわりたかったくもにさわったのに、さわっているかんじがしなくて、くもだとおもえませんでした。わたしは、くもはふわふわだとおもっていました。ふしぎでした。
日本にかえってきました。きょうはとてもいい天気です。わたしは空のくもを見て、やっぱりアイスクリームみたいにふわふわしているとおもいました。じぶんがアイスクリームのくもの中にいたなんて、しんじられません。
※会社名・団体名等は、各団体の商標または登録商標です。
※賞の名称・社名・肩書き等は取材当時のものです。