岡田 知紗
旅行に出かけると、ツアーで一緒になった人や、ガイドさんから聞く話が結構面白く、自分の知らないことや、気付かないことを教えられることがある。そんな体験が私は好きだ。
そして、この夏台湾へ行った。台湾は親日国で、小さなお店でも一言、二言日本語を混じえて話してくれるので、とても親しみが持てた。又、ガイドさんは台湾の人なのにとても日本語が上手なうえ、日本人の考え方や風習、大阪のとあるお店の味の変化まで知りつくしているほど、日本のことをよく知っていたので、ガイドさんの話に興味を持った。
ある日の朝、待ち合わせの時間にロビーに下りると、
「今朝の時間は八時三十分と昨日お伝えしましたよね」
とたずねてきた。
「そうですよ」
と答えると、お客さんの中で思い違いをし、早くからロビーで待っていた人がいたそうで、たいそう苦情を言われ、反対に待ち合わせの時間になってもなかなか下りてこない人もいて、その人に対しても苦情を言われていました。ガイドさんは曇った顔で、
「実は、八月でガイドを辞めるんです。三十年ガイドをしてきましたが、昔と違って日本人は変わってしまった」
とつぶやきました。
昔の日本人は、時間やマナーを守り、周りの人達との協調性を大切にし、旅で出会った人達で楽しい時間が作れる空気だったと…。でも、年々それがなくなり、自分中心の考え方が表面化し、ガイドがしにくくなってきたと心の中の痛みを話してくれました。
確かに、自分中心、マナー違反など思いやりのないことを日頃新聞で目にし、テレビで耳にすることがとても多いように思います。
私は、これから大人になっていく私に、「このままで良いのか?」と問いかけ、最後にこの気持ちを伝え、気付いてほしかったんだと感じました。私一人が何かを変えようとしても、大きなことは出来ないのかもしれない。でも、「他国から日本はこんな風に見られていますよ」と、伝えることは出来ると思います。
日本の中でくらしていると、世の中の考え方でまひし、「このぐらい、良いか」とズルズルするが、他国から自国を見ると、いつもと違う冷静な目で客観的に見られることに気付きました。私はあやうく、井の中の蛙になるところでした。
この旅行で色々観光しましたが、それよりどう自分が成長していくべきかということがテーマとして残った旅でした。
このような広い見方、考え方に気付かせてくれたガイドさんに感謝したいです。
※賞の名称・社名・肩書き等は取材当時のものです。