籏智 里奈
「まえをむいて、ぜんりょくではしって、オッケーというまで、はしりつづけてください」
と、パイロットのせんせいがいいました。
「よおし、うんどうかいで一とうになるつもりではしるぞ」
と、わたしはおもって、ぜんりょくではしりました。五ほぐらい、はしったところで、きゅうにふわっとうきました。
「もうういているみたい。だいじょうぶかなあ」
と、わたしは、むねがどきどきして、こわくてめをあけられませんでした。
「くうきは、はいっていますか」
わたしは、パイロットのせんせいに、きいてみました。
「はねのふうせんに、くうきは、ちゃんとはいっているから、だいじょうぶだよ」
と、パイロットのせんせいが、いってくれました。よかったあとおもって、わたしは、まわりをみてみました。
ここは、ながのけんはくばむら。なつのかぞくりょこうで、パラグライダーをたいけんするためにきました。まわりをみると、とおくには、やまがいくつもならんでいて、たてものやどうろが、とてもちいさくみえました。ちいさくておもちゃみたいだなあと、おもいました。みみのよこでゴーゴーと、かぜのおとがきこえました。きりふきでかけたような、こまかいみずが、パラパラと、かおにあたりました。
「いま、うすいくものなかにはいったから、かおにみずが、あたったんだよ」
と、パイロットのせんせいが、おしえてくれました。
とりが、三わとんでいるのがみえました。わたしも、とりになったきもちがしました。
一九九八ねんに、ながのオリンピックでつかわれた、ジャンプだいが、みえました。さっきジャンプだいをけんがくしたときは、とてもたかいたてものだなあとおもったけど、そらのうえからみたらとてもちいさくみえるなあと、おもいました。
「りなちゃーん」
と、わたしをよぶこえがきこえて、そのほうこうをみると、おかあさんもパラグライダーで、そらをとんでいました。おにいちゃんもおとうさんも、パラグライダーで、そらをとんでいました。そらにピンクいろときみどりいろとあおいろとオレンジいろの、四つのパラグライダーがうかんでいて、とてもきれいでした。
「このあとちゃくりくしますね。あしをまえにのばしておいて、オッケーといったらじめんにたってください」
と、パイロットのせんせいが、いいました。ちゃくりくするのは、あっというまでした。
はじめてそらをとんだパラグライダー。またいつか、パラグライダーでそらをとびたいなあとおもいました。
鳥になった気持ちで上空から下界を見下ろす初めての体験。家族でパラグライダーを経験した感動がいつまでも続いている光景が目に浮かぶ。
●一年生らしい、素直な感性で、4人が空中に浮かぶ景色が目に浮かぶ。素晴らしい。
●目を開けて見える雲の描写や空中で家族が顔を見合わせる様子がよく描かれている。
●このタイミングでしかできない家族旅行と思う。貴重な体験を新鮮に表現している。
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