藤木 麻衣
初めての北海道旅行。初めての飛行機。ぐらぐらしたり、海に落ちたりしないのかな。ドキドキ。
いよいよ出発だ。飛行機がかっ走路を走り始めた。
「ゴーッ」
車輪の音が予想以上にうるさい。機体が地面から離れると、座席が後ろにかたむいて、まるで遊園地の乗り物みたいだ。上に行くにつれ体が時々ふわふわするように感じる。でも、不思議とこわくはなかった。まずは、離陸成功。
上空に来た時、外の様子を見ようとしたが、私の席は機内の真ん中だったので見えなかった。そこで、キャビンアテンダントさんに、
「初めて飛行機に乗ったので、雲を上から見てみたいのですが、どこか空いている席はありませんか」
と聞くと、
「あいにく本日は満席となっておりますが、立って見られる窓が前方と後方にありますので、そちらでご覧になれます」
と笑顔で教えてくれた。
さっそくその窓から外を見ると、いろいろな形の雲が広がっていた。それは、まるでたくさんのわたがしが浮かんでいるような景色だった。空の青と雲の白のコントラストがとてもきれいだ。また、雲の切れ間からは、一面に地図が広がっているような光景が見えた。いつもは山頂から見る景色が、山を登らずに見ることができて、少し得した気分になった。
席にもどり、音楽を聴いたり、ジュースを飲んだりしていると先ほどのキャビンアテンダントさんから名前をたずねられた。答えると、「搭乗証明書」というカードに書き入れて、プレゼントしてくれた。そのカードには、他に搭乗日、便名、区間、パイロット名などが手書きされていた。さらに、
「初フライト♥
空の旅はいかがでしたか。
ステキな思い出たくさん作ってね」
というメッセージがあり、かわいい絵やシールでかざられていた。これはまさに私のためだけに作ってくれたオリジナル証明書だ。
私はとてもびっくりして、うれしくて、何度もお礼を言った。大勢のお客さんの中で、私のことを覚えていてくれて、忙しい仕事の合間にこのカードを書いてくれたことにとても感動した。そのやさしさが心にじいんとしみ渡った。これは一生の宝物になるだろう。
新千歳空港に着いた。あっという間の空の旅だった。旅の最初にこんなステキな出会いがあるなんて思いもよらなかった。まさに一期一会だ。
私はキャビンアテンダントさんのあのさわやかな笑顔とやさしさをいつまでも忘れない。そして、私も人に感動を与えられるような大人になりたい、と強く心に誓った。
※賞の名称・社名・肩書き等は取材当時のものです。