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トップ > JTB地域交流トップ > JTB交流創造賞 > 受賞作品 > 交流文化賞(組織・団体対象) > 語りのある街・桜川市真壁町
第4章 真壁のひなまつり(平成15年〜) 人が動くとものごとが動きます。平成15年2月に、数名の有志の小さな思いから真壁町を一変させるような大きな出来事が起きます。それが“真壁のひなまつり”(2月4日〜3月3日開催)です。 平成14年の暮れ、「寒い中、真壁に来てくれる人をもてなせないか」というつぶやきから、「街中にお雛様を飾ろう」という発想が飛び出しました。 翌15年1月下旬、有志たちがお雛様を飾っていると、それを見ていた住民たちも自主的にお雛様を飾り始め、いつの間にか約40軒にお雛様が飾られました。 有志たちはこのような動きに感激し「お雛様を通して、和の文化・和む心・人の和が広がってほしい」と、その思いに“和の風”と名前を付けました。 2年目以降も、お雛様を飾る家や店は次々と増え、6年目となる今年(平成20年)は約160軒に飾られるようになり、観光客も10万人を超えるようになりました。 このようにして始まったひなまつりですが、自慢したいことがいくつかあります。 まず1点目は“3つのない”です。3つのないは“会を作らない・補助金を貰わない・人に頼らない”ということです。従来の、実行委員会を作り、補助金を貰い、誰かにお願いするというやり方とはまったく逆の発想です。普通ではあり得ないこのやり方が功を奏し、誰もが自由に参加できる雰囲気を醸し出しました。実行委員会等がリードするのではなく、“ひなまつりの主役(主体)はお雛様を飾った皆さん”というスタイルが自然に出来上がりました。 2点目は“おもてなしの心”です。真壁のひなまつりの最大の特徴はおもてなしです。もともと始まりが「真壁に来る人をもてなそう」ですから、皆さんが当たり前のようにおもてなしをしています。家によっては、お茶や甘酒を振る舞ったり、お漬物なども出しておもてなしをしているところもあります。 物売りばかりが目立つ観光地に比べ、物売りよりも“おもてなしの心”を大切にする真壁の人たちの姿は、日本の懐かしい心の風景なのかもしれません。 3点目は“みんなが楽しむ”です。先述したように、真壁のひなまつりは参加自由型です。自宅にお雛様を飾り、人との出会いとおもてなしを大切にするだけでいいのです。 また、女性の中には手作りのお雛様や人形、つるし雛などを作り、お雛様のまわりを飾っています。手芸等の趣味のある女性にとっては、ひなまつりは作品の発表の場であり、どこかの展示会場を借りるよりもはるかに多く人に見てもらえるそうです。 それと、もうひとりの主役が子どもたちです。3年前(平成17年)、真壁小学校6年の男の子たちが「ひなまつりに協力したい」と、版画のポスター100枚を作ってくれました。ポスターには少年たちの思いがこもっており、今までに見たどんなポスターよりもステキでした。 翌年(平成18年)には、女の子たちが茨城県内で行われているひなまつりを線でつないだ“茨城ひな街道”を考えました。この話しに感激した有志はポケットマネーでチラシ10,000枚を印刷、県内各地のひなまつり会場に配りました。少女たちの思いのおかげで茨城県内のひなまつりがひとつになったのです。 さらに、当初、有志たちだけで実施してきた“和の風流し雛”も、真壁小学校6年生の卒業記念行事として定着しました。 平成19年から10万人を超える人出となりましたが、あえて言いたいのは、「たくさんの人が来たから成功ではなく、みんなが楽しんだから成功」なのです。 誰もが自由に参加できるひなまつりは単なる人寄せイベントではなく、“人の和”の大切さを教えてくれる物語のようです。 ひなまつりを見に来た人からも「懐かしい故郷に帰ったようでした」とか「久しぶりに家にあるお雛様を飾りました」という便りも届き、真壁から“和の風”も大きくが広がり始めました。
第5章 語りのある街 ひなまつりを通して、真壁町は大きく変わりました。今では、「自分たちの手でできることから」が合言葉となり、個人による蔵の修景や開放、オープンガーデン、“すいとんでまちおこし”など、さまざまな取り組みが自主的に行われるようになりました。真壁町の皆さんは、長く失っていた誇りを取り戻すことができたようです。最近は「真壁はとてもよいまちですよ」とあいさつする人たちをあちこちで見かけるようになりました。 ひなまつりは私たちに人との出会いの大切さを教えてくれました。そして、「語り」こそが最大の資源ということに気づかせてくれました。 昨年、まちづくり真壁で普段の生活の中にある「語り」をテーマにまちおこしを考えていたところ、タイミングよく筑波大大学院生と出会い、大学院生協力のもと“語りでまちおこしプロジェクト”を立ち上げ、「語りのある街」のメッセージとイメージポスターを作りました。 そのメッセージは次のように書かれています。 もう一度行きたくなる街は どんな街ですか ・・・またあの景色が見たい ・・・またあの料理が食べたい またそこに居る人に会いたいから 真壁のよさ それは人のあたたかさ ゆっくり歩いて人にふれ 真壁のよさを感じとってほしい 人を通して街を知る 新しい観光スタイルの提案 それが語りのある街 古い街並みは日本各地にたくさんあります。しかし“真壁にしかないもの”があります。 真壁にしかないもの、それは真壁に住んでいる人なのです。 皆さんのまちでも同じです。そのまちに住んでいる人こそが一番魅力的な資源なのです。 いろいろと取り組んできた結果、やっと辿りついたのが人との出会いを大切にする等身大のまちづくり“語りのある街”でした。 そしてこの語りのよさをPRしようと、今年は「真壁語り博」という催しを計画し、ちょうど現在10月から11月にかけて開催しているところです。 真壁町は無理して背伸びしても一流の観光地にはなれませんが、足元をしっかりと見つめていけば、一流の“歓交地”にはなれると思います。 最後に、「もう一度、行きたくなる街はどんな街ですか」このことを投げかけて結びとします。
おまけ 「旅先で優しくされるとその街が好きになる・・・」 これが今後の新しい観光スタイルではないでしょうか。 よいまちは訪れてもよいまちです。観光においても、よいまちをつくることが大切と感じています。 まちづくりは、ほんのひとにぎりの人間から始まり、多くの人間が仲間となり、まちがつくられていくのです。今の真壁町はまさにそのような取り組みの真っ最中です。 私たちはたくさんの人が来ることを望んでいません。真壁に来てくれた人たちが故郷に帰ってきたような気持ちになってもらえたら、それが一番の喜びです。 機会がありましたら、観光でなく歓交に来てください。