松本 智
わたしは、八月三日に北海道の釧路の祖父母に会いに行きました。今年は初めて、一年生の妹と二人だけで行きました。
東京から釧路までの飛行機に乗っていると中、ふしぎな事が起きました。何度も着陸態せいが出されたのです。「おかしいな」と思ったとき、キャビンアテンダントのお姉さんが来て、「あのね、飛行機はね、おびひろ空港に着いちゃったみたい」と言いました。そう言われたとき、わたしは心ぞうが口からとび出しそうでした。なぜかというと、「もし、このまま釧路に着けなかったらどうしよう」と思って心配になったからです。今回は二人だけだったからよけい心配でした。
やっとの事で着いた場所はおびひろ。「このままおいていかれたらどうしよう」と、わたしの心ぞうの音はよりはげしくなりました。
でも、飛行機からおりるとおじさんがすぐに来てくれ、ふだんは入れない特別な部屋で少し休けいさせてもらいました。そのあとも、バスに乗せてもらい、釧路まで送ってくれる事になりました。
そして夜の十時。釧路駅にバスが着きました。次つぎに親がむかえに来ます。ねむいわたしを起こしたのは、祖父母のえ顔。
「ともちゃん、心配したよ」
わたしは祖母とだき合い、とても安心しました。祖母に、バスの中で「いつものおみそしるが食べたいな」と思った事を話すと、おみそしるを作ってくれました。そのおみそしるは、なぜかとてもおいしかったです。夜中の十二時でしたが、ちっともねむくありませんでした。
今まで家族といっしょに旅行をしたときは、ただ楽しいという気持ちしかなかったけれど、今回の旅行で初めて、旅をするという事は、ちがう世界に行く事なんだと思いました。その世界には楽しいだけじゃなく、不安やドキドキする気持ちもありました。そしてそこから帰って来ると、ただのおみそしるがいつもよりとてもおいしく感じたのです。今回の旅行を通して、旅には、「当たり前の事がすばらしい」と感じさせる力がある事を発見しました。
※賞の名称・社名・肩書き等は取材当時のものです。