平井理央のスポーツ大陸探検記

Vol.2

2018.12.18

大畑大介氏に聞く!~後編~
ラグビーワールドカップ 2019™
ラグビーの魅力や観戦ポイント

前編(ラグビーワールドカップ 2019™日本で開催されるということ)に引き続き、元ラグビー日本代表で、ラグビーワールドカップ 2019™ 日本大会アンバサダーを務める大畑大介さんに、ラグビー競技の魅力や W 杯の観戦ポイントなどをうかがいました。


※撮影:平井理央



ラグビーは多様性のあるスポーツ。自分の好きな要素に当てはめて楽しめる

平井理央さん(以下、平井):これまでラグビーを見たことがない、生で観戦したことがない人たちもいると思いますが、そういうラグビー初心者はどういうところに注目をしたらいいですか?

大畑大介さん(以下、大畑):「ラグビー」って、切り口がいっぱいあると思うんですよ。大きな選手もいれば小さな選手もいますし、力自慢の選手もいれば、スピードがある選手もいます。ラグビーは格闘技であって球技であるように、とても多様性のある競技です。だから、自分がどういったスポーツの要素が好きなのか当てはめて観てもらうのも、ラグビーの楽しさのひとつだと思います。

平井:競技を見たことがない人にとっては、選手から入るというのもありますよね。

大畑:それも大きなポイントですよね。ほんとにいろんなキャラクターがいますよ。あとは純粋にグランドの中で聞こえる音っていうのもぜひ聞いてもらいたい。

平井:音ですか?

大畑:人と人がぶつかるとこんな音がするんだ、というのを感じられるのもラグビーならではですし、試合の中での人間臭さとかもラグビーの面白さだと思います。



平井:スタジアムの雰囲気はどんな感じですか?

大畑:ラグビーってちょっと不思議なんです。前回大会の南アフリカ戦もそうですけど、AチームとBチームが試合をするとなったら、ファンの目線としてはAとBに分かれますよね。自分たちが応援するチームが負けたら悔しくて、勝ったら喜ぶというのももちろんありますが、ラグビーの場合、いい試合になればそれだけではないんです。
普通に考えれば、南アフリカのファンの人たちは日本に負けたことは悔しくて認めたくないけど、スゴイことが起きたというのはわかっています。俺たちは歴史的瞬間に立ち会えた、ラッキーだ、という感じになる。だから、日本代表に対して全員が称賛の拍手を送る、このようなことが起こるのもラグビーの良さですね。

平井:そういう試合をスタジアムで見たいですね!

大畑:ほんとに不思議で、いいプレイには全員で盛り上がるし、ちょっと失敗したら全員でガックリ、等のその場でしか味わえない一体感を感じられるんです。

平井:面白いですね。敵対する相手チームでも良いプレイには敬意を払い、見せてくれてありがとうという気持ちがスタジアム全体に生まれるっていうのは、ラグビーならではかもしれませんね。



ボーダレスな応援とファン同士の交流
2度の大会出場で実感したラグビーという競技とW 杯の凄さ

平井:大畑さんは現役時代に 2回W杯に出場されていますが、それぞれの大会の雰囲気は今でも覚えていますか。

大畑:もちろん、覚えていますよ。99年は開催国のウェールズと一緒のグループだったので、開催国と試合をするという経験ができました。 8万人が入るスタジアムで、7万 8000人がウェールズファン、2000人ぐらいが日本を応援しようかな、くらいの雰囲気の中で試合をしました。
何がスゴかったって、街中のホテルに泊まっていたのですが、夕方からの試合にも関わらず、朝起きてカーテンを開けた瞬間、街中が真っ赤に染まっているんですよ。ウェールズの赤のユニホームを着た人がいっぱい。

平井:えぇ~!朝からですか?

大畑:はい、試合まで待ちきれず、楽しみで仕方がないファンの人たちが街中に溢れ返っているんです。当然、会場はすごい空気感で、あの空間は自分たちにとって最高の思い出ですね。開催国と試合ができたことで、今まで感じたことがない程の周りの人たちの熱狂を感じ、初めてラグビーって凄いな、W 杯って凄いなと感じた大会でした。

平井:忘れられない感覚ですね。2003年オーストラリア大会はいかがですか。

大畑:大会1年前からオーストラリア北部のタウンズビルで事前キャンプをしました。サッカーのカメルーン代表が大分の中津江村でずっと生活していて、地元の皆さんに応援されていたように、僕たちはフランス、スコットランド、フィジーと 3試合したんですけど、スタジアムはもう、ほぼほぼ日本を応援しようという雰囲気になっていました。国は違いますけど地域の人たちに応援される喜びを感じた大会でした。

平井:そういう思い出があるとまた行きたくなりますね。

大畑:当時、海外にほとんど行ったことがなかった妻の両親が応援にきてくれました。息子が遠く離れたオーストラリアで試合をしているにも関わらず、沢山の声援を受けているのを見て、義母もいい思い出になったようです。
今回、日本W杯は全国 12会場ありますが、観に来られた方にとってそれぞれの会場が思い出の地になってもらえたらうれしいなと思いますね。



平井:スポーツは国境を超えるというのはプレイヤーだけの話ではなくて、観戦に来られる方や開催する都市の方にとっても当てはまるんですね。

大畑:この時、義母は僕があげたユニホームを着て応援していました。義母は英語がほとんどわからないのですが、試合中隣の席のスコットランドファンの人たちとすごく盛り上がって、試合後に何か交換しようよという話になったそうです。義母は何も持ってないから着ていた僕のユニホームをプレゼントしちゃって。相手から何をもらったかというと、よくわかないスコットランドの人形でした(笑)。

平井:ユニホームが人形に化けてしまった(笑)。スタジアムで国際交流が生まれたわけですよね。

大畑:ひとつの試合でお互いが共通の価値観のもとに盛り上がって、お互いにエールを交換する…。そういった交流が生まれた瞬間だったのかなと思いました。

平井:いいドラマですね。2019年もそういう数々のいいドラマがスタジアムで生まれるといいですよね。

大畑:特に海外のチーム同士でそうした交流があってほしいなと思います。

平井:ラグビーW杯をより楽しむために、私たちスポーツファンはどのようにするのがおススメですか?

