JTB交流文化賞 Multicultural Communication
JTB地域交流トップページ
JTB交流文化賞
交流文化が広げる未来
第6回 JTB交流文化賞 受賞作品紹介
交流文化賞
選考委員特別賞
市民創作「函館野外劇」
NPO法人市民創作「函館野外劇」の会(北海道函館市)
1 | 2

取り組みによる効果

  市民創作「函館野外劇」は北海道、函館市、近隣市町村、企業、学校、団体、そして多くの市民有志から物心両面の支援を受けている。劇を作りあげるための費用、出演者の確保、そして作り上げた劇を観てもらう観客など、今日の野外劇は永年にわたる彼らの応援を抜きにしては語れない。
  この劇は今年で23年目の公演を終えたわけであるが、その効果について振り返ってみれば以下のようなことが考えられる。

1. 地元の人たちが幅広い年齢層で交流する場となっている。スタッフ、出演者の年齢層は10歳くらいから80歳くらいまでと幅広い。この中で、人のつながりができ、仕事のやり方、人との付き合い方など様々な社会的な約束ごとの伝承がなされている。

2. 転勤者、移住者の参加も多い。野外劇上演という文化活動を通じて、地域に貢献でき、また自らが地域に溶け込む場としても機能しているのであろう。

3. hif(北海道国際交流センター)から紹介を受けて、多くの留学生が観劇、飛び入り出演に訪れる。彼らにとって良い思い出になるとともに、函館の国際化にも貢献している。

4. 学校教育の一環として、副読本にも取り上げられている。また、「総合」の授業で野外劇について話し合いを持つ学校も出ている。市立函館高校は「函館学」の一環として観劇し、函館の歴史および野外劇の存在自体を意識する場として使われている。これらのことは、若い世代が函館の歴史を知ることにより、郷土に誇りを持つようになることを期待しての取り組みである。

5. 函館の外からの観劇者にとっても、函館や北海道の歴史の意外な一面を知るきっかけになる。また、日本では他に類のない野外劇を観ることで旅の良い思い出とすることができる。

6. 今年から、旅行社、ホテル、バス会社、ロープウェイなどの協力で、「野外劇と函館山夜景を見るツアー」が企画された。これまで、劇と夜景を一夜に見ることはできないとされていたが、夕食を早めたり、ロープウェイの運行時間を遅らせたりすることにより実現にこぎつけた。今後は、さらなる利用者拡大に向けて知恵をしぼっていくことになる。

7. 野外劇を盛上げるためのいくつかの企画をスタートさせた。
@ 「野外劇⇒函館山夜景ツアー」(前述)

A 野外劇ゆかりのスポットを散歩するツアー」
地元の専門家を案内人として、歴史スポットをゆっくりと歩きながら訪ねる集まり。函館山周辺の海沿いコース、山沿いコース、五稜郭コースの3コースを楽しんだ。

B 「野外劇大使」の設置
道外での知名度向上、観客誘致を目的に、かつて野外劇観劇をしたことのある著名人対象に、大使就任をお願いした。

C 外部応援組織の育成
市内若手企業家の集まり「はこだてもりあげ隊」は昨年から、物販、出演などを通じて協力をもらっている。同様の目的で、野外劇の活動の範囲をさらに拡げるために、「野外劇サポーターズクラブ」の設立を検討中である。

8. 今後は、地元へのさらなる浸透を図りつつ、道外、札幌などへ観客掘り起しを行っていく。また、フランスのル・ピュディフがヨーロッパ各地から観客を集めているように海外観客の開拓も行っていく。そのためには、ホームページの多言語化、会場での外国人向けの道具立ての設置などを進めていく。

これまでの取組期間、継続期間について

  取組開始1985年、初公演1988年以来毎年10回〜11回公演を行い今年で23年目を迎えた。

取組体制・組織、財源について

  NPO法人市民創作「函館野外劇」の会が中心となり運営を行っている。会はフィリップ・グロード氏が理事長をつとめ、理事会が最高決定機関。理事会の下に演出部、広報部、事業部がありそれぞれの活動を行っている。
  財源確保は理事会の専管事項であるが、主な財源はチケット販売、協賛広告、補助金、寄付、物品販売などによる営業収入である。
  また、出演者、スタッフの確保も最重要事項のひとつ。これらは、人と人とのつながりを利用して、学校、企業、企業団体、自治体、町会、ボランティア団体などから協力をもらう。

今後の展望について

箱館戦争の殺陣稽古  今年、23年目を迎えることができたので、次は25年目をどのような形で迎えるかが課題の一つである。国内宣伝はもちろんであるが、ル・ピュディフと姉妹提携をしていることを利用して、海外にもネットによる宣伝を行う。25年目を成功させることが、野外劇の継続に大きな意味を持つことを強く認識して、活動を行っていく。


具体的には
1. 年間観客動員目標数1万2,000人、将来的には2万人の獲得。

2. マンネリ化を避ける意味で、現在の脚本以外に新たな脚本を起す。

3. インターネットを通じての宣伝をさらに充実させる。

4. 外国人観客を意識した舞台づくりを行う。

5. 観客席および舞台の常設化を働きかけていく。

6. 近年は出演者確保でも非常に苦労が続いている。通年の人材開拓活動を行っていく。

7. 大沼在住の作家新井満氏の作詞作曲によるテーマ曲「星のまちHAKODATE」をさらに浸透させることにより野外劇の存在感を高めていく。



評価のポイント
  函館市の地域活性化のために、フランスの野外劇を参考として市民による手作りの野外劇を1988年の初公演より継続している。400人以上の市民出演者と100人以上のボランティアスタッフに支えられ、市民にも根付いた交流事業となっている点を評価され、今回選考委員特別賞とした。

<< 前のページへ

※賞の名称・社名・肩書き等は取材当時のものです。