中村 典子
わたしが通っている塾では、先生の話などがブログにのるので、いつも楽しみに読んでいる。ある日のブログに、社会の先生が北海道に行ったときの話がのっていた。先生は、釧路湿原などをまわる道東の旅について書いていた。社会科で勉強したことなども出てきて、読んでいてとても楽しくなった。北海道からの帰りには、しん台列車に乗り、大阪まで行ったという。わたしも先生みたいな旅がしたい、と両親にお願いして、今年の夏、実現した。ただ、しん台列車は予約がいっぱいで、無理だった。
八月、羽田から女満別空港へ。道東をレンタカーでまわる旅が始まった。お父さんが運転して、帰りの新ちとせ空港まで七百キロぐらいを四日間で移動した。まず、女満別でひまわり畑を散歩してから、網走に向かった。途中、塾で習ったロールベールサイレージを発見。これは、牧草を直径一メールから二メートルに丸めたものだ。思わず、車をとめて、とさけんだ。広い牧草地にいくつも並んでいるすがたは、ロールケーキのようでかわいい。といっても、近づけばかなりの大きさ。でも、まわりが広すぎて、そこにちょこんとあるように見えた。
網走では、流氷やクリオネが見られる網走流氷館に行った。マイナス二十度を体験できる部屋に入った。氷の上にすわったり、オホーツク海の流氷にさわったりした。大きくてとても冷たかった。ぬれたタオルをふりまわしたら、カチカチにかたまって、びっくりした。でも、こんなに寒い中でくらすのは大変なことだ。「流氷」はすてきなひびきだけど、本当はかこくな寒い海で起こることなのだ。海がこおるなんて、不思議だしこわい。
次の日は、釧路湿原に行った。湿度が高く、あたりはしっとりとしていた。また、虫もけっこういたので意外だった。初めてみた釧路湿原はくもった天気のせいか、ぼんやりしていた。きりの中、あのふかふかした緑の湿原がどこまで続いているんだろうと想像した。あの緑の中にキタキツネやシカなどの動物が住んでいるのだろう。見てみたいな、と思っていたら、湿原からの帰り道でキタキツネの親子に出会った。写真で見るよりずっとかわいい。ここにはキタキツネがくらせる自然がたくさんあるのだな、と思った。
屈斜路湖畔の砂湯という場所は楽しくて、いつまでも遊んでしまった。湖畔の砂をほると、温泉がふき出した。すぐそばの湖の水は冷たいのに、砂をほって出てくるお湯は熱い。不思議だ。わたしは夢中になって砂をほり、自分だけの小さな温泉を作った。場所によってはすごく熱いお湯が出ていて、さわれないくらいだった。
道東をめぐって、いろいろな体験ができた。わくわくしたりどきどきしたり。北海道に行って、地理がもっと好きになった。
※賞の名称・社名・肩書き等は取材当時のものです。