大畑:大会に参加してほしいなと思います。

平井:会場に行くということですか?

大畑:会場に行くのもそうだし、イベントに参加するのもそう。足を運ぶとか、何かこう一歩踏み出すことによって、何かしたという手ごたえを感じられますよね。一歩踏み出したら、じゃぁ、もうちょっと見てみたいなとか、当然欲も出てくるので興味に繋がっていくと思います。
毎試合見に行くという、ものすごくラグビー熱がある人もいます。それに比べると自分はちょっと熱量が少ないから参加できてないな、と思ってしまうかもしれません。なので、人と比べないことをおススメします。今までのスポーツに対する携わり方の中で、半歩とか 1 ㎝とか前に踏み出すきっかけがラグビーW 杯であってくれたらうれしいですね。0(ゼロ)から1へ進むのはすごく労力がいるけど、1 から 100 は動き出したら到達できるから。

平井:それは大畑さんだけじゃなくて(笑)。

大畑:だけじゃなくて(笑)。物事って動き出すまではしんどいじゃないですか。0(ゼロ)から1のきっかけがラグビーW 杯であって欲しいなと思います。



興味深いサイドストーリーの持ち主や文句なしの男前!注目したいのはこの選手たち

平井:私はスポーツを見るときに、細かいルールとか戦術というよりも選手や選手のエピソードから入って、そこから見たくなるということが多いのですが、2019 年に向けて、注目の選手を教えてください。

大畑:ラグビーという競技の特性上、なんでこんなに日本代表に外国人選手が多いのって思われる方もいると思います。彼らは子供の頃に日本に来て日本で成長して、そして日本のためにラグビーを頑張っています。それぞれのサイドストーリーにも注目しながら外国出身の選手も応援してほしいですね。個人的には、僕と同じポジションですごく活躍している福岡堅樹選手。彼は世界の中でもトップレベルのスピードがあります。プレイヤーとしての価値はすばらしいものがありますが、2020年のオリンピック大会まではチャレンジして、それが終われば医者を目指すと言っています。だから限られた自分の時間の中で、ラグビーに対して最後の終着地点に向かいながら熱量を持ってアプローチしています。ぜひ注目して見てほしいです。

平井:W杯は世界のトップオブトップが集うわけですよね。海外の注目選手も教えてください。

大畑:ニュージーランドのバレット3兄弟。ラグビーは15人の競技ですが、そのなかに兄弟3人が入っています。それも世界最強のオールブラックスで。その一人である10番のボーデン・バレット選手は、サッカーでいうクリスティアーノ・ロナウドのような選手で、年間最優秀選手賞を取るような素晴らしいプレイヤーです。
それと思い出したくないラグビーファンもいるかもしれないけれど、スコットランドのキャプテンをしていたグレイグ・レイドロー選手。これはもう、ただただ・・わかりやすくすごい男前の選手です。

平井:ただただ、すごい男前って、気になりますね(笑)

大畑:ヒュー・ジャックマンに似ています。もちろん、ラグビーの能力もめっちゃ高いですよ。憎らしいくらいポンポンポンポン、軽々とキックを蹴って決められて前回大会で負けました。だからにっくき相手ではありますが、女性は好きなタイプでしょうね。

平井:W杯だと日本代表だけじゃなくて各国のトップ選手を見られるところも醍醐味ですよね。

大畑:あとは、遠くの親戚よりも近くの他人の方が応援できると思う。

平井:それはどういうことですか。

大畑:キャンプ会場と試合会場でよく目にするチームは親近感がわきますよね。ラグビー選手ってサービス精神が旺盛というか、距離が近いんです。だから選手たちとふれ合ってラガーマンの温かみを感じてもらいたい。

平井:ということは、ラガーマンには気軽に声をかけていいのですね。

大畑:もちろん、声をかけていいと思います。みんなウェルカムで仲良くしてくれますので。

平井:大畑さんのお話をうかがっていると、単純にラグビーを見に行きたくなりますね。W杯がどういう会場の雰囲気なんだろうというのと、そのラグビーファンに自分も染まってみたいです!


大畑大介氏

Profile

大畑 大介

元ラグビー日本代表
神戸製鋼コベルコスティーラーズ アンバサダー
東京五輪・パラリンピック競技大会組織委員会アスリート委員会委員
ラグビーW杯2019 アンバサダー
■生年月日/出身:1975年11月11日/大阪府大阪市出身
■出身校:東海大学付属仰星高等学校/京都産業大学
■所属:神戸製鋼→ノーザンサバーブス(豪)→モンフェラン(仏)→神戸製鋼コベルコスティーラーズ
■所属事務所:株式会社ディンゴ http://dingo.jpn.com/

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平井理央

Profile

平井理央

1982年11月15日、東京生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、2005年フジテレビ入社。「すぽると!」のキャスターを務め、北京、バンクーバー、ロンドン五輪などの国際大会の現地中継等、スポーツ報道に携わる。2013年より、フリーで活動中。趣味はカメラとランニング。著書に「楽しく、走る。」(新潮社)がある。