「答志島トロさわら」の刺身
「答志島トロさわら」の刺身

伊勢湾の奇跡 答志島トロさわら

にほんグルメ探訪
2024年11月15日
カテゴリー
国内旅行
旅行記

魚偏に春と書いて「鰆」であることから、サワラは春の魚というイメージがあるのではないだろうか。けれども三重県鳥羽のサワラの旬は秋から冬にかけて。この時期に獲れるサワラは脂がよく乗り、マグロのトロよりもおいしいと言われていた。
中でも、鳥羽の離島、答志島(とうしじま)と菅島(すがしま)で水揚げされるサワラのうち、一本釣りで漁獲されたサワラは特に品質が高く、古くから人気を集めていた。

答志島 答志島

伊勢湾口部に位置する鳥羽は、黒潮と伊勢湾内の海水が交差する好漁場である。また、伊勢湾内は木曽三川や日本一の清流といわれる宮川など多くの河川から栄養が流入。プランクトンが豊富に発生し、それを餌とする小魚が十分に育ち、さらに小魚を食べることで、この海域に生息するサワラは脂が乗っているのだ。

一本釣りされたサワラ 一本釣りされたサワラ

水揚げの様子 水揚げの様子

鳥羽周辺で行われている漁法は一本釣り(引き縄漁)と流し網漁だが、一本釣りでは船の左右二本ずつ計4本の竿からマイワシを餌にして釣り糸をたらし、船を走らせてサワラをおびきよせる漁法だ。
サワラは引き上げるとすぐに素早く活け締めをして氷水で保存する。そうすることで鮮度を保つだけでなく、身が軟らかくすぐに傷ついてしまうサワラの身割れを防いでいるという。また、船に引き揚げるとき、かつては鈎(かぎ)を使用していたので傷がつくことがあったが、現在は、無傷の魚が求められるようになっていることから、専用の引き揚げネットを導入。傷のないサワラを引き揚げられるようになった。

「答志島トロさわら」 「答志島トロさわら」【商標登録番号:登録第6463551号】

近年、三重県全体でのサワラの漁獲量は増加している。そこで漁業(鳥羽磯部漁業協同組合)、観光業(鳥羽市観光協会)、行政(鳥羽市)が取り組む「鳥羽ざかなブランド化事業」では、サワラのブランド化を進め、平成30年(2018年)に、「答志島トロさわら」を初出荷した。当時は、一本釣り、当日漁獲分、重さ2.1~4.7kg、船上で活け締めされ氷水で保存されたもの、そして答志島で水揚げされたものなどという基準を設定。また、出荷時期は、脂の乗る秋から冬のみと限定された。

脂質の計測の様子 脂質の計測の様子

けれども、令和2年(2020年)、同じサワラでも脂質の量にばらつきがあるため、水揚げされたすべてのサワラの脂質を計測し、脂質含量10%の個体のみとすることを合格基準に追加。その後、9月1日に「答志島トロさわら宣言」を出し、出荷を開始し、最長で翌年1月末日までとするなどといった、規定が加えられた。ブランド認定されたサワラには、尾の付け根にブランドタグを装着。一目で「答志島トロさわら」であることが分かるようになっている。

サワラ料理の数々 サワラ料理の数々

サワラというと西京焼きや塩焼きのイメージが強く、生で食べたことがないという人も多いのではないだろうか。けれども鳥羽では、サワラは刺身や炙りで食べることが主流だという。しかも、脂の乗りがよく遠方から訪れる釣り客の間では、「バターサワラ」と呼ばれるほどだ。
とろける食感、うま味と甘みが感じられる独特の味わいは、これまでのサワラの印象を覆す驚きのおいしさだ。脂があっさりとしているため、いくらでも食べられてしまう。地元だからこそ楽しむことができる奇跡の味わいだ。

鳥羽のサワラは、ブランド外のサワラも新鮮でレベルが高い。鳥羽では、鳥羽=「さわらのまち」というイメージを確立していきたいという。
ぜひ、この秋冬は「さわらのまち」鳥羽へ。これまでにない絶品を味わいに出かけてみたい。

協力・写真=鳥羽磯部漁業協同組合 (一社)鳥羽市観光協会 鳥羽市 文=磯崎比呂美
このページのトップへ