西沢 郁輝
夏休みにモンゴルに行ってきました。一週間、ゲルで遊牧民のおじさんたちといっしょにすごしました。
遊牧民は、飼っている動物ととても仲良しです。羊や山羊はおじさんがよぶと必ずよってきます。馬の頭をわしわしなでると、気持ちよさそうにいななきます。人間は世話をしてあげるだけではありません。おちちをしぼるのはもちろん、なんとふんまで拾います。ふんはかんそうさせねん料にしたり、ゆかにしきつめたりしています。動物たちと本当に仲良しだということが分かります。
ところが、三日目の夕方のことです。
「おーい、集合して」
とよばれました。行ってみるとブルーシートがしかれて、一頭の羊がいます。おじさんが、
「今から羊のかいたいをするよ」
と言いました。私は
(あんなに仲良しの羊をかいたいしちゃうの)
とびっくりしました。だから、おじさんが泣きながら始めるんだと思っていました。でもふつうに始めました。
まず、おなかを十センチくらい切って、息をしなくなるまで待ちます。次に、ナイフのせで皮をはぎます。ひふには血管がありますが、血は全然出ていなくて真っ白でとてもきれいでした。おなかを切ってじゅんばんにないぞうを出し、血をボウルに入れて終わりです。おじさんは、
「見るのがいやだったら見なくてもいいよ」
と言っていましたが、私は羊が気になってそのばをはなれられませんでした。
羊は、ホルホークにして食べました。おいしかったけれど、なんだかざいあくかんがザワザワしていました。そんな私の顔を見て、おじさんがよってきました。
「モンゴル人は、羊にかんしゃをしてころしているんだよ。羊が一番苦しまない方法でころし、血があまり出ないようにさばいているんだ。肉やないぞうを食べるのはもちろん、血も食べているんだ。それに、ほねはおもちゃに、皮はしきものになるんだよ。つまり、あまらせるものは全くないんだよ」
この言葉を聞いた時、私ははっとしました。初め、羊をかいたいしたモンゴルの人たちはひどいと思いました。でもモンゴルの人たちは愛じょうをこめて自分で育ててかんしゃして食べます。今まで日本にいた時の私は、他の人に育ててもらい、何も考えずに食べていました。はんせいしたいです。
今年の夏、モンゴルに行って、「命」について、少し考えるようになりました。
※賞の名称・社名・肩書き等は取材当時のものです。