エディンバラの隠れた秘宝 ディーンヴィレッジ

海外現地ライター便り
2024年11月15日
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スコットランドのディーンヴィレッジ(Dean Village)は、エディンバラの中心地から徒歩5分のところにある、中世の面影が残っている美しい村です。最近はYouTuberやインスタグラマーの中で「最も絵になる村」として人気となっている今話題のスポットです。
今回は、エディンバラの隠れた秘宝と呼ばれる「ディーンヴィレッジ」をご紹介します。

ディーンヴィレッジ

ディーンヴィレッジは、石畳の道に穀物製粉所や石作りの家屋が小川(ウォーター・オブ・リース:Water of Leith)沿いに立ち並ぶ、中世の面影を残す集落です。
秘宝と言われる理由は、その場所です。エディンバラの目抜き通りのプリンシズストリートから北西へ徒歩5分程にある小道の坂を下ったところに広がる谷に、昔ながらの田園風景が広がっています。

ディーンヴィレッジ(Dean Village)のDeanは、深い谷を意味するデーン(Dene)に由来しています。
ディーンヴィレッジの歴史はスコットランド王・デイヴィット1世が穀物製粉所を所有していたという1145年の記録まで遡ることができます。19世紀にエディンバラに組み込まれるまで、800年以上穀物製粉所の村として独自に栄えていました。ウォーター・オブ・リースの流れを利用した11以上の製粉所が稼働し、エディンバラの街の全てのパン屋に小麦を供給していたそうです。

今はもう製粉者は稼働していませんが、狭い石畳の道、石臼、パン屋の使うオーブンシャベルの掘られた石碑、かつて製粉所だった家などの建造物など、昔ながらの景色がディーンヴィレッジには残されています。
石畳の小道を歩いていると中世の街に迷い込んだような気持ちになります。
それでは、ディーンヴィレッジの見どころを紹介します。


ウェルコート

ウェルコー

ウェルコートは、ディーンヴィレッジの一番象徴的な建物です。スコッツマン新聞のオーナーのジョン・フィンドレイ卿が1880年代に、ディーンヴィレッジの労働者のためのモデル集合住宅として委託建設した赤い煉瓦が使われているヴィクトリア時代の建物です。この建物を小川越しに見る風景が、ディーンヴィレッジの代表的な風景です。


ベルズブレイ・ハウス(Bell's Brae House)

ベルズブレイ・ハウス

ベルズブレイ・ハウスは、目抜き通りからディーンヴィレッジに下る坂の麓にあります。ベルズブレイ橋という石橋の角地にある小さな窓がある石造りの家は、1597年に建てられた製粉業者の家です。古い建物が多く残るエディンバラの中でも、最も古い人が住んでいる建物の1つとされます。


オールド・トールブース(The Old Tolbooth)

オールド・トールブース

トールブースは、スコットランドの中世から19世紀までの自治体の建物のことです。ディーンヴィレッジのトールブースは、バクスター組合(Baxter's Incorporation)の穀倉として1675年に建てられました。
バクスター(Baxter)は、古いスコットランド語でパン屋、そしてBaxter's Incorporationは、パン屋職人の組合(ギルド)のことです。バクスター組合は、19世紀に蒸気を使用する製粉所が主流になるまで、エディンバラの全ての製粉所と穀倉を所有し、エディンバラに小麦粉を供給していたそうです。

石碑

建物の正面の入り口の上には、バクスターの組合の紋章の交差した2つのオーブンシャベルにパイと3つのケーキが載った1対の秤、そして小麦の束と2つの天使の頭が掘られた石碑があります。
碑文には、「神はこの家を建てたエディンバラのバクスターを祝福します」(God bless the Baxters of Edinburgh who built this house.)と書かれています。


ベルズブレイ橋(Bell's Brae Bridge)

ベルズブレイ橋

ベルズブライ通りから、ディーンヴィレッジに入るために、ウォーター・オブ・リースに架けられたシングルアーチの石橋です。1643年にバクスター組合が建造し、橋を渡る市民から使用料を集金していたそうです。


ホートンバンク・コテージ(Hawthornbank Cottages)

ホートンバンク・コテージ

ウェルコートの反対岸にあるホートンバンク・レーンに沿って建つ黄色の壁に、赤い屋根とチューダー調の木が組み込まれた建物です。1895年に建てられた集合住宅で、ディーンヴィレッジの景観に色合いを添えています。


ディーンブリッジ(Dean Bridge)

ディーンブリッジ

有名なスコットランドのエンジニア、トーマス・テルフォードによって設計され、1831年に完成した4つのアーチ型の石橋です。ディーン渓谷の上32mを通っています。ディーンブリッジが建設される前は、西から川を渡ってエディンバラに入る唯一の方法は、ディーンヴィレッジのベルズブレイ橋でした。

ディーンブリッジ


バクスター組合の史跡

ウォーター・オブ・リース沿いの小道ミラーロウ(Miller Row)には2つの史跡があります。


石臼(Mill Stones)

石臼

ディーンブリッジの真下近くのミラーロウにある小さな公園に3つの石臼(Mill Stones)が重なって置かれています。元々この場所は、リンジーの製粉所があった場所で、石臼は穀物を粉砕するために使用されていたものです。


バクスター組合の紋章の石碑

バクスター組合の紋章の石碑

ベルズブレイ橋からミラーロウへの入り口にある石碑は、リンジーの製粉所の名残です。バクスター組合の紋章のパンがのったオーブンシャベルの石碑です。


ウォーター・オブ・リースとその遊歩道(Water of Leith / Water of Leith Walkway)

ウオーター・オブ・リース遊歩道

ディーンヴィレッジに沿って流れるウォーター・オブ・リースにはウォーター・オブ・リース遊歩道(Water of Leith Walkway)があります。遊歩道は、ウォーター・オブ・リースに沿って、バレルノ(Balerno)の街からエディンバラを通り港町のリースまで12.25miles(19.6km)整備されています。
この遊歩道沿いには、ディーンヴィレッジの他にも、スコットランド国立近代美術館や、エディンバラのオシャレな街として知られるストックブリッジなどの観光スポットがあり、エディンバラ市民の憩いの場となっています。

ディーンヴィレッジ

ディーンヴィレッジは、エディンバラの秘宝として最近人気のスポットです。計画的に作られた大きな石造の建物が整然と並ぶエディンバラの新市街とまったく違い、昔ながらの美しい田園風景が広がっています。
街の中心街の近くにありながら、美しい中世のままの田園風景の広がる村の景観は、訪れる人々の心を癒してくれる特別な場所となっています。

【ディーンヴィレッジ(Dean Village)】
住所:Dean Path, Edinburgh EH4 3AY

文・写真=Sachiko
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