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第6回 JTB交流文化賞 受賞作品紹介
交流文化賞
選考委員特別賞
市民創作「函館野外劇」
NPO法人市民創作「函館野外劇」の会(北海道函館市)
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取り組みの背景や目指す目標

舞台裏風景 みなさん生き生き  函館市五稜郭地区の活性化策の一環として始まった。五稜郭地区の商店主たちから、アイデアを求められたのはフランス人宣教師フィリップ・グロード氏。当時、彼は単なる宣教師というだけでなく、老人施設旭ヶ岡の家の創始者として地元でも認められる存在であった。
  グロード氏の提案は国の特別史跡五稜郭を舞台にした野外劇であった。函館のダイナミックな歴史を五稜郭を舞台にして演じることにより、地域おこしの起爆剤になると考えたのであった。もしうまく行かなくても、子供たちへの歴史教育、劇を作り上げることを通して生まれる連帯感の醸成など、プラス効果を信じての提案であった。

創始者フィリップグロード氏を囲んで理事会  彼の生まれ故郷フランス、バンデ県ル・ピュディフの野外劇は村のボランティア活動として始まった地域おこしであるが、当時すでにヨーロッパ各地から30万人を集める大イベントに成長していた。




取り組み内容

  取り組みは困難を極めた。どのような劇を作るのかイメージ作り、資金調達、特別史跡の使用許可、出演者の募集とトレーニング、衣裳の縫製、調達、大道具、小道具の調達作製、舞台音楽の作曲、振り付け、台本作成、演出等々、すべてゼロからのスタートであった。

1.ル・ピュディフ野外劇の視察
1985年、グロード氏を団長として、約十名の地元有志がル・ピュディフの視察を行い、その素晴らしさに感動して帰国した。この時、彼らは成功を現実のものとできると強く意識するようになる。

2.資金調達
資金調達はもっとも難しいものであったが、五稜郭タワー鰍ゥらの1,000万円借入れをはじめ、なんとか必要な資金を集めることに成功する。北海道、函館市からも資金援助を受けることができた。

3.国の特別史跡五稜郭の使用許可の取得
 特別史跡であるので、破壊につながる行為は一切許されない。杭一本打ち込むのにも厳しい規制がある。約十日間の公演を守ること、終了後はもとの状態に復することを条件に許可となった。

4.スタッフの募集と出演者オーディション
広大な五稜郭を舞台に演じるわけであるから、それなりの人数が必要である。出演者400〜500人、それを支えるスタッフ100〜200人。新聞、広報などを通じて広く募集を行った。また、市内の小中高、ダンス教室、日舞教室、剣道道場、バレエスタジオなどへの出演要請も行った。

5.演出者の募集
人的なつながりを利用して、演劇経験者の中から選んだ。

6.大道具、小道具の調達作製
衣裳、大砲、船、垂れ幕などすべてボランティアを中心に作製を行った。音響装置、照明装置は専門業者に依頼した。

7.台本の募集
歴史劇という枠の中で、台本を募集。応募作品をもとに台本をつくりあげた。

8.舞台音楽の募集
経験者を指名して依頼することになった。

9.出演者のトレーニング
演劇経験者が中心となり、開演まで厳しい練習を続けた。

10.宣伝活動、営業活動
新聞、テレビ、ラジオを利用して宣伝活動を行った。チケット販売、協賛広告の獲得はスタッフを中心に近郊の企業・団体に依頼を行った。

11.観客席の組立て工事
安全で見やすく安価な観客席をつくるため、建設会社に相談。結局ビル工事の足場を利用することとなった。

  このような準備を重ねて、初公演は1988年7月22日。当時新聞各紙は、ものめずらしさもあって、地域興し成功例の一つとして特集記事を組んでいる。
  なお、現在上演中のシナリオは、平成16年、沢田祐二氏を中心とする劇団四季OBにより新たに書き換えられ、主要部分の演出も彼らにゆだねている。


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※賞の名称・社名・肩書き等は取材当時のものです。