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第4回 JTB交流文化賞 受賞作品紹介
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農家蔵保存利活用とグリーン・ツーリズム
特定非営利活動法人尾上蔵保存利活用促進会
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蔵の景観維持とグリーン・ツーリズム融合の地域づくり
農家蔵保存利活用とグリーン・ツーリズムの写真 青森県の津軽平野の中心地、弘前市に隣接する旧尾上町(現平川市)において、農村風景を特徴づける農家の蔵を現代にも通じる価値の発見と、それを活用した農村文化理解を求めるグリーン・ツーリズム事業展開により蔵を活用した地域づくりと、修学旅行農作業体験ファームステイやエンカレッジスクール、セカンドスクールの受入れを旅行会社との連携で推進しています。

取組みの背景と経緯
蔵・庭園・生け垣の多い地域

 旧尾上町(現平川市)は青森県南津軽郡の中心に位置し、西に岩木山、東は八甲田山系に囲まれ、人口約10,500人、面積18.87ku(東西9.6km南北3.7km)で、米とリンゴ生産を主体とする農業の地域です。昔から行商が盛んな地域であるとともに、植木販売・造園業者が多く存在しています。町内には蔵と「庭(つぼ)」と呼ばれる庭園が多く、農村アメニティコンクール優秀賞や農村景観百選など各種の農村景観賞を受賞し、全国的にも高く評価されています。農村景観を特徴づけているのが蔵であり、334棟の蔵が現存し、所有者の約94%が農家の方々となっています。
 町内の蔵で、最も古いものは1858年(安政5年)に建造された蔵であり、終戦後、小作人から自作農となった農家の目標は蔵を建てることでした。成功の証とされた蔵は、昭和25〜38年代の建造ブームを経て現在の数を数えます。当地の蔵は、1階が農産物の貯蔵蔵、2階が文庫蔵であり、出荷調整による農業経営基盤の確立を実現した蔵は、嫁婿を貰う判断基準の一つとなるなど、地域の繁栄の象徴とされてきました。しかし今日、蔵は富の象徴としての価値観や景観としての評価も地域では低下し、蔵の減少が危惧される中、町内外賛同者26名で平成14年1月に当会を設立しました。


活動の概要
農家蔵の新たな価値を再発見・文化継承

 設立以来、平成15年の「NPO法人 尾上蔵保存利活用促進会」への移行を経て、「蔵保存と利活用促進、グリーン・ツーリズム事業の推進基盤の確立と事業定着拡充」を目的に、
(1)蔵の調査と蔵マップの発刊
(2)会報『蔵ジャーナル』の発刊
(3)蔵フォーラムの開催
(4)蔵・農家庭園ウォッチングの開催
(5)農作業体験ファームステイ・セカンドスクール・エンカレッジスクールの受入
(6)ぶどう・りんご・花木収穫体験の開催
(7)蔵所有者懇談会の開催
(8)受入れ農家懇談会の開催
(9)古農具の収集・展示
(10)蔵の利活用拠点づくり、蔵並みの環境整備に関する提言
(11)登録有形文化財調査及び登録申請
(12)年賀葉書寄附金助成採択蔵の補修工事実施
(13)遊休農地の利活用に関する提言及び遊休農地活用事業サツマイモ・枝豆栽培収穫体験の開催
(14)教育修学誘致活動
(15)冬のツーリズム尾上農家蔵物語開催
など、価値が見失われその存続が危ぶまれていた蔵の保存と、蔵を活用するG・T事業を展開し、旧尾上町ならではの農村文化の発信を行ってきました。


活動の特徴
農家蔵を農村文化の発信拠点に

 農村景観が維持された町として各種の賞を受賞し、全国的にも高く評価されている街並み(蔵・庭園・生垣)を、他市町村にない地域のオンリーワンと位置づけ、蔵の保存と、その利活用促進及びその一環としてG・T事業を推進し、近年では失われつつある農業と農村の持つ豊かさ、農村文化の漂う地域づくりを目指し、蔵所有者及び地域住民、都市住民(消費者・学生・子供)による地域づくりを展開しています。


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※賞の名称・社名・肩書き等は取材当時のものです。