トラベル&ライフ2-3月号のクルーズ特集では、イタリア船コスタ・デリチョーザに乗船してアドリア海やエーゲ海の魅力あふれる観光地を巡った。今回もさまざまな出会いがあったが、本誌で書ききれなかったこぼれ話を紹介しよう。
まずは、クルーズ発着地となったヴェネツィア。
サン・マルコ広場周辺を半ば迷子になって散策していると、何やらクラシカルな建物が目についた。
「TEATRO ITALIA」の外観
正面の上部を見ると、「TEATRO ITALIA」と書かれているではないか。しかし、劇場にしてはどこかおかしい。買い物袋を提げた人々が出入りしているのだ。
「TEATRO ITALIA」の入り口
中に入ると、そこはなんとスーパーマーケットだった。肉やチーズ、パン、飲み物などがずらりと陳列されている。
天井や壁には立派なフレスコ画が往時のままに残っている
確かにスーパーマーケットなのだが、天井や左右の壁には、立派なフレスコ画が描かれている。
聞いてみると、この建物は1915年にゴシック様式の劇場として建てられたという。その後に閉鎖され、現在はスーパーマーケットとして利用されているのだ。
入り口には、劇場時代を偲ばせる階段もあり、実に品格あるたたずまいである。日本でいえば、歌舞伎座がスーパーマーケットに変身するようなものである。
イタリアの歴史と文化の、奥の深さを実感した。
ギリシアのアテネでは、アクロポリスを訪ねた。
高さ約150mの丘にそびえるアクロポリスはアテネのシンボルであり、世界中からの観光客でにぎわっていた。アテネの守護神・アテナ女神を祀ったパルテノン神殿をはじめ、さまざまな遺跡が点在しているのだが、とにかく広い。しかも坂道が多いので、結構疲れる。
今回は、コスタ・デリチョーザのアクロポリス・エクスカーションのグループに参加して見学していたが、いつのまにかグループを見失ってしまった。
アテネで食べた焼き栗
やむなく、一人であちらこちら回って待ち合わせ場所でひと休みすることに。
すると、路上の一角で栗を焼いている姿を見つけた。炭のコンロで大ぶりの栗を焼いて売っているのだ。
焼き栗といえば、晩秋のパリの風物詩として知られているが、アテネでもこの季節になると名物になっているようだ。
焼き立てを10個ほど紙袋に入れてくれて、値段は5ユーロ。焦げ目のついた焼き栗はいかにもおいしそうなのだが、皮を剥いて、いざ食べてみるとちょっと堅い!焼き方が足りないというか、多分、栗そのものの質のせいなのだろう。それでも、香ばしい栗の風味はなかなかの味わいであった。
ギリシアでは、コルフ島も訪ねた。
南北約60kmの細長いこの島は、オリーブの産地として知られているが、もうひとつの名産が金柑。日本でもおなじみの果実で、ギリシアでは「クム クアット」と呼ばれている。
島で最大規模という「Mavromatis」なる工場で、リキュールを試飲した。アルコール度は20度。かなり甘いが、結構いける。思わぬところでの、日本の懐かしい味わいとの出会いであった。
最後は、エーゲ海随一の観光の島としてあまりに有名なサントリーニ島での出会い。
メインストリートの両側はどこも白い家並みが続いて、頭がくらくらするほどに美しい。眼下には紺碧のエーゲ海が広がり、まさに絵葉書の中を歩いているかのよう。
サントリーニ島のアップルパイ
狭い路地を一人で散策していると、ふと、可愛らしいケーキの店があった。カフェも併設しているようだ。
店内に入ると、「2階のテラスでどうぞ」と案内してくれた。注文したのはアップルパイ。パイ生地は日本のものとはちょっと異なるが、煮りんごがおいしい。ほどよい甘さで、いくつでも食べられそうだ。値段は3.5ユーロ。
エーゲ海を見下ろしながら、しばし美味なるスイーツを堪能した。