変わりつつある観光のかたち
京都市の観光客は2008年には、念願の5,000万人を突破し、外国人宿泊客数も過去最高の94万人と5年間で倍増し、念願の目標達成を実現したと言われています。京都観光が、質にも注目される時代を迎えていく中で、民間レベルでの新しいスタイルの観光事業の創造が求められています。旅行者の志向も、観光名所をバスで巡るといったようなものではなく、もっと深く京都らしい日本文化に触れ、体験し、地域の人々との温かい交流によって感動を分かち合えるようなプログラムのニーズが増えてきています。特に、心に残る自分だけのオリジナルな体験を好む外国人旅行者はその傾向が強いと思われます。
外国人旅行者に普段着の日本文化体験を
有限会社ワックジャパン(WAK JAPAN:Women’s Association of Kyoto)は、1997年に創立され、海外からの旅行者に京都で日本文化体験プログラムを提供している会社です。会社といっても、パートを含めた社員5名(全員女性)の小さな所帯ですが、この活動を支えるのは、一定の研修を受けて登録された京都市等に在住する50名ほどの女性たちです。
そして、舞台は、一般市民の暮らす家庭から始まりました。寺社見学や観光施設訪問ではなく、京都の一般家庭で受け継がれている文化に触れてみたいという外国人旅行者のニーズに応えており、茶道、華道、書道、着物の着付け、料理などのプログラムでは、分野毎に高い技能をもった女性たちが、英語等の説明付きの体験プログラムを実施しています。創業以来12年、会社が様々なプログラムを展開していくなかでも、このホームビジットプログラムは、ワックジャパンの根底にしっかりと根付いたものとなっています。
主なプログラム
ワックジャパンには、個人向けと団体向けサービスがあり、内容は次のようになっています。
◆個人向けサービス
・個人家庭訪問プログラム
一般家庭を訪問し、本格的な伝統文化体験ができます。文化体験もさることながら、外国人旅行者の方にはなかなか実現がむずかしい日本の家庭への訪問を楽しめるのが好評で、送迎サービスもついています。
日本の家庭料理(照り焼きチキン/天ぷらと巻きずし)・茶道・華道・書道・折り紙・日本舞踊・着物着付け・和紙細工・布細工・琴演奏体験のコースがあります。
・スペシャル・インタレスト・プログラム
京都の伝統的な工芸(陶芸、友禅染、西陣織や綴れ織等)や日本の武道(剣道、柔道、弓道、空手等)、日本酒、建築、庭園などに特別の興味を持つ海外からのお客様と専門家を結びつけるプログラムです。お客様の希望と専門家のご意見を前もってよく聞き、それぞれの希望にぴったりの体験や指導が受けられるよう、手配いたします。
・ラグジュアリー・プログラム
VIPのお客様や、特別なお客様に、非公開寺院や、有名寺院の非公開場所、有名職人の工房などを使った文化体験を特別に手配します。
ワックジャパンは、日常から地元の寺社との交流があり、寺社の尊厳を大切にした文化体験を心がけています。そのおかげで、いざというときに特別な場所での体験を許可していただくことができます。
・文化体験つき京都観光ツアー・プログラム
通常の観光ツアーにワックジャパンならではの特別な体験を入れます。
舞妓さんとお茶屋あそび・華道体験と周辺(東山)観光・京町家見学と嵐山観光・一味違う舞妓変身(男性には男性用着物)と祇園散策・寿司作り体験と錦市場界隈と祇園散策・茶道体験と大徳寺見学に和菓子作り見学・元庄屋の邸宅訪問で着物体験し伏見稲荷や東福寺を散策のコースがあります。
・ショート体験プログラム
あまり時間が取れない旅行者向けの、京町家でのショート体験プログラムです。こちらの特徴は依頼を受けてから速くて2時間後、遅いときでも翌日にご希望のプログラムが用意されることです。ワックジャパンは、2009年12月に、京町家に拠点を移し、そこで本格的なショート体験プログラムができるようになり、今後のサービスの核になると期待されます。
日本の家庭料理(照り焼きチキン/巻きずし)・茶道・華道・書道・折り紙・着物着付けとお茶・着物着付け・和紙細工・琴演奏体験・普段のお茶3種とお菓子・日本語レッスンのコースがあります。
・その他お勧めプログラムアレンジ
京都にはすばらしい伝統文化を紹介できる方々がたくさんいらっしゃいます。地元企業ならではのネットワークを駆使し、特に外国の方に向いているサービスを厳選して随時提供しています。
◆団体向けサービス
国際会議、インセンティブ(報奨旅行)、スパウズ・プログラム(同伴者プログラム)など、様々なプログラムがあります。文化体験を組み込むことにより、会議や報奨旅行をより印象深く有意義なものにしています。茶道、華道、書道をはじめ、剣道、空手、利き酒、着物体験、折り紙、料理体験、太鼓などあらゆる文化体験が可能となっています。体験に使う場所の選定に関しても、世界遺産級の寺社から、市民ホールのような公共の施設まで、お客様のご予算とニーズに臨機応変に対応しています。
ワックジャパンのあゆみ
ワックジャパンの創業者小川にとって、若い時の海外での在住経験で最も心に残ったのは、一般の人との交わりでした。一方、1990年代後半の日本では子育てを終えた後の主婦が社会に出たいと思っても、その力を発揮する場がなかなかありませんでした。そこで、国際交流に関わる仕事で、女性の能力を生かす創造的な仕事を作り出し、京都や日本の発展のために役立ちたいという創業者の熱い思いで出発しました。資本金300万円で、初年度の売り上げは60万円、5年ほど赤字が続きましたが、多くの方々からの支援や、関係者、利用者からの口コミで評判が広がり徐々にプログラムの種類を増やしています。
2008年には、経済産業省と国土交通省から、地域資源活用新事業展開支援事業の対象企業として認定を受け、2009年末には、京都市内の京町家に会社を移し、そこでの体験サービスのさらなる充実を図ろうとしています。
活躍する女性たち
日本では、多くの女性が専業主婦として家庭の中で大切な役割を果たしてきました。外で活動する機会が少なくても、自己啓発を続けている多くのすばらしい女性がいます。そういう女性たちがワックジャパンで、力を発揮しています。また、ここでの活動を通じて大学で日本文化を教えたり、通訳ガイドの資格を取ったりして、活躍の場を広げている女性もいます。
ワックジャパンで働く女性たちをみて特に欧米からのお客様は、従順で控えめな古い日本女性のイメージを払拭し、新しい日本女性のイメージを持って帰国される方が多く、それはとても肯定的な現代の日本の姿として受け取られています。また、女性によるユニークなビジネスということで、会社自体に興味を持たれる方もいらっしゃいます。こういったことも、体験の中で外国人の方と直接お話しをし、互いの意見を交換することによって生まれてくるもう一つの成果ではないでしょうか。表面的な観光だけではなく、現在の日本の人々の様子をそのままをみていただけるのもワックジャパンのプログラムの強みです。
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