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JTB交流文化賞
交流文化が広げる未来
第4回 JTB交流文化賞 受賞作品紹介
交流文化賞
最優秀賞
小さな離島の未来への挑戦!
NPO法人おぢかアイランドツーリズム協会
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島を丸ごと生かした多種多様な体験プログラム
小さな離島の未来への挑戦!の写真  当協会で直接請け負うプログラムは、以下のとおり。すべて協会職員9名と非常勤となる島民インストラクターが行う。民泊民家の登録は現在約50軒だ。
●シーカヤック、トレッキング、シュノーケリング、野外活動ゲームなどの自然体験
●歴史文化・観光案内(野崎島・小値賀島・その他の島々など)
●民泊・島暮らし体験(民泊と農業・漁業・マリンクラフトなど各民泊民家での体験)
●島での自然文化歴史体験など(農業・漁業・畜産・郷土料理づくり・わらじづくり・焼きもの・ハンドベルなど。おもに団体向け)

 「夏季・子ども」偏重が見られた顧客傾向も、現在は脱却。年間を通して魅力を発信できる多様な体験プログラム、そして積極的な営業、さらに「島のコンシェルジュ」として現地コーディネーターならではの役割を担うことで、年間と通して集客を実現した。


おもな事業
 ●子ども自然王国・宝島
 この事業は、春・夏・冬休みを利用した中長期の子ども自然体験キャンプ事業である。全国から年間延べ1000人近くが参加し、参加者は40%近いリピーター率を誇る。毎回最終日にはスタッフも子どもたちも一緒になって涙する姿が印象的だ。「他ではできない体験をして、子どもが明るくなって帰ってきました!」(保護者)「他の学校に親友ができた!!」(参加者子ども)。参加者が集うBBS(インターネット上の掲示板)では「最近みんなどうしてる?僕は元気だよ」など、キャンプをきっかけに深い友情を築く子どもも多い。

 ●島らいふ子ども丸ごと探検隊
 3連休を利用した、民泊と自然体験活動を組み合わせた主催・募集型ツアーで通年開催している。民泊2泊という短期で気軽に参加できる設定にしたことが功を奏し、宝島に続く人気企画に成長した。「前と同じ民家さんがいい」という子どもからのリクエストも多く、民泊民家へのリピーターも育ってきている。

 ●子ども農山漁村交流プロジェクト・そして修学旅行
 今年度から農林水産省・総務省・文部科学省の連携施策「子ども農山漁村プロジェクト」がスタートした。小値賀は「先導型モデル地域」(全国14地区)認定を受け、独自の営業で受け入れ校6校を獲得。これまで蓄積してきた体験活動やコーディネーターとしての実績を生かし、学校の要望に細やかに応じたプログラムづくりを行った。結果ほぼ全ての学校から「素晴らしかったのでまた来年も」という声が届いた。
 さらに今年度4月には実績とリスクマネジメントなどが評価されJTBグループと「農山漁村生活体験業務委託契約」を結び、来年度より関東関西からの修学旅行の受け入れが決定、のべ1,200名の来島予定が現実のものとなった。

 ●2年連続「世界一」に輝いたアメリカ国際親善大使派遣プログラム
 インバウンド事業のなかで、最も注目すべき成果は「アメリカの民間教育団体『ピープル・トゥ・ピープル』による国際親善大使派遣プログラム(以下PTP)」が大成功をおさめ、2年連続で「世界一」の評価を得たことである。
 小値賀には6月中旬からの約1ヶ月間に20数名×9グループ=約180名が来島し、平成19年度は2泊3日、そして世界一の高評価(後述)を受け、平成20年度は1泊増の3泊4日となった。
 民泊民家、町や教育委員会、商工会や島民ボランティアスタッフなどで「おぢかPTP歓迎委員会」を組織し、全島をあげてアメリカからの高校生の受け入れ体制を整えた。PTP事業における町内の交流人口は延べ約2,000人、総人口の三分の二にものぼる。プログラムは民泊、島内観光、学校交流、自然体験、漁師町さるく(古い町並みのさるく、お寺での念仏修行体験など)。
 お見送り式では毎回、島人・アメリカの高校生がお互いに涙、涙の別れとなった。「こんなに親身にお世話をしてもらったのは生まれてはじめて」「小値賀島での時間を生涯絶対に忘れない」などアンケートも高評価が多く見られた。
 さらに驚くべきことに世界各地へ約2〜3万人が参加したPTPの全46〜48プログラム(※1)の中で小値賀・平戸のプログラムが世界一の評価(満足度90%以上、2位と大きく差をつけての1位だそうだ)を得ることができた。この結果は「真に伝統的なものが国際的に通用する」ということを見事に物語るものだと思う。
※1 平成19年度・20年度で数字に差があることから「●〜●」という形で幅をもたせています。


