ケーススタディ
CASE STUDY
お客様事例
「ふるぽ」に参画した自治体様の事例
ふるさと納税の成功によって、
町に活気があふれています
鹿児島県・大隅半島の東南部に位置する大崎町。南には志布志湾を望み、北には広大な台地が広がる、温暖な気候と豊かな湧水に恵まれた農業主体の町です。
大崎町は人口減少と厳しい財政難に直面しながらも、2015年にJTBふるさと納税ポータルサイト「ふるぽ」に参画し、ふるさと納税の受入件数・金額を飛躍的にアップさせることに成功しました。大崎町の東 靖弘町長にポータルサイト「ふるぽ」による効果、それに伴う町の変化などについて伺いました。
JTBと連携することで、町の「殻」が破れていくのを感じた
大崎町が「ふるぽ」に参画したきっかけを教えてください
最初に、ふるさと納税に力を入れようと決めた理由は「財源の確保」でした。自治体を運営していくための原資は主に町民からの税収です。しかし、それだけだと、この小さい町では子育てや教育などに十分な予算を配分できませんでした。子育てや教育の環境を大切にしたい。「住んで良かった」と言える町を作りたい。そういう強い思いがあるのに、なかなか実現できない状況だったのです。
そこで重点的に財源の確保を取り組もうと考えた時に「ふるさと納税しかない」と思いました。そして2015(平成27)年4月から、JTBさんが運営する「ふるぽ」に参画することにしたのです。そこからは命がけというくらいの気持ちで、職員一丸となって取り組みました。
JTBのサポート体制はいかがでしたか
私たちは、ふるさと納税に対して意欲はあっても全国にPRするノウハウを持っていませんでした。「ふるぽ」に参画する以前も、ふるさと納税の担当職員と県庁に行ったり、地元のメディアなどを通じて広報したり、内製でウェブページを作ったりしていましたが反応は芳しくなく苦戦していました。
「ふるぽ」に参画した当初は、JTBさんの力を借りて、というよりもほとんど頼りっぱなしのような状態でした。JTBの担当者さんは頻繁に大崎町に来てPRの方法などを指導してくださるのです。さまざまな市場調査の情報や、全国の自治体の取り組みについてなど、私たちが知り得ない新しい情報も惜しみなく教えてもらえて驚きの連続でした。「あの地域がこういう取り組みをしているなら、大崎町も何かできないか」など、そういう相談もよくさせていただいて、「この分野で事業進出ができますよ」といったヒントもたくさん提供してくださいました。
私たちが前向きになれるお話をどんどんしてくださって、それを基に担当職員と打ち合わせを重ね、インターネット上で大崎町のたくさんの商品や情報を全国に発信していくことができました。自治体の意欲だけではなかなか前に進めずにいましたが、JTBさんと連携することによって、町の殻が破れていくように感じたのを覚えています。
町の事業者が元気になって、役場と町民に一体感が生まれてきている
大崎町が「ふるぽ」に参画した2015年度、ふるさと納税の受入数が大幅に増えました
その結果を見ていかがでしたか
「ふるぽ」に参画する以前の2014年度のふるさと納税は受入件数539件、受入額1,092万円ほどでした。それに対し、「ふるぽ」に参画した2015年度は受入件数6万3731件にまで増え、受入額はなんと27億円を超え、その年度の全市町村でNo. 1の受入額を記録しました。27億円のうち町が使える額は約9億円。町のすべての税収は約11億円なので、それにほぼ匹敵するような確保でしたから、ものすごく嬉しかったですね。
その後も2016年度が約16億円、2017年度が約23億円と大きな額をいただけています。私たちだけではきっとこの数字には到達できなかったでしょう。「ふるぽ」に参画し取り組んできて本当に良かったです。
ふるさと納税が盛り上がってきたことによって町に変化はありましたか
ふるさと納税に参加している町のお店屋さんなど、いわゆる小規模事業者の方々が、ものすごく元気になってきています。小さな町ですので、これまではお店にお客さんが来なかったら物が売れないという状況でした。しかし「ふるぽ」を活用したこのふるさと納税においては「客待ち型」から「発信型」の営業ができるようになりました。全国の皆さんとネット上で商品をどんどん取引できますから、事業者の皆さんの気持ちにも勢いが出てきています。
なかでも印象に残っているのは、ある大工さんです。その方は足を悪くされて、ずっと仕事ができない状態でした。小さいまな板を作っておられたので、ふるさと納税に参加していただいたのですが、その後しばらくして、その大工さんにお会いしたら普通に歩いていたのです。ふるさと納税にまな板を出品したことで気持ちが前向きになって、すっかり足も良くなったのです。それは本当に感動する出来事でした。その大工さんのまな板は、今でも大崎町のふるさと納税の返礼品として出しているのはもちろん、道の駅や他のウェブ媒体でも販売してます。まな板だけでなくふるさと納税がきっかけで新しい商品も生まれているのですよ。
