JTB交流文化賞 Multicultural Communication
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JTB交流文化賞
交流文化が広げる未来
第7回 JTB交流文化賞 受賞作品紹介
交流文化賞
最優秀賞
漁村の暮らし体験が地域を再生する
「番屋エコツーリズム」

NPO法人 体験村・たのはたネットワーク(岩手県下閉伊郡田野畑村)
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取り組みの背景や目指す目標 (イメージ)

田野畑村には、財団法人日本交通公社の観光資源評価(平成11年)において、国内の海岸では唯一最高ランクの特A級に格付けされた200m断崖が続く景勝地「北山崎」がありました。しかし、訪れる観光客のほとんどが写真を撮るとすぐ移動してしまう典型的な通過型観光地であり、経済効果はあまりありませんでした。村の観光スタイルを通過から体験、体験から滞在とシフトするため、体験型観光を推進しました。農林漁業が盛んな昔ながらの生活様式に着目し、「番屋エコツーリズム」と称して体験観光のソフトとして活用しました。小型漁船で北山崎の断崖をめぐる「サッパ船アドベンチャーズ」については、開始した平成16年度に342人あった参加者は平成22年度には4880人となり、14倍以上に躍進しました。平成23 年度は大津波被災のため数は大きく落ち込むことが予想されますが、今後も再建とさらなる拡大をめざしていきます。また、教育旅行受け入れは平成21年度8校、22年度4校でした。23、24年度も数校ずつ入っていた予約は、震災のためキャンセルとなりました。教育旅行についても、被災地見学、防災教育という新たな切り口から、今後も受入拡大を目指していきます。

取り組み内容
  • 地域資源の活用
    昔ながらの漁師番屋が25棟残されていた「机浜番屋群」は、今日の社会環境の中で一部地元民から「古いから早く取り壊すべきだ」という提案もされていました。ところが客観的な視点の導入によりその価値に気付き、地元青年会により保存継承活動が行われ、平成18年には水産庁の「未来に残したい漁業漁村歴史文化財百選」にも選ばれ、昔の漁村の姿をとどめる貴重な場所となりました。
    NPO法人体験村・たのはたネットワークでは、「番屋」を田野畑村の自然と調和した暮らしの象徴として、提供する生活体験プログラムを「番屋エコツーリズム」と称しています。
    また、番屋だけでなく、漁船や漁業作業、魚捌き、農林業、漁師風工芸など、村での暮らしそのものを体験プログラムとして活用しています。
    <代表的な体験プログラム>
    ◎漁師が漁船で断崖や漁場を案内し、自然と漁業を紹介する「サッパ船アドベンチャーズ」
    ◎漁師が田野畑村の自然とそれに調和した生活を紹介する「番屋ガイド」
    ◎漁家の母親と一緒に魚を調理し、一緒に食事をしながら交流する「番屋料理」
    ◎海岸に残る自然歩道を歩き、自然と暮らしを紹介する「ネイチャートレッキング」
    ◎漁師の浮き玉(ガラス玉をひもであみこんだもの)作り、貝殻などを素材にした「海辺のクラフト」
  • 観光や交流の促進
    平成20年度までは主催事業での子ども対象キャンプ、平成21年からは学校単位の教育旅行受け入れを開始しました。遠方から参加した子どもたちの意見を聞き、村民が漁業や暮らしの営みの価値を再認識しました。村民は「何もない」と思っていたのに、ちょっとした潮騒や魚料理、時には汲み取りトイレまでが感動を与える材料となることに気付きました。受け入れ後、村民と参加者の文通が続いたり、個人的に家族で来村するなどの交流が続いています。
  • 地域の活性化や事業化
    (イメージ)
    • ◎サッパ船参加者が少なかった頃は漁業者にとって時間的ロスが大きく、面倒と感じる漁師もいました。しかし客数が伸びると、大きな副収入として生活の一環となり、サッパ船を積極的に受け入れるようになりました。
    • ◎大規模な学校の受け入れにより、民泊受入が地域ぐるみの行事となりました。地区の婦人会や漁協婦人部の新商品研究開発にもつながり、またプレゼンスキルなどそれまで考えもしなかったことに関心を持つようになりました。
    • ◎子どもを受け入れ、交流した経験が村民にとっての楽しみになりました。お年寄りもそれに生きがいを感じて、「次の機会はまだか?」と心待ちにしている方もいます。
    • ◎「わかめオーナー制度」を始めました。オーナーが養殖作業に参加し、自らの手でワカメの種まきや間引き、収穫に参加します。わかめの販売促進及び水産業への関心普及につながりました。

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※賞の名称・社名・肩書き等は取材当時のものです。