●アレックス・カー氏とおぢか
 東洋文化研究家でYOKOSO JAPANキャンペーンの観光大使であるアレックス・カー氏は数年前に訪れて以来、小値賀をいたく気に入っていただいている。2007年7月全国放映されたTBS系「情熱大陸〜アレックス・カー氏編〜」においても小値賀(野崎島)が話題となったことから大きな反響を得た。放映1年以上たった今でも番組をきっかけに来島する人は後を絶たない。2008年2月にはアレックス氏が小値賀町観光まちづくり大使に就任したこともあり、マスメディアでの小値賀の認知度アップはこの数年とどまるところを知らないほどである。さらに「古民家再生」や「インバウンドプログラム作成」などアレックス氏とのコラボレーションも始まっている。


最大の実績は「自律経営」
 こうした事業展開で初年度(平成19年度)の実績は、総収入約6,000万円、集客数約6,000人泊(平成17年度比400%)、事務局常勤スタッフ7名であった。
 2年目にあたる今年度の決算見込みは、総収入約1憶円、集客数約8000人、事務局常勤スタッフ9名、非常勤スタッフとして活動を支える会員は約100名、島外でNPO活動に賛同する賛助会員は約50名だ。
 そして最大の実績は、「自立的経営をしている」ことである。町・県からの運営補助金を「0」にし、事業収入によって人件費などの経費をまかなうことができた。これを基礎に、「KKおぢか観光まちづくり公社」が今年度中に設立され、第3種旅行業も含めて本格的な総合観光サービスを展開する地域密着型の民間企業が立ち上がる。


おぢかの変わらない地盤とこれから

小さな離島の未来への挑戦!の写真  おぢかIT協会の活動を続ける地盤は「小値賀の島々のすべて」にある。「島をどうにかせんば」という一部の有志で始まったこの活動は、国内外から島へ訪れる人々の声(「昔のままの自然と生活が何よりも癒される」「飾らない受け入れ姿勢に感動した」など)によって、島の人たちが自らの「島の自然と暮らしぶり」に誇りを持ち、その素晴らしさを再認識するきっかけとなり「それならば」と町民全体に広がってきている。
 当初、数人の受け入れで始まった民泊事業もいまや200人を超えるキャパシティーを擁し、体験インストラクターに島の若者の姿が目立ち始めた。また、島外から「島の魅力とその交流活動の素晴らしさ」に感銘を受け、移住者やリピーターになるなど「おぢかのファン」になってしまう人々・団体はありがたいことにどんどん増え続けている。
 私たちはあえて、奇抜なハード(建物)やソフト(企画)ではなく、「そのまんま」を大切にしてきた。私たち島民が大切に、かたくなに守ってきた島の未開発の自然と半農半漁・自給自足の生活は、不便だが、持続可能な未来型の、人間らしいものであり、それこそが現代に求められていると確信してきたからである。小さな島で寝食をともにした交流ののち、お別れのとき、私たち島民は「おぢかのファンになりました」「ありがとう。また来ます」という言葉や別れ際の涙にどれだけ感動し、助けられ、励まされることだろう。
 “小さな離島の未来への挑戦”はまだまだ始まったばかり。「そのまんま」を大切に、そしてあらゆる人々、団体にも「小値賀島のコンシェルジュ」であり続けたい。 島のなかから外から島を愛してくださる人たちとこれからも絶えることなくつながり続ける。小さなおぢかの未来はきっと明るい!!



評価のポイント
五島列島北端にある旧平戸藩の典型的な過疎の島。地域資源を最大限生かした取り組みを行い、PTPでは全島あげてアメリカの高校生を受け入れ世界一の評価を得ている。子ども自然体験キャンプ事業、インバウンド事業、民泊事業と着実に実績を上げて自立経営を実現したことを高く評価。
※PTP:アメリカの民間教育団体『ピープル・トゥ・ピープル』による国際親善大使派遣プログラム

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※賞の名称・社名・肩書き等は取材当時のものです。