ルクセンブルクワインのドメーヌを巡る旅

海外現地ライター便り
2025年01月15日
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海外旅行
旅行記

実は、ルクセンブルクは国民1人当たりのワイン消費量が世界第2位のワイン大国です。なかでもスパークリングワインと白ワインの品質は世界トップクラス。しかし、国内での消費が多く輸出量が少ないので、日本で目にすることは滅多にありません。今回はルクセンブルクでワイン造りをとことん追求する、2つのドメーヌ(葡萄畑を所有し、葡萄の生産からワイン醸造までを一貫して行う生産者)の若手醸造家2人をご紹介します。

Domaine L&R Kox (C)Domaine Kox

1軒目はレミッシュの街にある「Domaine L&R Kox」。現在のオーナーのCorinneはドイツで質の高いワインを醸造する手法を学びました。新しい技術の探求とともに、地球環境へ配慮したワイン造りをモットーにしています。栽培するぶどうは12品種にものぼり、年平均70,000Lのワインを生産しています。ルクセンブルクは寒冷な気候のため、酸味が高いぶどうが育ち、極上のスパークリングワイン「クレモン」が生まれます。また、この気候のおかげで、低アルコールでスッキリとした飲み口のワインとなり、お酒にあまり強くない方でも美味しく飲めるのが特徴です。

ワイン

このドメーヌの生産の約半分をクレモンが占め、40%が白ワイン、5%がロゼ、残りの5%は赤ワインも生産しています。現在はヨーロッパ、北米、マレーシアへの輸出をしていますが、日本にはまだ未到達。国外で人気なのは、ルクセンブルクでしか生産されないぶどうの品種「Rhaifrensch」やフルーティーながらも酸味のある「Riesling」。国内での消費では、フルーティーでマイルドさもある「Pinot Gris」が人気です。魚やチキン、癖のないチーズやグラタンなどの料理と相性がぴったり。

葡萄畑

このドメーヌでは生物多様性に重きを置いており、葡萄畑の中に多様な木や植物、野菜を植えることで、過度な吸熱を避けたり、土壌の肥沃を増加させたりする取り組みをしています。また、ルクセンブルク産のオーク樽で熟成させた、100%メイド・イン・ルクセンブルクのワインを初めて造ったのもこのドメーヌ。オーガニックワインの生産にもこだわり、地中に埋めた甕(かめ)の中で自然酵母を用いてぶどうを発酵させる「クヴェヴリワイン」と呼ばれるオレンジワインをルクセンブルクで初めて成功させました。甕は本場ジョージアから輸入するという本格派。

オーナー (C)Domaine Kox

ドメーヌでは要事前予約で試飲を行なっており、すべてのテイスティングはオーナーのCorinneが説明してくれます。ブラインドテイスティングを基本としており、名前や品種にとらわれず、本当に自分が好きな味を探求することができます。

Domaine Henri Ruppert (C)Domaine Henri Ruppert

2軒目は「Domaine Henri Ruppert」。先代オーナーは1990年代にルクセンブルクのワイン市場の可能性に賭け、大規模な投資を行い、今ではシェンゲンの町のシンボルともなっているユニークなドメーヌ兼レストランを建設しました。そんな先代の意思を継ぎ、9代目オーナーのNicolasがワイン造りを担っています。年間110,000Lを生産するこのドメーヌでは、40%がクレモン、40%が白ワイン、残りの10%ずつをロゼと赤ワインが占めています。

ワイン造り (C)Domaine Henri Ruppert

シェンゲンの土地は、かつて海底にあったため、鉱物を多く含んだミネラルの多い土壌です。そのため、ミネラル分の強いワインが作られます。この土壌はシャンパーニュと似ていて、そのため、シェンゲンで作られるスパークリングワインも非常に質が高いものに。

オーク樽

Nicolasの一押しは、Pinot Blancという品種でできた白ワインをフランス・ブルゴーニュ産のオーク樽で11~12ヶ月寝かせたワイン。そのほか、「Riesling」ワインも人気。実は、このドメーヌは2025年から日本への輸出も開始予定で、日本の食卓で栓を開けることができる日も近いかもしれません。

これらのドメーヌは中央駅から公共交通機関で簡単にアクセスできます。日本に未到達の高品質なルクセンブルクワインに出会ってみませんか?

文・写真=児玉早織
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