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第8回 JTB交流文化賞 受賞作品紹介
交流文化賞(組織・団体対象)
優秀賞
祖先の痕跡が残る空間「ガンガラーの谷」守るために価値を伝える
株式会社南都(沖縄県南城市)
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取り組みの背景や目指す目標

(イメージ) 沖縄本島南部に位置する「ガンガラーの谷」。この谷は日本人のルーツともいわれる18,000年前の古代人「港川人」居住区の可能性が高く、2007年から毎年継続して学術的な発掘調査が行われている。これまでの調査によりこの谷は10,000年以上前から現代まで、様々な時代の人々に利用されてきた場所である事が明らかになっている。そんなこの谷と私たちとの関わりは今から40年程前にさかのぼる。2012年、沖縄は日本本土復帰40年を迎えた。復帰直前の沖縄は、アメリカ統治下から日本社会へと移り変わる事に関し、人々が不安な気持ちを抱いていた時期である。

「復帰にむけた大きな公共事業の多くは本土の会社がやっている」「この先沖縄はどうなっていくのか」そんな時代背景の中、当時30代だった創業メンバーが「何か沖縄が優位性を発揮できる事はないのか」と試行錯誤する中「沖縄にしかない自然・歴史・文化その価値を伝えよう」と、1972年4月、本土復帰の直前「玉泉洞」「ガンガラーの谷」を観光地として公開した。 当時は戦争が終わってまだ20数年。激戦地だった沖縄本島南部は、人々が戦跡に訪れる悲しみの場所というイメージが強い中「南部に明るい観光地・雇用の場を作りたい」そんな思いから、地元地域の皆様の理解、協力を得ながら公開した場所である。ところがそのわずか数年後、谷内を流れる河川ヘ上流から畜舎排水が流れ込み、その環境悪化から「ガンガラーの谷」部分の公開を中止した。その後「この場所を守るために価値を伝える」という創業当初からの使命を果たすべく、河川環境回復の状況を待ち続けた結果、30数年の時を経て、2008年8月に「予約制ガイドツアー専用エリア」として「ガンガラーの谷」を再び公開することができた。

取り組み内容

(イメージ) ※「ガンガラーの谷」は沖縄本島南部の南城市と八重瀬町にまたがる、鍾乳洞が崩壊してできた谷間。 「港川人」発見場所から近く、谷内には川が流れ、生活に適した洞窟が点在している。その他数百年前から信仰の対象になっている洞窟や、ガジュマルの大木なども存在し、それらを巡る約1キロの歩道が40年前に整備されている。2008年からこの場所を専門ガイドと共に歩く約1時間半のガイドツアーが年中無休で行われている。

    ■2008年の再公開の際に重視した点
  • ◎この場所の価値をしっかり伝えることができれば、この場所を未来に向けて守っていける。
  • ◎古代からの人々の痕跡が奇跡的に残っている場所。谷内を廻ることで自分の過去、祖先たちの足取りに想いをはせ、自然の中で自然とともに生きてきた祖先たちの生活を感じることで、今を生きる私たちが日々の生活で忘れてしまっている感覚「命をつないできてくれた祖先に感謝」「今ある自分の命に感謝」「それらを育んできた自然に感謝」そんな事を少しでも感じてもらえたら、お越し頂いた人々の人生に貢献できるのではないか。

    ■価値をお客さまの心に届けるにはどうしたらいいか?
    (イメージ)
  • ◎「人の心は人が動かす」という理念に基づき、思いを伝えるというスタンスでガイドしている。
  • ◎谷内にある様々な分野の価値をまとめ、一つのストーリーに仕上げている。
  • ◎様々な分野の学術的な知識価値、最新の研究成果をベースにしながらわかりやすく伝える。
  • ◎「我々の命はどこから来たのか?」という全ての人類に通じる課題がツアーの裏テーマ。
  • ◎目に見えるモノだけでなく、目に見えない世界をお客様の頭の中にイメージしてもらえるようガイドしている。
  • ◎ツアーの手法は舞台演出。脚本に基づいた進行+お客様の心をつかむ演出があり、舞台は本物の現場。

    ■研究機関、行政と連携し学術調査を継続実施している。
  • ◎2007年〜2012年「考古学・人類学的な学術発掘調査」(主体:沖縄県立博物館・美術館)
    発掘期間中はツアー中に生の発掘現場を見ることができ、研究者からも「普及」の観点で大変好評である。


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※賞の名称・社名・肩書き等は取材当時のものです。