その方だけでなく、他の事業者さんも新商品の開発に力を入れるようになりました。役場の2階にある企画調整課の窓口には「こういう商品を作りたい」と言って、多くの事業者さんが足繁く相談に来られるようになりました。
結果的にふるさと納税は役場の職員さんと町民の方々のコミュニケーションツールにもなっているのですね
そうですね。担当職員と事業者さんと集まっていろいろな協議をしていくなかで、役場と町民の一体感が生まれてきたと感じています。以前は役場の2階に来る人は、ほとんどいなかったのですが、自分の商品を持って日常的にお話に来てくれて、訪れやすい役場になってきたと思います。また、事業者さんたちの間でコラボ商品も生まれています。商売敵という壁を超えて、また業種間の壁も越えて、活発な取り組みが始まっているのは、とても嬉しい傾向です。
ふるさと納税を通して県外に発信していきたい大崎町の魅力を教えてください
いちばんPRしたいのは、やはり大崎町の豊かな農作物、畜産物、水産物です。大崎町の農業生産額は全国でも上位。2014年度では全市区町村1,724の中で24位でした。それほど農林水産業のすべてにおいて、すごく盛んな町なのです。
ふるさと納税の返礼品のなかで最も人気があるのはウナギです。大崎町が位置する大隅地域はウナギの養殖が盛んで、日本一の生産量を誇る企業が大崎町にあるのですよ。
しかし、これまでは町でいいものを作っても大崎町という産地を知っていただけていない状態でした。ふるさと納税は、それらに触れていただき、さらには「大崎町ってどんな町だろう」と思っていただくきっかけにもなっていると思います。
もうひとつは、大崎町は豊かな自然環境を守るために町全体でリサイクルに取り組んでいて、11年連続リサイクル率日本一を継続中です。ふるさと納税においても、そこに魅力を感じて大崎町に協力しましたという方もいらっしゃいますから、ふるさと納税はそういう町の一面も世間に周知してもらえる機会でもあります。
ふるさと納税を生かし、民間のスピード感を取り入れて町を変えていきたい
大崎町ではJTBと人材交流があり、全国的にも珍しい試みでしたね
大崎町としても前例がないことだったのですが、私から申し出て2018年9月までの約1年間、担当職員をJTBさんの社員として雇っていただきました。地方創生を事業として捉えると、行政も民間の手法を学ぶ必要があるとずっと感じていました。JTBさんは観光においても、ふるさと納税においても日本の第一人者なので、そういう企業から学ばせていただきたいと思ったのです。
出向した職員は、営業担当として九州内の各自治体を回ったそうです。これは町職員としては貴重な経験です。最初はやはり民間企業のスピード感に苦労したようですが、今では非常にたくましく成長しました。9月で役場に戻ってきますが、この経験をふるさと納税の現場にも生かして、さらに大崎町を飛躍させてくれることを期待しています。
今後、JTBとどんな風に活動していきたいですか
JTBさんとは本当に強い絆が生まれています。心の通った関係が築けているので、その信頼に応えていきたいです。そういった親密な連携のなかで、いま私の心には、民間の感覚を持った役場運営をしていきたいという思いが芽生えてきています。
行政では業務の進行が民間企業よりも遅い面がありますが、即座に判断し、すぐに担当職員に指示するというスピード感のある運営をしたいですし、いま実際にできるようになってきていると感じています。
「ふるぽ」に参画してから、ふるさと納税の原資を利用して町民の皆さんへのサービスも拡充させることができました。とくに子ども医療費については、以前は小学生まででしたが、現在は高校3年生まで助成することができるようになりました。また、学校給食も現在では月額から約2000円の減額を実現しています。これまでのやりたいことができない窮状を着実に打破することができて、町の皆さんの行政に対する視線も変わってきたと思います。
最後に、大崎町の将来の展望を聞かせてください
いま大崎町は少子化、高齢化、人口減少という課題を抱えています。それらを解決するためにも、お子さんのいる20・30代が住んでくれるように、ふるさと納税で得た税収を子育てや教育に投資して若い人たちが注目するような教育力の高い町を作っていきたいですね。
いまはある程度財源を確保することができたので、少しずつ町の教育環境は変わっていくと思います。JTBさんと連携し、勉強させてもらいながら、まだまだ町を良い方向へ変えていきたいですね。
大崎町町長 東 靖弘さん
昭和19年6月2日生まれ。大崎町役場総務課長を経て
退職後、57歳で町長に就任。現在5期目。
(9:30〜17:30/土・日・祝休み)